特別章1-5 ツンデレなあたしと心の声
部室から飛び出したあたしは、迷子になっていた。
「……やっちゃった」
毎度のことながら、事態が起こってから反省をしてしまうのが、あたしの欠点だ。
スマホで地図は何度も確認しているけれど、ここがどこなのか、全然分からない。
「……そろそろ、暗くなるわよね」
もう日は沈みかけてきて、このままだと本当に一人でこの見知らぬ街を彷徨うことになってしまう。
「……
自然と、
だけど、またすぐにポケットに閉まって、ため息を吐いた。
あんな大袈裟に部室から飛び出しておいて、今更助けを求めるなんてできっこない。
ただ、スマホを確認したら
とにかく、
あたしは、そのときに
どんなときでも、
あたしがどんなに我が儘で、面倒くさいことを言っても、笑って許してくれる人だった。
「……馬鹿。なんであいつのことばっか考えちゃうのよ、あたし」
ああ、本当に、自分が嫌になる。
なんだか、このままどこかに行ってしまいたい気分だった。
でも、そんなことをしたら、お母さんたちが心配するだろうな、と思うくらいには理性だってちゃんとある。
どうやらあたしには、家出をする才能はないらしい。
それに、本当に家出なんてしたら、
「……
と、そこに、聞き覚えのある声で呼ばれて、思わず振り返ってしまった。
「やっぱり
綺麗な栗色の髪が、ふわっと揺れたような感じがして、思わず見惚れてしまった。
「
あたしが彼女の名前を呼ぶと、
「でも、どうしたの? 人形演劇部の活動がお休みってわけじゃないよね?」
「えっと、それは……」
部活の予定は
とっさのことだったから、あたしも上手く返事ができずにモゴモゴとしていると、
「……
「えっ? は、はい……」
「それじゃあ、一緒に帰ろっか。私も、ちょうど家に帰るところだったから」
そう言って、
あたしは「助かった」と思う気持ちと同時に、きっと
この人は、そういう人だということを、あたしは知っているから。
だから、せめてあたしも、
「なんだか、こうやって
「……そう、かもしれませんね」
確かに、
それに、多分あたしは、無意識に
別に、
しかし、いざ話そうとなると、あたしのほうからは何も話題を振ることができない。
元々、あたしはどちらかといえば、話を聞く側の人間なので、一対一の対話となると、どうも苦手意識を持ってしまう。
こんなとき、友達の
けど、そんな空気を察したのか、
「
申し訳なさそうに告げる
「あれは、
「……うん、そうだね。すっごく心配してくれたし、
「
冗談交じりで言ってみた台詞だったけど、
「そうかな? そう……なのかなぁ。ううっ。よく
本当に分からないというように、う~んと頭を悩ませる
しかし、
「えへへ、でも、それはきっと
それって、答えになってるかなぁ……。
ほかの人がいったら、全力で首を振ってしまいそうだけど、
「あっ、もちろん、
「か、からかわないでください! 妹だなんて……」
「むぅ、からかってるわけじゃないのに……」
ぷくっ、と頬を膨らませる
「……ふふっ」
それが何だかおかしくて、思わず笑い声が出てしまった。
すると、
「よかった。
「えっ?」
「うん、
そう言って、
「
そして、彼女はあたしに向かって、こう告げた。
「だから、
そう告げた
ああ、もしかしたら、この人には全部分かっているのかもしれない。
あたしが
――そして、あたしが
「あっ、電車の時間、そろそろかな? 丁度乗れたらいいんだけど……」
あたしたちが住んでいるマンションから最寄りの駅の、ちょうど次の駅だ。
ここから電車に乗れば、数十分ほどであたしたちの住むマンションまで帰ることができる。
「あの……
少しだけ前に行く
「ん? 何かな?」
あたしは、ずっと
「
すると、
「うん、大好きだよ」
屈託のない笑顔で、そう答える
――それって、どういう意味で、ですか?
そう問いかけたいはずだったのに、あたしは怖くて聞けなかった。
周辺の街頭に一つ一つ、灯りが点いていく。
「…………負けないんだから」
そう呟いたあたしの言葉は、
だけど、ほんの少しだけ、心が軽くなったような気がした。
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