第35話 ツンデレな僕の幼なじみとのトラブル
「んっ~~! 大変だった~~」
「はぁ……疲れた……」
一仕事終え疲労困憊で歩く僕とは違って、隣の
今の時刻はお昼を過ぎたくらいの、春の日差しがポカポカと感じられる時間帯。
『ラブリーキャット』がある商店街の通りも、いつもより賑わっていたような気がする。
「全く、あんだけでへばっちゃうなんて、
スキップでもしそうなくらい上機嫌な
エプロンを付けてお客さんと話をしている
なんとなくだけど、
いわば、人から好感を持たれるようなタイプの人間だってことだ。
「なのに、どうして僕にだけツンケンしてるんだろうな……」
「ん?
いいえ、何にもおっしゃっていませんとも。
決して、僕も
そんなことをされた日には、この世の天変地異が起こる前触れだと思ってしまうだろうからね。
「……なんか今、すっごい失礼なこと思われた気がする」
「なっ、なんでもないよ! それより……お土産まで貰っちゃったね」
「うんっ! ちょっとした贅沢ができそう」
そう、僕たちはお手伝いをしたご褒美として、ニコさんの一押しというケーキを頂いていた。フランス語だかドイツ語か分からない、おしゃれな袋に入っているものだ。
確か、僕たちが働いていたときに、いま
店内が忙しすぎて、あまりちゃんとは見ていなかったけれど、ニコさんの知り合いなのだろうか? 今度、思い出したときにでも聞いておこう。
「
「失礼ね、そこまでの子供じゃないわよ、あたしは」
とは言いつつも、持っている袋を今にも回してしまいそうなくらい、僕には今の
僕はそのことに少しだけ、ほっとすることがあるのだ。
何気ないやりとりをして、帰路につく。
「……あっ」
そして、僕たちの住むマンションのエントランスホールに到着したときに、僕は自分の失態に気付いたのだった。
「鍵……忘れた」
僕は普段、家の鍵を学生鞄に入れている。
もちろん、今日は学校ではなかったので鞄は持参していない。
朝が早かったというのを言い訳にできないけれど、すっかり鍵を入れ替えることを忘れていた。
事態を把握した
「もう、何やってんのよ……。それで……
「姉さん、今日は
詳しいことは聞いていなかったけれど、「晩御飯までにはちゃんと帰ってくるからね」と言われたことは憶えているので、昼過ぎの現在時刻ではまだ帰ってきていない可能性のほうが高いだろう。
一応、僕は自分の家の扉の前まで確認をしに行ったけど、鍵は開いていないのはもちろんのこと、インターフォンを鳴らしても中から反応が返ってくることはなかった。
「ねえ、
律儀に僕と一緒に家の前まで来てくれた
「駄目だよ。姉さんのことだから、僕が連絡したらすぐに帰ってくると思う」
僕からのSOSの連絡が入ったら、姉さんは全ての予定をキャンセルして家に戻ってくるだろう。
それは、姉さんにも悪いし、一緒にいる
「まぁ、適当に時間を潰してくるよ」
駅までいけば、ファストフード店や漫画喫茶だってあるし、時間つぶしなら、いくらでも方法はある。
「んじゃ、
と、僕がその場から立ち去ろうとしたとき、ふと
何か言いたそうにしていることは、きっと幼なじみというレッテルがなくても分かるくらい分かりやすい。
「あ、あのさ……」
そして、予想通り口を開き始めた
「うち……来ない?」
「…………へっ?」
ただ、内容は僕の予想を斜め上に行くものだった。
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