第67話 「Go To トラベル」は机上の空論

 政府のキャンペーン開始まで1週間。西村経済再生相の“危機感”とは対照的に、迎える側の観光地の“危機感”との違いはいかがなものでしょうか。

その前に、私が心配するのは、人気が集中する観光地と“”観光地に二分されないか、という懸念です。

例えば遊園地。東京ディズニー・リゾートと、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンはいわゆる“勝ち組”で、その他は“負け組”。動物園や水族館なら、北海道の旭山動物園や沖縄のちゅら海水族館は“勝ち組”、その他は“負け組”という風に。温泉も“勝ち組” “負け組”に分かれるでしょう。全国各地に温泉はありますが、マスコミで格付けするようにランキングで評価される“勝ち組”は九州なら別府、湯布院、黒川。関西なら白浜、有馬、城崎。北陸なら加賀、和倉。北海道も登別を筆頭に「温泉天国」ですから“勝ち組”と言えるでしょう。その他は、期待するほど人出は見込めないのでは?


 『どうせキャッシュバックがあるんだから』と予約が集中してもおかしくありませんよね。人気のアミューズ施設や有名温泉地は。同じ政府の政策だった「地域振興券」は“元締め”が全国のそれぞれの自治体で、利用範囲も限定されていたため、各地にお金が“落ち”ました。しかし、今回のキャンペーンのスキーム(枠組み)は異なります。“元締め”が政府なので、利用範囲は全国にあまねく広がり、人気や知名度によって優勝劣敗ゆうしょうれっぱいは明らかです。仮にこの政策で、運よく新型コロナウイルスが広がらなかったとしても、収益が上がるエリアと上がらないエリアに二分される恐れがあるわけです。つまり、国の政策としていかがなものかと考えますけど、みなさんはいかがでしょうか。


 ディズニー・リゾートは7月1日、入場制限をして営業を再開しました。6月中旬に一旦営業を再開した香港ディズニー・ランドは、新型コロナウイルスの再拡大で7月15日から再び休園。アメリカ・フロリダ州のディズニー・ワールドは7月11日から営業を再開しましたが、批判を受けています。現在の入場制限措置をいつまで取るかは分かりません。そして、「Go Toトラベル」キャンペーンの対象になるのかどうかも分かりませんが、制限が解除になれば地方からの首都圏への旅行客の増加も予想されます。首都圏からの観光客に加え、東京近郊への旅行から戻って来る人々が増加すれば感染リスクは更に広がることでしょう。入場制限を終了すれば「3密」は避けられず、入場制限を続ければ予約の混雑はどれだけの期間に及ぶのか想像もつきません。人数制限によって人気アトラクションの行列が緩和されるのなら、“時間制限”という“奥の手”もありそうですが、その場合は一日券よりも価格を抑える必要がありそうですね。


  東京都は15日、新型コロナウイルス感染拡大の警戒レベルを4段階の最高レベルの「レベル4」に引き上げました。最高レベルということは、さらに上はないということです。小池知事は「感染拡大警報」のフィリップを掲げて見せました。これまでのイメージカラーの緑ではなく、赤と黄のツートンカラーでしたよね。恐らく警戒感を強調したかったのでしょう。「Go Toトラベル」の前倒し実施については『よーく考えて』と釘を刺すにとどめたようですが。


 「Go Toトラベル」の利用をお考えの方々にもお知らせしておきたいことがあります。一見お得感のあるキャンペーンですが、多くの観光地では温泉に浸かったり、食事を楽しむことはできても多分それだけです。小林一茶の俳句じゃありませんが、“楽しさも 中くらいなり おらが旅”になることでしょう。というのは、全国各地では今年の春先までに、この夏以降の有名な祭りやイベントの中止を決めているからです。二つ三つ例を挙げれば、東北の夏まつり。青森のねぶた祭、秋田の竿灯まつり、宮城の仙台七夕の東北三大祭りはすべて中止。例年は山形の花笠まつり(今年は中止)と合わせ、夏祭りのハシゴを楽しめるのですが、今年は無理。西に目を向けても福岡の博多祇園山笠、四国・徳島の阿波おどりも全国各地の夏祭りは軒並み早々に中止が決定。全国一と言われる秋田・大曲の花火大会をはじめとする花火大会も開催見合わせばかり。全国津々浦々の情報まで把握していませんが、人気のイベントは「3密」のリスクが高いため、概ね中止になっているのは皮肉なことです。政府狙いが本気の観光振興なら、もっと思慮深くてもよさそうですけどね。これが私のゼミ員たちに“”と看破される所以ゆえんです。民間企業であれば、こんな杜撰な企画はまず通ることはないでしょうに。

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