第50話 「空前絶後」と「前代未聞」

 お笑い芸人・サンシャイン池崎さんの専売特許かと思った「空前絶後」が5月下旬、安倍総理の口から飛び出しました。蔓延する新型コロナウイルスの感染拡大で深刻化する経済対策となる第2次補正予算の規模感について、自画自賛する中で選んだワード。

 一方、後者の「前代未聞」は“安倍政権の守護神”との揶揄された東京高検の黒川弘務検事長(2020年5月辞任)一人だけの定年延長を決めた閣議決定の異例さを伝える四字熟語です。定年退職の僅か1週間前の出来事でした。


 「空前絶後」は文字通り、今より「前」にも例がなく、これから「後」にも起きないほどの“物事の大きさ”を意味します。主に、第三者が誰かの行動について表現するために使うことはあっても、誇張がウリの映画の宣伝文句でも聞いたことがありませんし、自らの誇示のために使った人を私は前出の池崎さんしか知りません。彼は言葉の意味と周りの認識を十分に理解した上で、そのギャップを利用した「自虐ネタ」との計算があります。

 総理の場合は、おそらく安倍総理の取り巻きが、“殿”を“ヨイショ”するために選んだのでしょうが、官房長官の発言ならまだしも、総理自身が真顔で口にするコメントの作文としてはセンスが最悪で、逆効果です。『「募る」と「募集」の意味も分からない首相だからなぁ』」と笑われるのがオチですね。


 「前代未聞」についても、安倍内閣はいろいろとやらかしてくれます。閣議決定は最たるもので、一検察長の定年延長もそうですが、安倍昭恵総理夫人を“私人”とした決定には、開いた口が塞がりませんでした。政府が疑惑の追及から逃れるために“公人”ではないことにしなければと焦った末の決定でしたが、将棋や囲碁でいえば「悪手」中の「悪手」。「敗着」の一手でした。彼女には、省庁から国家公務員の“お付き”が寄り添い、専用の警護もいるのですから説明がつきませんよね。

 これを誰一人の大臣も否定しない。「裸の王様」の真骨頂です。何しろ閣議決定は全会一致でないと成立しません。「閣内不一致」は許されないのです。反対できない理由は、それがもし総理案件なら「反対」=「罷免」となるから。「更迭」されてまで正論を通す大臣は一人もいなかったということです。私にとっては大臣ひとりひとりの常識・非常識、政治家としての心構えを見定めるためのバロメーターでもあります。

閣議の進め方も疑問です。現在のようなコロナ禍では感染対策のため閣議も「持ち回り」になりました。おそらく議案の文書を持って担当官僚が大臣室を個別に回り、サインと捺印を集めるのでしょうが、押印廃止の動きに政府自ら逆行した形で、もはや笑うしかありません。


さて、次はどんな奇妙奇天烈な閣議決定をやってくれるか楽しみです。

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