第31話 二千円札で大コケの政府にキャッシュレスをまかせられるか

  さんざんすったもんだした末、2019年10月1日から消費税が2パーセント上がり、一部の例外を除き10パーセントになりました。この「一部の例外」というのが“クセモノ”で、いわゆる生活必需品の中で国が指定した商品と一部食品の“持ち帰り”については「軽減税率」が適用され、“暫定的”に8パーセントに据え置きになるという内容です。政府自民党が、連立を組む公明党の「公約」を渋々“受け入れた”格好です。しかし、7月の参院選を有利に進めたかった与党がギリギリまで正式導入を発表しなかったために、中小零細の現場では対応も遅れ、街の商店や消費者の多くは戸惑いながらの毎日が続いています。


 政府は臨時国会でも『混乱もなく順調な滑り出し』と強調し、自画自賛の姿勢を変えませんが、いつものことなので、額面通りに受け取っている国民がどれだけいるのか“眉唾”ものですね。久しぶりに『じゃまあいいか』に集まった渋川ゼミの面々も夏休みの間に問題点を整理してきたようです。


 今はシネマコンプレックスという形の商業施設と映画館が併設された施設が普及していますが、同じ施設内の飲食店でテイクアウトした軽食を隣りの映画館で飲食する場合の税率は8パーセントか、10パーセントか。そもそも、映画鑑賞の前に映画館のロビーの売店で買ったポップコーンに軽減税率は適用されるのか、されないのか。


国税庁の結論はというと、座席にメニュー表があり、注文に応じるスタイルは10パーセント、現状のように売店で購入して座席に持ち込む場合は8パーセントとか。官僚はきっと映画を観ないんだろうなぁ。普通の映画館は作品の上映中、スクリーン意外は真っ暗です。大きな声を指すのはマナー違反ですし、通路も狭く座席の間隔も狭い。座席のメニュー表はファミレスや回転ずし店のようなタッチパネル式しか想像できませんが、まさか回転ずしのようにレーンで各座席に届けるのはほぼ不可能でしょう、物理的に。売り子さんに上映中にうろうろされるのも迷惑ですし。想定が無茶苦茶ですね。そうそう、映画館の理屈で言えば、プロ野球観戦のお父様方が気になる売り子さん。客席を回る好みの売り子さんから買うビールは軽減税率適用外の10パーセントですが、スナックや軽食は8パーセント? 10パーセント? 一度、税務署で確認してみましょう。



 そもそも軽減税率の適用はいつまでなのか。カードやスマホのキャッシュレス決済での割引はいつまでなのか。数え上げるとキリがありません。果たしてIT担当のご高齢の大臣は理解されているのでしょうか。政府は東京オリ・パラを前に増加の一途をたどるインバウンド対策とも説明しますが、たった半年で全ての小売店に普及させるなんて無理がありますよね。19年前、たった2千円札一枚を面倒臭がって拒否した国民と、無策の末に尻尾を巻いて諦めた財務官僚ですよ。あの時も『海外では「2」のつく紙幣や貨幣は当たり前』と豪語していました。そんな中で、キャッシュレスに対応できる一部の人だけが“得”をするシステムが「国策」として押し通すのは正しいのかどうか。そして、そんなキャッシュレス社会を国民は受け入れるのかどうかー。そして、来年オリ・パラ観戦に来る外国人に混乱はないか心配になります。もしかして、来年の7月前に軽減税率、終わったりして…。

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