第30話 カネと名誉にしがみつく関電幹部

 原発関連工事の大量発注先の会社からの多額の“裏金”を何年にも渡って受け取り続けてきた関西電力の役員たちがようやく腹をくくったようですね。岩根社長と会長が辞任を発表したほか、明らかになっているだけで1億円を上回る金品を受け取っていた2人の役員も辞意を明らかにしているという。他の役員は責任を感じないのか分かりませんが、世間はそんなに寛容ではないと思いますね。


 ところで、社長以下の辞任でことはめでたし、めでたしと解決してしまうのでしょうか。私のゼミでは、モリ・カケ問題の時、財務省の公文書改ざんや隠ぺいの責任を取って辞任した当時の佐川国税庁長官らの辞任に「敵前逃亡」「退職金泥棒」と批判しました。公文書の改ざんや故意の隠蔽いんぺいが事実なら「辞任」でなく「懲戒免職」になるべきで、数千万円に上る退職金を受け取ることはできません。ところが、彼の上司である麻生財務大臣や安倍総理は“”のです。巷では、国会で総理を守り続け、責任を一人で被った“論功行賞”だ、と囁かれました。

 関電の“裏金疑惑”も、受け取ったのが役員でなく社員だったら、恐らく懲戒解雇のはずです。当然、退職金はもらえません。ところが『一時的に預かっていただけ。後で返却するつもりでいた』と疑惑自体を完全否定していた「」な幹部役員に辞任が許されることを世間は許すのですかね。今になって一転、辞任する会長は副社長時代は原発担当でした。今回の税務調査分で“裏金”を一番受け取っていたのはいずれも原発部門の常務と役員でした。“裏金”はこれ以前も行われていたということですので、現社長や会長が受け取っていた“袖の下”は実際のところ、150万円とか900万円とか言うレベルではないはずです。それら一切合切を明らかにしない限り、関西電力という企業自体の信頼が回復することはありません。社長自らが『膿は全部出し切る』と高らかに宣言したのですから、隠し事が許されないことは当然です。真実の追及に当たる国会やマスコミも最後の最後まで調べ上げなければいけませんよね。


 何の疑いもなく、言い値の電力料金を支払っている善意の国民を尻目に、原発事業の発注元と発注先との間でリベートの存在が明らかになった今回の事件は、原発施設の受け入れ自治体に“安全保証”“危険手当”的に国や企業から支払われている補助金や補償金などの莫大なお金についても“裏金”があるのではないか、と疑いたくなるのが自然というものです。関西電力以外の電力会社も立地自治体や発注企業との取り引きについて関係性を明らかにしなければなりません。こういう関係は往々にして構造的な問題が潜んでいるケースが多いですからね。実際に、関西電力幹部にキックバック的に“裏金工作”を続けていた発注先会社とその役員は福井県職員や地元の警察にも餞別などの名目で金を握らせ、複数の国会議員の政治団体などにも政治献金を繰り返していた事実が徐々に明らかになっています。


 こうした“裏金”は元々は関電管内の住民が納めた“キレイ”な電気料金だったのです。それが巡り巡って“汚れ切った”カネに姿を変えたのです。その上、関電は関わった20人の役員や幹部の処分内容も非公表にしました。みなさん、もっと怒りましょう。


 『元助役の恐喝にも似た言葉に押されて返せなかった』―。

カネを渡す側が無理矢理多額の金品を関電幹部に押し付けた、という関電社長の主張はにわかには信じ難い話です。もしこれが事実なら、“共犯者への口止め料”としか思えません。その上『これからもよろしくな』という“裏金”を遥かに凌ぐ原発関連工事の大量発注の“依頼金”としての“袖の下”だったら、信じ難い話も容易に納得できませんか? 

 大震災以降の“裏金”でなく、それ以前の最初に“裏金”を渡された時に断れなかったことが「ズブズブの関係」を招いた原因、と私は考えます。電気料金は一般に水道料金などと同様、公共料金に区分されます。その額の決定権を持つ電力会社幹部役員の不正は辞任や“裏金”の返金で許されるべきではありません。


 マスコミも報じませんが、「返金」って誰に返すのですか? 亡くなった森山元助役には返せませんから、彼が相談役や顧問を務めていた会社でしょうか。そして、彼らは“賄賂”として受け取ったことを認めたのでしょうか。それともあくまで『一時、預かっただけ』なのでしょうか。辞任するからには、受け取った金品が“賄賂”であったことを認めた上のことと考えますが、確認は必要ですよね。

 さらに、毎年のように“裏金”を受け取っていたとすれば、返金で済むわけがありません。万引きだって、繰り返せば決して許してもらえませんよね。たとえ品物や代金を返済しても…。電車での痴漢行為や盗撮は一発アウトです。なぜ、これらより罪深く、確信犯的な善良な市民への裏切りが「辞任」で済むのか。ゼミ員たちも全く納得していません。この辺についても特集を組む新聞やテレビにも追及の責任はあるはずです。

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