「ブルータス、お前もかー」。

　ジュリアス・シーザーが暗殺される直前に叫んだとされる言葉ですね。世界史の「古代ギリシャ」で習ったでしょ。腹心のブルータスの裏切りに発した言葉ですね。「都市国家のアテネとかスパルタと一緒に。漫画でポパイが恋人のオリーブをめぐって恋敵のブルートに放った言葉ではありませんよ。そして、もしかしたら本能寺の変で、信長は自決の前に「光秀、お前もか」と呟いたかもしれません。

歴史はともかく、日産社内からは今頃「西川社長、お前もか」と嘆きの声が聞こえて来そうです。

　昨年暮れ、日産自動車の再建を託され、剛腕を振るったカルロス・ゴーン会長の所得の不正申告などによる電撃逮捕劇から半年余りが過ぎました。日仏両政府を巻き込み、ドタバタ続きだった日産。ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役の解任と不正蓄財の数々が明らかになり、収束に向かっていたと思っていましたが、ここに来て、検察サイドにゴーン会長らの不正を告発していた西川廣人社長にも、役員報酬を不正に受け取っていた疑惑が浮上しました。『差額分は返納する』と本人が話しているらしいので、どうやら「疑惑」ではなく「事実」のようですが、『差額分は返納する』の後には『だから社長の椅子は譲らないよ』というセリフが隠れています。西川社長が認めた不正金額は分かっているだけで約4700万円に上ります。ゴーン前会長とは手口も金額も違いますが不正は不正です。ゴーン前会長の事件後には『ガバナンスを徹底する』と再発防止と体質の改善を約束した会社のトップがこの有り様では、「何をか言わんや」ですよね。

　既に起訴され、多額の保釈金を積んで保釈されているゴーン被告も怒り心頭ということで、週刊誌を中心に新たな展開が予想されますが、日産から相当額の広告出稿がある新聞社やテレビ局はどう対処するのでしょうね。

　今回の情報源はゴーン被告と同時に逮捕・起訴されたグレッグ・ケリー被告の月刊誌に掲載された「独占手記」が発端でした。「目には目を」は「ハンムラビ法典」ですが、出し抜かれて「会社に対する不正」を追及されたケリー被告による腹いせの仕返し。「急所に当たって落ちたブーメランを西川社長めがけて投げ返した」と言ってもいいでしょう。「毒を食らわば、皿まで」は、当たらないかもしれませんが経営者同士の罵り合いは決して気持ちのいいものではありません。膿は出し切ってほしいと思いますね。ケリー被告に続き、ゴーン被告の非難がどういう形で行われるのか。いずれにしても泥試合になるんでしょうね。今は日本と韓国との間の泥試合の陰でクローズアップされずに済んでいますが…。

　それにしても、後で返済するとはいえ「一等地の自宅マンションの代金を日産本社に肩代わりさせようともした」疑いについても、事実であれば大問題です。日産の社員も世間一般でも、「借り入れ」で「自宅」を購入する際は、金融機関に相応の利子を支払って30年とか35年の長期ローンを組む必要があります。社長や一部役員の特権というのは理解できません。「社員を大事にする社長」なら、全社員に対し自宅購入資金の全額建て替えを保証しましょうよ。ね、西川社長。

夏休みを終えて帰ってきた幹太が、矢沢永吉さんがＣＭで語り掛ける「やっちゃえ、日産」を「やっちゃった、日産」に入れ替え、不倫が発覚した俳優の原田龍二さんの妻の名ゼリフ「原田、アウト～」を「西川、アウト～」と叫ぶのを苦笑いしながら聞いています。