第19話 「大人になれよ、日韓の政府高官」

 「政治家や公務員は国民の奉仕者―」。

日本国憲法に明記され、小中学校の社会科でも習う文言です。恐らく、お隣の韓国でも政治家や公務員の立場は同様かと思います。平たく言うと「議員や官僚をはじめとする全ての公務員は国民のために仕事をするのがおつとめ」ということです。


 なのに、最近の日韓関係はどうでしょう。かみ合わない議論を繰り返してお互いの感情を逆なでして溝を深め対立を激化させた上に、他国を巻き込んで「二国間問題」を「多国間問題」にする呆れた始末。当の対立の「主役」たちに「国民のため」という論点は残念ながら見えてきません。むしろ、一部の国民層を煽り立て自国の正当性を喧伝けんでんしてさえいます。

U-18の野球のワールド・カップに参加する日本代表選手が「正装」であるはずの「日の丸入り」のポロシャツの着用を見送り、無地のシャツで開催国・韓国入りしたニュースが大きく取り上げられました。判断した日本高野連が責めを負っていますが、仮に文部科学省に相談していたとしても状況は変わっていたかどうか。高校生の大会なので、政治の問題を持ち込むような「大人げない行為」は両国指導者の責任で回避できると信じていますが、過去のWBCで日韓戦を制した韓国チームが試合後に日本を侮辱する行為に及んだ事実が、今も脳裏に焼き付いて離れません。日韓両チームが互いに予選リーグを勝ち上がった場合は両チームが直接対決しますが、故意のラフ・プレーをしないことはもちろん、互いに相手をリスペクトしたゲームを期待します。


 それにしても、です。平昌オリンピックの女子スピード・スケート500Mで、優勝した小平奈緒選手と最大のライバルで銀メダルの李相花イ・サンファ選手が、レース後に互いの健闘を称えて涙で抱き合ったシーンを政治家や官僚は観てないんですかね。フィギュア・スケート女子でも浅田真央選手と金妍兒キム・ヨナ選手は世界一を争うライバル関係でしたが、リンクの外では互いをリスペクトしていました。こうした映像も政府高官の記憶にはないんでしょうか。

 スポーツの世界で可能なことが、政治の世界で出来ていないのはいたって残念です。日本国内ではそんな噂は聞こえてきませんが、韓国国内では個人レベルで日本観光に向かう人をバッシングするような動きもあると報道で見聞きします。この夏の訪日韓国人の数は事件の影響で減少しています。国民にこうも堅苦しい思いをさせていることに「彼ら」は気付かなければいけません。なぜなら「彼ら」は国民に奉仕するのが「」なのですから。韓国サイドだけでなく日本サイドも「」をすべきです。問題がこじれればこじれるほど「漁夫の利」を得る国があることを忘れてはいけません。


 今回は敢えて懸案となっているGSOMIA《ジーソミア》や日韓相互間の「ホワイト国外し」など、個々の国際問題には触れませんでした。現在の高校生、大学生にとっては予備知識としての授業での「情報」が圧倒的に不足している上に、無理矢理ねじ込むことで「政治的無関心」に拍車をかけることは本意ではないからです。日本側からの視点で「いずれもカネで解決済みだろ」と思考停止を決め込んでいるわけではありませんので、ご理解下さい。一連の問題は韓国の現政権幹部の不正疑惑や朴槿恵パク・クネ前大統領の裁判の経過をも巻き込んで、政権の腐敗を描いたドラマさながらの様相を見せています。問題が落ち着いたら「渋川ゼミ」の一テーマとして、感情的にならずに丁寧に取り上げたいと考えています。

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