第18話 最近の「〇〇世代」に違和感

 きのう、バイトの広海から何気なく問い掛けられたクイズのような質問に困惑してしまいました。ちょと泳ぎの達者なJDと舐めていたので、彼女を満足させる「答え」を出せず、情けない思いをしました。


その「問題」とは、


時代、世代、年代。期間の長い順に並び変えよ。


文庫本を読んでいた私は、店の奥からホワイト・ボードを引っ張り出すと、


「時代 > 世代 > 年代」


と書き込みました。迷うことなく…。

私の「答え」に広海は、

「へー、そうなんだ。マスター、ファイナルアンサー?」

と笑顔で「訂正」のチャンスをくれました。


 人間のメンタルとは案外弱いもので、念を押されると決心は揺らぐものです。でも、導き出した「正解」を信じることが出来ず、自ら「不正解」を選ぶリスクもあるわけです。小悪魔的な笑顔に出題の意味を勘ぐりましたが、「時代」は「江戸時代」や「戦国時代」、「縄文時代」など、それぞれに長短はありますが一般的にかなり長い期間です。「世代」は最近の「ゆとり世代」や「さとり世代」は5~10年くらいかもしれませんが、「団塊の世代」や「世代交代」は20~30年のスパンはありそうです。で、「年代」は「昭和30年代」とか「昭和50年代」とか、こちらは明確に10年と指すものと理解できますよね。というわけで、広海の甘い誘いを断って「第一感」を通しました。


 ところが広海は赤いフェルトペンを握ると、鼻歌交じりに


「時代 > 年代 > 世代」


と書き込み、

「どうも平成、令和はこっちみたいよ」

と振り返った。


 キツネにつままれたように納得がいかず、宙をさまよう私の視線が止まったのは雑誌のラックにのぞいたスポーツ紙の見出し。「輝星こうせい世代、1号アーチ」の文字が踊っていた。「輝星」というのは言うまでもなく夏の甲子園大会で準優勝を飾った秋田・金足農業高校のエース、吉田 輝星投手(現日本ハム)のことです。

「ははぁ、これか」

「少し遅かったみたいね」

私は、この場に幼馴染みの横須賀貢がいなことにホッとしたいた。アイツがいたら、何を言われていたか分からない、というのはウソで貢の「」まで予想できた。

どうせ、いずれそう遅くないタイミングで、この一件は貢の耳にも入るだろう。


 みなさん既にお気づきの通り、メジャー・リーグ、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手や卓球の伊藤 美誠みま、平野 美宇みう両選手と同い年で活躍する選手たちを「大谷世代」「美宇・美誠世代」などと呼ぶのが最近のマスコミの風潮です。私たち「昭和の人間」からすれば、違和感を感じるこの表現も「平成世代」には抵抗なく受け入れることが出来るのかもしれません。

 私の記憶が確かなら、「特定の1学年」だけを指して「〇〇世代」が初めて登場したのは甲子園の決勝戦でノーヒット・ノーランを達成した、当時横浜高校の松坂 大輔投手を讃えて同学年のライバルたちを「」と呼んだ一部の雑誌やスポーツ紙です。それ以後、テレビ局のアナウンサーなどが得意そうに「原稿」を読んでいます。辞書にそんな「世代」の用例が全然ないことなど知らないでしょうし、疑問を持っている風には全然見えませんけどね。


 ちなみに、一般的な国語辞書の説明は「世代」の意味として①一つの血筋を引いた親・子・孫などのそれぞれの代。ふつう約30年を1世代または1代と数える。②生まれた年をほぼ同じくし、時代的経験を共有し、ものの考え方や趣味・行動様式などのほぼ共通している一定の年齢層。ジェネレーション。「若い世代」「世代が違う」。

 広辞苑は、①㋐親・子・孫と続いてゆくおのおのの代。親の跡を継いで子に譲るまでのほぼ30年を1世代とする。㋑生年・成長時期がほぼ同じで、考え方や生活様式の共通した人々。また、その年代の区切り。ジェネレーション。「世代の差」「戦後世代」と解説しています。


 以前、「NHK」の視聴者窓口に疑問をメールしたことがあり、返信も頂戴しましたので、この件も問い合わせしてみました。返事が来たら報告しますね。

返って来るのは、『言葉は時代とともに意味も変わりますから』なんて生放送のスタジオに置かれているマニュアルのような優等生的な答えかなぁ。

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