第13話 「タラタラしてんじゃね~よ」に思うこと
全英女子オープンで初出場、初優勝の離れ業を軽やかに、そしてとびきりの笑顔で演じて見せた渋野日向子プロ。カーリングの「もぐもぐタイム」さながらにマスコミが注目したのは彼女のプレーではなく、ラウンドの合間に軽食代わりに摂るお菓子でした。魚のタラ風味の“さきいか”タイプの柔らかスティック。業界では有名な「よっちゃん食品工業」製造の駄菓子らしいですが、これが大ヒットらしいですね。彼女の技術の高さやメンタルを語れず(・・・)、野次馬的なアプローチしかできない日本のマスコミには辟易します。MLBを観て下さい。最近、ピッチャーの投げるボールのスピン量やバッターの打球の初速やホームランのボールの角度が注目され出しましたが、選手が「もぐもぐ」している紙タバコの銘柄やダッグ・アウトに散乱したヒマワリの種の解説なんて聞いたことがありません。
ワイドショーの恥ずかしさは今に始まったことではありません。2014年、並みいるプロを尻目に高校1年生でツアー優勝した勝みなみプロ(当時はアマチュア)の時は母親手作りのおにぎりに注目しました。中身の具とか。大きなお世話ですよね。松山英樹プロに対して、こんな話題を持ち出したら「出禁」になるかもしれません。もっともこうした扱いは、女性選手の場合に多いようです。そう言えばカーリングの「もぐもぐタイム」も女子チームだけ。下手すると「性差別」にも繋がりかねません。選手の活躍を讃え、後押しするのが本来の「役割」だと思うのですが…。
スポーツ界の「へん?」はさておき、同じ「タラタラしてんじゃね~よ」も使われる場所が変わると笑っていられません。最近、問題化している自動車の「あおり運転」。あおる側の車内からも「タラタラしてんじゃね~よ」「チンタラしてんじゃね~よ」の罵詈雑言が聞こえていたのは想像に難くありません。自分の経験上も。人間イライラすると言いがちです。他にも「ヘラヘラしてんじゃね~よ」とか「グダグダしてんじゃね~よ」、「ニヤニヤしてんじゃね~よ」などヴァリエーションは様々です。丸の内のオフィス街や霞ヶ関の官庁街、住宅街の夫婦ゲンカからも聞こえてきそうですが、上司が部下に言い放ったら「パワハラ」にもなりかねませんから注意が必要です。
それにしても危険な「あおり運転」は増えることはあっても減ることはありません。ドライブ・レコーダーやスマホが普及した現在、従来「見えなかった」蛮行の一部始終を容易に録画できるので、これまで「泣き寝入り」するしかなかった被害者が声を上げ始めたことは、迷惑行為の抑止に役立っています。車両の後部に「ドライブ・レコーダー搭載」とシールを張っているだけでも抑止効果があるようですよ。
一方で、日々流される「あおり運転」のニュースは、「気に入らない先行車は、あおってもいいんだ」と「歪んだ受け止め」をするドライバーを増やしているのも事実と思われます。かつて、練炭を使った集団自死が連鎖した時期もありました。覚せい剤犯罪がなくならないのも「情報過多」が一因との考えを、私は持っています。マスコミは「抑止の一環」と「弁明」し、「人の不幸は蜜の味」とばかりにニュースで取り上げ、ワイドショーが追いかけ、必要以上に大きく取り上げますが、「愉快犯」や「模倣犯」が存在することもまた現実です。こうした背景を踏まえ、冷静な取り上げにも注意を払ってもらいたいものです。かつて、新聞やテレビは一般人であっても事件や事故の大小にかかわらず容疑者や加害者、被害者の「顔写真」の入手に心血を注ぎました。亡くなった人の場合は葬儀にまで押し掛けたという無神経なエピソードを武勇伝とばかりに語る記者の話を、アナウンサーの悠子さんから聞いたことがあります。最近のメディアではさすがに減りましたが、これは人権問題が声高に叫ばれてはじめた外的要因であって、残念ながらメディア内部からの自発的、自浄的な動きではありません。
話題が逸れましたが、「タラタラしてんじゃね~よ」で気になったこと、客が帰り照明を落としたカウンターでブラックコーヒーを飲みながら考えました。
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