第12話 オリ・パラ統合を阻むハードルの考察1

  2020東京大会でのオリンピックとパラリンピックの一本化の実現は「渋川ゼミ」のゼミ員にとっては悲願です。きっと将来的にはバリアフリーやユニバーサル社会がさらに進み、オリ・パラもいずれどこかの大会で統合されるでしょう。ならば「東京大会のレガシーに」という発想です。

 広海たちは、錦織圭と上地かみじ結衣ゆい、大坂なおみと国枝くにだ慎吾しんごが手をつなぎながら開会式のフィールドを入場することを夢見ています。4選手がいずれも有名なテニスプレーヤーであることは世界的に知られています。テニスに限らず、他の競技でもです。世界各国のこうした登場シーンは「共生社会」の象徴として深く記憶に刻まれることでしょう。


 しかし、IOCを説き伏せることは容易ではないかもしれません。先日発表されたパラリンピックのチケット販売の概要を見て気がつきました。開閉会式の座席の料金は15万円を最高に8千円までの間でセッティングされています。オリンピックの開会式の最高額が30万円ですから半額と割安なのですが、参加選手全体で見れば知名度は知れてますから完売できるのかどうか。また、各競技の観戦料も2千~3千円前後とかなり割安です。最安値は何と9百円。しかし、日本国内で開催されるパラ・スポーツの入場料金の多くが無料だったりすることを考えると、果たして「割安」かどうか。実際、過去のパラリンピックでも観戦チケットの売れ残りが問題になることも少なくありませんでした。パラ・スポーツへの理解や普及が進むロンドン大会など、ごく豪僅かの大会を除いて。


 私の想像ですが、パラリンピックだけで見ると収支は多分「赤字」です。うがった見方ですが、オリンピックの観戦料金が高額なのはパラの赤字分を補うためかもしれません。とすると、約8万人の収容力のあるメイン会場で行われる開会式は大きな「収入源」になるわけです。つまり単純にオリ・パラを統合した場合、最高席の料金を45万円にしないと「」になるわけです。同じ「ゲン」でも「」と「」では大違いですから。「感動」と「収支の胸算用」。IOCや大会組織委員会幹部には本音ではバリアフリー、ユニバーサルの共生社会の実現をどう見ているのでしょうかねー。


 オリ・パラ統合の課題は他にもあると思いますが、また別の機会に…。

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