Epilogue : B 2048年
ぼくは走っていた。瀬切マユという人物の手紙にあったことがほんとうならば、彼女は、ぼくと同じ運命を辿ったのだ。
もう2040年から8年の歳月がたっている。けれど、どこかに生きている。どこかに、必ず生きている。早く気付いてさえいれば。
ぼくの実家の押し入れから大量の手紙が出てきた。それはほとんど意味をなさないものだろうけれど、最後の手紙――つい昨日見つけた彼女からの最後の手紙には、ぼくしか知りえないことが書いてあったのだ。
海沿いを走った。春一番が吹き荒れる、白波の押し寄せる海辺を駆けた。何十年も前にすべてが流された海辺を。
山にはいり、小道を駆けた。傾斜がきつくなって、息があがってくる。
足が止まった。ついた。タブレットのマップで場所をたしかめる。
ここが、仙台市若林区荒浜。瀬切マユのいた場所だ。
そこには大きな墓碑があった。いくぶん新しげな、つやつやした墓石だった。
ぼくの淡い希望は、花を開いて、散った。分かっていたのだ。昨日からこうなることは分かっていた。
手を合わせた。それは、犠牲者への祈りではなく、ぼくたちの運命への赦しを求める願いに他ならなかった。
目を開いた。
それでも、運命の人が、まだどこかにいるように思えた。
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3959通目のラブレター 山根利広 @tochitochitc
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