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 ドアをくぐって部屋の中に入った遥が見たものは銀色のカプセルの中でぐっすりと眠り続けている夏の姿だった。遥は眠っている夏の姿を見て、一瞬、夏が死んでいるのではないかと思ってびくっとしたが、よく観察してみると、夏はきちんと呼吸をしていて、小さな寝息も立ててきた。

 夏、……よかった。遥はほっとして胸を撫で下ろした。

 それから一度深呼吸をして気持ちを切り替える。いつもの木戸遥に戻った遥は、寝ている夏の体を揺すって、彼女を夢の世界から現実の世界へと引き戻す作業をした。

 夏はすぐに反応して、うっすらとまだ眠たそうな眼を開けた。

「……遥? おはよう」夏は言う。

「お帰りなさい、夏」呆れたような、ほっとしたような表情をしながら遥が言った。

 夏はカプセルの中で体を起こして大きなあくびをした。それからそっと遥を見つめる。

「……私、いけないことしたのに、ルール違反したのに、ちゃんとここまで迎えに来てくれたんだ。遥は優しいね」と夏が言う。

「夏は別になんのルール違反もしていないし、いけないこともしてないよ」

 遥は夏に手を差し伸べる。

 その手をとって、夏はカプセルの中から抜け出して床の上に移動した。

「なんでも拾っちゃうのは、遥の悪い癖だよね」夏は言う。

「なんのこと?」

「こっちの話」それは夢の中の出来事の話。

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