45
雛はいつもと同じ白いひらひらとした服を着ていた。
夏も同じような白いワンピースを着ている。
真っ白な部屋に、真っ白な服。
雛は小さく体を左右に揺らしている。
なにかが楽しくてしょうがないという、子供特有のわくわくした目をしている。
雛はきちんと生きていた。
ここにいる雛は人形ではなかった。
そんな雛を見て、夏はとても新鮮な気持ちになった。
夏はじっと照子を見つめる。
雛もじっと夏を見つめる。
そんな時間がしばらくの間、続いた。
そして、我慢しきれなくなったのは、(やっぱり)雛のほうだった。
雛が小さく足を一歩だけ、前に踏み出した。
ぺたっという雛の足音が夏に聞こえる。
「重力の重い星では、子供はうまく成長できない」雛はとても綺麗な声でそう呟いた。
「重力の重い星では、子供はうまく成長できない」夏は雛の言葉を繰り返した。
夏の声を聞いて、雛が笑う。
「初めまして。瀬戸夏さん。私は木戸雛と言います」雛が明るい声でそう言った。
初めまして? と、夏は疑問に思う。
夏と雛が会うことは今が初めてではない。こうして言葉をかわすことが初めましてということだろうか? それとも、夢の中で出会うことが、初めまして、ということなのだろうか?
「初めまして、木戸雛さん。私は瀬戸夏と言います」と夏は雛に返事をした。
「はい。もう知ってます」と雛は言って、(なんだか、すごく可笑しそうに)くすくすと、小さく笑った。
夢の中の木戸雛はとても明るい女の子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます