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 そこは真っ白な部屋だった。

 その部屋にはガラスの壁があった。ガラスの壁が部屋をこちら側と向こう側に分けている。こちら側には夏がいる。そして向こう側には雛がいた。

 だけど、その雛の様子がいつもと違った。

 それはここが夏の見る夢の世界の中だからなのかもしれない。

 いつもなら部屋の中央に置いてある白い小さな椅子に座っていて、人形のように動かないはずの雛は、今はそうではなくて、小さな白い両足を床につけて、自分の足で大地の上に立っていた。

 夏と同じように、自分の足でちゃんと立っていた。

 自分の足で立っている雛を見て、夏はこれが自分の見ている夢の風景なのだということを確信した。

 雛はいつもと同じ、真っ白で、ひらひらとした服を着ていた。それは肩口から紐が伸びているタイプの服で、こうしてみると、夏の着ている真っ白なワンピースは、やはり雛の着ている服とそっくりだった。

 夏と雛。

 真っ白な部屋に、真っ白な服。

 両手は前で組んでいる。

 その目は、いつものようになにもない空中の一点を見つめるのではなくて、きちんと夏を見ていた。

 そしてその顔は、にっこりと笑っていた。

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