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 夏は学園にいたときの遥のことを思い出す。

 とは言っても、遥が学園にいたのはほんの三ヶ月ちょっとの期間でしかなかった。

 四月の入学式から七月の今頃までの三ヶ月とちょっとの期間。

 その間、夏はずっと遥を見ていた。

 遥も同じように、ずっと夏を見てくれた。

 だからからっぽになった遥の席を見たときは本当にショックだった。

 夏はたくさん泣いて、それから実家を飛び出した。

 夏が遥の元に辿り着くまでの道中には、遥の残した足跡のようなものが所々に残っていた。それは遥がわざと残したものだろう、と夏は推測していた。

 最初、夏はその足音を遥が自分のために残してくれたのだと考えていた。

 しかし、それはどうやら違うようだった。

 遥はそこになんらかの希望を見出していたのだろう。

 遥は自分のために、足跡を残したのだ。

 こちら側の世界に帰ってきたときに、自分が迷子にならないように。

 それを夏は利用した。 

 だから夏はドームまでたどり着くことができたのだ。

「じゃあさ、もしも、……もしも、だよ? 私たちが死んじゃったらさ、私と遥は、もうずっと永遠に会えなくなっちゃうのかな?」

 夏の言葉は矛盾している。

 夏は人間は死んだら無になると思っている。だからこの場合、夏の考えにそって答えを出してみると、それはイエスということになる。夏には自分の質問の答えがわかっているのだ。

 それなのに夏はその問いを遥にした。

 それは遥が、あの天才が死後の世界を信じているというのなら、夏の知らない遥の世界では、遥の内側にいる偽物の私なら、本物の遥によって、救われることもあり得るのではないか? と考えたからだった。

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