22
「おやすみ、夏」
電気を消して、寝室のベットの中まで移動したところで、ようやく遥が口を開いた。
「うん。おやすみ、遥」
夏はそう言って瞳を閉じた。
それから遥はすぐに眠ってしまった。
体は疲れているはずなのに、夏はまったく眠れなかった。
どうしてもキスのことが頭から離れなかった。
いや、時間が経てば経つほど、恥ずかしくなってたまらない気分になった。ベットの中で夏の頬が真っ赤に染まった。体も芯から火照ってきた。
やばい。どうしよう?
夏がそう考えたとき、遥がごろんと寝返りをうった。
いつもの夏なら、相変わらず寝相が悪いんだな、と思うくらいの出来事だったけど、今はタイミングがまずかった。
油断していた夏の前に急に遥の顔が現れた。
それも夏の顔のすぐ目の前に。ちょうどさっき、地上でキスをしたときのように。
夏の心臓はドクンと一度跳ね上がった。
ど、どうしよう?
と、夏は思った。
遥の柔らかい唇がそこにある。
キスしたい。
あの唇にもう一度触れたい。
夏はそう思った。
しかし、それはできない。
だって、遥は、無防備な状態で眠っているのだから。そんな不意打ちのような卑怯な真似はできなかった。私は遥とは違うのだ。
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