21 ……ねえ、どうして泣いているの?

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 ……ねえ、どうして泣いているの?


 夏の唇にはまだ遥の柔らかい唇の感触が残ったままだった。

 そっと指で自分の唇に触れてみる。

 それを今度はゆっくりと離す。

 薄暗い部屋の中で、夏はそんな行為をさっきから何度か繰り返していた。

 ふかふかのベットの中。

 隣には小さな寝息を立てて、木戸遥が深い眠りについていた。

 夏は緊張して眠れない。

 なのに遥はそうではない。

 ぐっすりと眠っている。それが少し悔しかった。

 あのあと私たちは二人とも黙ったまま星を眺めて、それからしばらくしてエレベーターに乗って地下に戻ってきた。その間、遥はなにも話さなかった。夏も無言のままだった。

 言葉のない狭いエレベーターの中で夏の心臓はどきどきしっ放しだった。

 なのに遥はそうではなかった。

 まるでさっきキスをしたことなんて、もう忘れてしまったかのように平然としていた。口数が少ないのは通常の遥そのままだった。

 なんでキスをしたの?

 と、そんな質問をしたかった。

 でもそれがどうしてもできなかった。

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