17
「夏、地上にさ、星を観に行かない?」
突然遥がそんなことを言い出した。
夏は驚いて遥を見る。すると遥はやっぱり驚いた、という勝ち誇った顔をしていた。その顔に多少むっときたが、嬉しさのほうが優っていた。
「行く!」と夏は小さな女の子のような声で答える。
「あ、でも今日は星は見えないよ?」
夏は今夜の天気予報を思い出した。予報は雨。夏が昼間にドームの中を歩いてきたときも、空はどんよりと曇っていた。
「星は見えるよ。いつだって見えるの」遥は言う。
夏はその答えを怪訝に思う。
「さ、行きましょう」
遥が夏に手を差し出した。夏はその手を無言のままつかんだ。遥は笑い、夏も笑った。
二人はパジャマのままで、お互いの手をつないだままで、寝室をあとにした。
夏の心臓は少しだけどきどきしていた。
二人は研究所の中を移動して、地上と地下の間を移動するのにとても長い時間のかかる小さくて静かなエレベーターに乗った。
「私、地上に出るの本当に久しぶり」遥が言った。
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