16

 上機嫌で寝室に戻ると、部屋の中に遥の姿がなかった。

 探しに行こうかとも思ったが、この研究所の中を夏が勝手に移動できるとは思えない。なのでベットに腰掛けて、そこで遥の帰りを待つことにした。

 その間することもないので、夏は自分のリュックを手に取るとそこから小さめの、夏の右手のひらと同じくらいの大きさの『銀色の拳銃』を取り出して、それがきちんと使用することができるかチェックをすることにした。

 銀色の拳銃から弾倉を取り出すとそこにはきちんとぴかぴかに磨かれた新品の弾丸が装填されていた。拳銃自体にもなんの問題もないようだった。まだ一度も使っていない新品なのだから当たり前といえば当たり前なんだけど、とても大切なものなのでこうした定期的なチェックは欠かせないのだ。

「うーん」拳銃をリュックにしまったあとで、夏は大きく背伸びをした。

 それと同時に寝室のドアがスライドして開いた。

 そこにはもちろん遥がいた。

「なにしてたの?」夏が聞いた。

「雛のところに行っていたの」遥は言う。

「ふーん」夏は口を尖らせて遥を見た。「私を置いといて、あの子のところに行ってたいんだ」

 その言葉に遥はなにも答えない。ただ小さく微笑んでいるだけだった。

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