18

「どれくらいぶりなの?」

「半年ぶりくらいかな?」

 半年ぶり。

 そのころ、私はいったいなにをしていたんだっけ? うまく思い出せない。でも、あっという間に過ぎ去ってしまった時間だということだけは覚えている。

 夏の顔のすぐ横に遥の小さな顔があった。

 二人はぎゅうぎゅう詰めになってエレベーターに乗っている。おそらくこのエレベーターは本来一人乗り用なのだろう。遥専用のエレべーターなのだ。

 二人は沈黙する。

 エレベーターは地上に到着した。

 行きよりも到着の時間が少しだけ早い気がした。それは一人ではなく二人でいたからかもしれない、と夏は思った。

 外に出るとやっぱり空は曇っていた。

 真っ暗な空には星も月も出ていない。

 ただ大地の上を吹く風がとても気持ちよかった。エレベーター施設の周辺には電灯の明かりが灯っているが遠くには光はない。世界は真っ暗闇で満たされている。

 季節は夏。月は七月。

 本来なら、もっとじめじめしているのかもしれない。もっと気温は高いのかもしれない。虫だっていっぱいいるのかもしれない。しかしドームの中ではそれらはない。

 冷房の効いた部屋の中にいるように世界は涼しく、湿度も高くない。虫もいない。ドームの中で命を持っているものは夏と遥と、そして夏の知っている限りでは雛という女の子の三人だけのはずだった。

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