第58話ミリン

「腕がちぎれるぅ!。」


着地直前に速度を落とそうとして魔金属をパラシュート状にして腕二本で広げる。


すると風の抵抗が腕二本に集中してすごく痛い。


痛みに耐えながら滑空をしていると着地地点にリンと助けた女の子が待っていた。


ユウトはそのままなんとか着地して腕をさする。


ふぅー、痛かったー。


そんなことを思っていると。


「あ、あの!。」


あ、助けた女の子だ。


「助けてくださりありがとうございます!。」


ペコッとお辞儀どころか地面に顔を擦り付けて土下座をしている。


「顔を上げてお姉さん、とりあえず名前を教えてもらえる?。」


「は、はい!、私はミリン、ミリン・アスクです。」


このミリンは俺たちが目指しているソート村に住んでいて昨日さらわれて今に至るらしい。


「なあリン、この子送ってあげようぜ。」


「わかったわとりあえず今日は休みましょ。」


翌日。


テントを畳んで支度をし、3人で歩いているとリンが話しかけてきた。


「ねえ、昨日の夜の閃光はなんだったの?。」


「あーあれね、あれはメイクに作ってもらった道具でグレネードシェルて言うんだ。」


説明しながらユウトはグレネードシェルを取り出す。


「こいつの中は空洞になってて、中に入れるものによってグレネードシェルの効果は変わる、例えば昨日使ったのはフラッシュグレネード、あれは魔金属生成でマグネシウムに似たものを作り出して中にねじ込んだ。」


マグネシウムは燃やすと眩しいくらいに光る、なのでそれを魔金属で作り出してもっと輝き、目が潰れるような閃光を出せるように調節したのが昨日作ったフラッシュグレネードなのだ。


「へぇー中に入れる金属によって効果が変わるのね。」


リンが少し感心した感じに頷く。


素直にリンに関心されるとちょっと気持ち悪いなぁ。


ユウトはそう思いながら体をブルルと震わせる。


その会話にミリンも入ってくる。


「あ、あの!、お二人はどこに行かれるのですか?。」


急に入ってきたので少し口調が強い。


「俺たちはクウリウル雪山に行くんだ、目的は....あれ?、俺まだなんで行くのか聞いてないんだけど。」


そういえば道は教えてもらったけど、目的は教えてもらって無くない?


「そうね、忘れてたわ。」


「おい。」


「まあ、噂に聞く聖獣と契約しに行くんだけどね。」


「あの聖獣と会いに行くんですか!?。」


ミリンが驚いて言った。


うわ、びっくりした、この子急に入ってくるな。


「村の人達が聖獣を捕まえに行くって何人かで行ったんですけど、帰ってこなくて....。」


「それは聖獣が強いってこと?。」


「いえ、多分そこまでたどり着いてないと思います、あの雪山は迷うことで有名で土地勘がある村人さえ迷うんです。」


「ミリンちゃん、対処法はあるのか?。」


「多分ないと思いますあったら多分もう突破されているはずですし。」


「リン、どうするんだ?。」


ユウトはリンに聞く、正直も帰りたいと思っているからだ。


だがリンは真顔でこう言った。


「これ持ってれば安全よ。」


と、ユウトに羅針盤を見せる。


形は懐中時計のような羅針盤、ちょっとカッコいいな....て!。


「持ってるんかい!!。」


思わずメイクのような口調でツッコんでしまった。


「この羅針盤で何がわかるんだよ、ただでさえ村の人でも迷う山に登るのに羅針盤でたどり着けるはずないだろ。」


「いいえ、これはちょっと特別な羅針盤なの、前の軍の遠征に使われた羅針盤よ。」


「これは、羅針盤のボタンをクリックするとちっちゃい小皿みたいなものが飛び出してくるからこれに探したい人や動物の血を垂らすとそれが示してくれるってわけ。」


ユウトは感心しながらそれを見る、すると一つ疑問が浮かんだ。


「なあ、聖獣の血なんて持ってるのか?。」


そう聞くとリンはリュックからシリンダーみたいなものを取り出す。


中には赤い液体が入っている。


「まさか、本当に聖獣の血なのか?。」


ユウトが聞くとリンは少し自信なさげに答えた。


「多分そうよ、試した時はたしかにクウリウル雪山の方角を向いていたし確証は無いけど....多分そうよ。」


なんで多分を二回言った。


ユウトは心の中でツッコんでしまった。


「これは闇市で手に入れたものだからあまりあてにしてなかったのだけど....羅針盤に垂らしたらクウリウル雪山に針を向けたから、少しでも可能性があるならば私はどんな辛い道でも突き進む。」


そう言ったリンは拳をグッと握りしめる。


本当は空気を読むところなのでは無いかと思うが、その時ユウトは不意にこんなことを口走ってしまった。


「どうしてリンは、そこまでして聖獣に会いに行きたいんだ?。」


その理由が彼女をこれほどまでに強くしたのかを知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る