第59話私はなりたいの。

「え、なんで聖獣に会いに行きたいかですって?。」


すると空気の読まないユウトにミリンが横ひじを入れる。


イッタ!。


「何すんだよミリンちゃん。」


「さっきあんなに真剣だったのになんで空気読まずに聞いちゃうんですか!。」


「えーだってー。」


「えーもだってもありませんよ!、今のは空気を読んで黙ってるか話を変えるところでしたよね!?。」


ユウトとミリンはコソコソ話をしているがリンはそれが聞こえてないのか口を開く。


「私はね....プチキュアになりたいの。」


.....................。


空気が静まり返った。


ユウトがミリンに静かに聞く。


「ねね、プチキュアって何?。」


目も合わせずにミリンに聞いたが、返答が返ってこない。


恐る恐るミリンに顔を向けるとミリンが固まっていた。


そのあとリンに視線を向けると驚くほど真剣な顔をしていた。


少し正気に戻ったミリンが動揺しながらユウトに説明し始めた。


「プ、プチキュアていうのは、女の子がなれる可愛い魔法で敵をやっつけると言う名目の実際はえげつない魔法をぶっ放して敵を一掃する女性限定変態ギルド集団です....。」


「お、おおそうか、説明ありがとう。」


向こうの世界で言うプリ◯ュアてことでいいんだよな。


でもこれを真剣な顔で言うんだしリンは真面目なんだよな。


リン視点。


本当は嘘。


何一つ本当のことを言っていない。


いや、本当のことを言えないのだ。


私は人のことを一切信用しない、そうやって育ってきたのだから。


あれはもう10年前のこと。


私の住んでいた村は程よい雪国で、他の村と比べると少なかったがみんなの顔も覚えられて、仲も良く、何不自由ない生活を送れていた。


その村でほぼ同時期に村に2人の女の子の赤ちゃんが生まれた。


少し育つと名前をつけることになった。


名は極東の国の文字を使わせてもらい、黒髪で少し青色がかかった髪の赤ちゃんが凜〈リン〉、赤と緑が綺麗に混ざった髪が華蓮〈カレン〉と名付けられた。


リンとカレンは同い年ということもあり、それに村では15歳以下は2人しかいなかったことも含めて四六時中ずっと一緒だった。


ある日6歳になった私とカレンはいつものように雪が少し降り積もった山で遊んでいた。


「カレーン、ハア、ハア、待ってよぉ。」


「えー、リンは本当に脚が遅いなぁ。」


「カレンが早すぎるんだよ〜。」


そう言ってリンは膝に手をつく。


「そんなこと言ってたら日が暮れちゃうよ。」


そう言ってカレンは勢いよく山を登っていく。


カレンが行っちゃう、追いかけないと!。


「カレン待って....キャッ!!。」


リンが勢いよく転ぶ、足元を見てみると木の根っこがそこにはあった、多分雪が少しかぶってて足を引っ掛けたのだろう。


すぐにカレンが戻ってくる。


「リン、大丈夫!?。」


「大丈夫だよ、これくらい平気平気。」


そう言って立ち上がろうとするが右足から挫けるように倒れそうになる。


カレンが強引にリンのズボンの裾を上げると、リンの足が真っ赤になっていた。


「これ時間が経つと青くなるやつだね、大人の人呼んでくるからリンはそこの木の下で待ってて。」


大丈夫、私歩けるから。


そう言おうとする前にカレンが飛び出してしまった。


仕方ない、ここで急いで追いかけてもすれ違ったら崖から落っこちたとか騒がれて大変になるし、ここは大人しく待つことにしよう。


そう思ったリンはカレンの言いつけ通り、木の下で待った。


待った。


ずっと待った。


2時の方向にあった日はもう沈みかけている。


「カレン遅いな、遭難したのかな....。」


ふと口からそんな言葉が漏れたが、それは絶対に無いとすぐに断言する。


この山は2年間、ずっとカレンと2人で遊んでた唯一の遊び場であり、リンとカレン含め村のみんなはこの山のことは知らないことがないって言うほどにこの山のことは知り尽くしている。


それに危ないところ、険しいところはカレンは絶対に通らない、そんな好奇心に負けない性格であった。


それをわかっているから断言できる。


だがこれはあまりにも遅すぎる。


普段ならここから降りるとして、ゆっくり歩いたとしても30分とかからないはずだ。


「....やっぱり心配だよ。」


そう言ってすでに青黒くなった足首を支えて近くにあった丁度良い木の棒で突きながら山を降りる。


なんだろう、だんだんと煙臭くなってくる、今の時期に焼畑なんてしていただろうか?。


だんだんと降りるにつれてその煙臭いと言う嗅覚の警告は視覚へと警告を変えていく。


「あれなんか、煙が....黒い?。」


足の痛みからだろうか、嫌な予感からだろうか、身体中から冷汗がゾワゾワっと溢れ出す。


「ねえ、嘘だよね?。」


さっきまで使っていた木の棒を捨てて足の痛みを気にせずに走り出す。


だが相当腫れていたので流石に右脚に力が入らずに直ぐに転んでしまう。


足を庇いながら顔を上げると、火の海と化した村がそこにはあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る