第21話

「テオドール侯爵、久しい。」


洗い替えされた、軍服に着替えさせられて、クロード大公いや、レマリア王ヴァン一世陛下となったかつての後輩の前に座らされる。レマリア軍の到着に無防備都市宣言を出し、降伏した要塞都市カンネー。カンネー城塞の一室。司令官の執務室に珈琲を用意され当たり前だが剣は返しては貰えなかったが、その他に何をされるわけでもなく、着座させられる。


「お久しぶりです、陛下。何故、私を呼び出したのでしょう。」


「いや、魔導学院で先輩であった貴様に良くして貰ったことを覚えている。我らエルフは恩義は忘れん。」


レマリア王国の侯爵の位。陸軍の少将の階級。かつての部下たちへの指揮権の維持。

かなり魅力的であった。


「陛下、失礼ながら。私には妻子ある身。陛下に従う将帥となれば王都に残してきた妻と娘は処刑されるでしょう。」


いや、16になる娘は慰み者になるかもしれない。


「なんだ、その程度か。着いてこい。」


学生時代の彼のようにニヤッと笑うと珈琲を飲み干し、腰につけた拳銃を持って先に歩き出した。

しばらくすると武器庫につき、我が一族に伝わる名剣グラディウスが返却される。


「コマンド部隊を出す。すぐに向かうぞ。」


地竜を駆る事数時間。呼び出された頃は薄闇の頃だが既に夜も深けた頃。ヴァン曰く現在は19時頃と言う。


「陛下、お待ちしておりました。アンデルセン侯爵テオドール卿もようこそ我らが拠点へ。」


前線を大きく超え、魔獣が多数生息しまともな人間が活動できる場所ではない大林海を踏破して王都にほど近い場所。人と姿形変わらない人狼達の部隊がそこに拠点を築いて居た。


「大佐、ここは放棄しなくてはならんかもしれん。」


「テオドール卿は優秀な指揮官であると聞いております。幾つか構築した内の1つにしか過ぎない拠点なら価値はテオドール卿の方が勝るでしょう。」


50すぎに見える人狼の大佐はそう確約した。

彼らは人の姿で商人として王都に出入りしているらしく、その護衛の傭兵として中へはいると説明された。

細かい作戦を詰めながら、差し出された野戦糧食を喰らう。


「美味いな。君たちはこの様な食事を戦地で取れるのか。」


「将軍から一兵卒まで全員が同じだ。士気の維持に有益だからな。」


貴族の将官と下級貴族や平民の中でも上流階級の士官、そして平民と貧民の兵卒。普段の生活のみならず、戦場にまで貴族と下等民の格差は存在する。士気が高ければ勝てた戦いも多くあるが、いずれに置いても敗北している。


「テオドール卿、寝室の準備が満了致しました。陛下もどうぞ。」


「おぉ、ジェルジンスキー商会の馬車か!彼らは?」


「こんにちは、衛兵さん。彼は雇った傭兵ですよ。彼らの親父さんには世話になってね。」


「そうか、そうか。通ってよし。今回も食糧だな。」


「ええ。ご苦労様です」


フードを深く被ったコートの姿で長剣を腰に提げた俺とテオドールは、王都の南門から中へと入った。


「とりあえず、商会の建物に入りますよ。」


偽名はウォーレン・ハイネ。テオドールはギョーム・ヘンドリクセン。


「了解した。」


商会の建物は貴族から買い取ったという屋敷。元が男爵家のものらしく、巨大では無いが美しい建物だ。


「家族には、前線からの手紙を託された体で向かう。」


人足達が荷物を下ろすのを見下ろして2階の1室にて俺とテオドール、大佐は作戦会議を始めた。

用意する武器はリボルバーに長剣。リボルバーは懐に隠し、ボルトアクションのライフルを馬車に隠して屋敷の中に入る計画を立てた。決行は明日の朝1番。


「止まれ!」


訓練されてあるのだろう衛兵がマスケットを構えた2名、パイク兵3名の計5名と騎士らしき1人が門の前で警戒していた。


「ジェルジンスキー商会会頭だ。私は護衛のウォーレン・ハイネ。アンデルセン侯爵テオドール閣下より書状を預かって来た。」


正装に近い格好で髪の色を魔術により赤く染めた俺は前に出て書状を手渡す。


「確かに閣下の筆跡だ。門を開けろ!」


パイク兵3名は警戒しつつ、マスケット兵が門を開ける。


「奥方様は閣下からの使節には必ずお会いになる。我々も同席する故案内する」


門の内側に居た2名の騎士が1名を外側の騎士、アインハルト・ニルヴァレンと俺とテオドールを先導する。


「ここだ。」


扉が開かれると共にテオドールがフードを脱ぎ。妻のエリーゼを抱きしめる。


「エリーゼ殿久しい。」


と、一礼すると俺は騎士に事情を説明する。


「父上!」


と、メイドに呼ばせた娘のエリカが現れる。しばらく3人は抱きしめ合って居たが、頃合を見て遮る。


「感動の再会にすまないが、今すぐにここを出る。」


「了解だ。ヴァン、頼む。」


「任せろ我が友。」


「家財は良い。資金と家宝だけは移動させられるか?」


「大佐、ジェルジンスキー商会の商品を守り抜け。」


「了解ですとも大旦那様。」


「間違いなくバレる。兵員は?」


「閣下、私の部下3名を預けます。」


「残りで撹乱か。喜べ俺が率いてやる。」


久しぶりに俺の魔術を見せつけよう。

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復讐の英雄は世界に叛逆す 佐々木悠 @Itsuki515

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