モリアーティー教授の幽玄なる教唆
- ★★★ Excellent!!!
第一章を読んでの感想です。
ライヘンバッハの滝で死んだはずのジェームズ・モリアーティー教授が異世界で少女シェリーに憑依し、彼女を導く。虐げられた彼女は教授の知略を授かることでただの被害者から「策を練る者」へと変貌していきます。
本作のユニークさは、モリアーティーが「犯罪者」ではなく「幽霊の策謀者」として描かれる点にあります。彼は物理的に行動できず、シェリーを教育しながら知略を巡らせます。また魔法という未知の要素が絡むことで、論理と計算を武器に戦うモリアーティーの策がどこまで通用するのか、非常に興味を惹きます。
教授の冷徹な語り口は知的で洗練され、皮肉を交えながらも的確な分析を行います。シェリーの成長描写も丁寧で、彼女が知略を学びながら変化する様がリアルに描かれています。学園の理不尽な権力構造が緊張感を生み、モリアーティーの策略がそれをどう打破するのかが読者を引き込みます。
本作はモリアーティ教授を主役に据え、知略と教育を軸にした異色のホームズ・パスティーシュです。ホームズが登場するかどうかも含め、今後の展開が非常に楽しみな作品でした。