四章 原因はビュリアラ、いろんな意味で

四章 原因はビュリオラ、いろんな意味で1




 そのころのビュリオラ。


「なんなんですか。あなたがたは。夜中に人のうちに押しかけてきて、問答無用でひったてて。僕が何をしたっていうんだ。やっぱりギロチンなのか? そうか。そうだったんだな。姫さまの人形造りなんて、僕をつれてくる口実だったんだぁ!」


 宮殿の謁見えっけんひかえ室。

 金襴きんらん張りの豪華なイスにもすわらず、部屋のすみで頭をかかえて、しゃがみこむビュリオラを、兵士たちが、もてあましぎみにながめている。


「ベリーヒトが極度の人間嫌いって、ほんとだったんだな」


「抵抗するから、しょうがなく、ひっぱってきたが……どうしたらいいんだ?」


「隊長が今、フローランきょうを呼びに行ってるよ。例の殺人犯の一味に、こいつの召使いがいたこと、卿が尋問なさるんだそうだ」


 兵士たちのヒソヒソ声も、追いつめられたウサギのように、パニックを起こして、おびえているビュリオラの耳には聞こえていない。


 そこへ、兵隊長とフローランがやってきたので、いよいよ、ビュリオラは死刑執行人が来たのだと勘違いした。


「ギロチンか? 火焙り? それとも縛り首? まさか、車裂きなんてことはないだろう? 痛いのはキライなんだ。せめて、らくに死ねる方法にして」


 あっけにとられて、フローランはあいた口がふさがらない。


「ベリーヒトさん。落ちついてください。我々は、あなたを共犯と決めつけてるわけじゃないんだ。ただ、召使いのことで釈明を求めているだけで——」


 召使いのこと……“あのこと”か。

 僕がシャルランに釈明しなければならないことは、あのことしかない……。


「シャルランは、なんにも悪くないんだ! 僕が勝手にやったことで……シャルランは何も知らないんだ。シャルランには言わないで!」


 フローランと兵隊長は、ギョッとして顔を見あわせた。

「えっ? あんたが、やったのか? ベリーヒト」

「そうだよ。僕がやったよ」


「なんで、あんなことを?」

「……一人で、さみしかったからだ。それ以外ないじゃないか」


「だからって、何も殺さなくても」


「殺したんじゃない。魂を僕のもとに呼びよせただけだ。ほかに方法がなかったんだ。一族は滅びたから、もう新しい体は生まれないし……このまま彼女が消えてなくなるなんて、イヤだったんだよォ!」


 フローランと兵隊長は、頭のよこで、指をグルグルまわした。それから、ナイショ話を始める。


「やっぱり、ここが……」と、兵隊長。

「たしかに。常人には理解しがたい。かわいそうだが、見せしめにしなければ、民が納得しない。この件では何人も死んでいるし、ヘルダさままで、あんなことに……」


「まったく、こんな優男が、よくもまあ、あんな凶行を。あの変な青い髪を見たときから、正気とは思っていなかったが」

「いつもカツラをかぶってるから、気がつかなかった」


「フローラン卿は今すぐ、陛下のお裁きを仰ぎに行ってください」

「わかりました。とりあえず、ベリーヒトは地下牢へ」

「了解」

「しかし、となると、逃げていったあの男たちはなんだったのか」


 フローランがビュリオラにむきなおる。

 ビュリオラはビクリとして、カーテンのかげにかくれた。


「ベリーヒトさん」

「……なんですか?」


「金髪に緑の目の、ものすごい美男子を知ってますか?」

「……兄です」


 フローランは、また兵隊長と話す。


「なるほど、兄か。頭のおかしい弟をかばうために、事件のあと、証拠隠滅をはかっていたのかもしれない。それで彼らのところに、ベリーヒトの召使いがいたのか。ベリーヒトのことを相談してたんだな」


「では、やはり、彼らも捕らえなければなりませんな」


「引き続き、追っ手をかけてください。町に手配書もくばるように」

「了解しました」


 ビュリオラは兵士たちに、ひったてられていった。

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