秋のキス

「もうすっかり秋だねぇ」


「あっああ」


「食べ物の美味しい季節よね。わたし、焼き芋とか焼き栗とか大好きなの! 毎年ついつい食べ過ぎちゃうのよ」


「へっへぇ~」


わたしは今、彼氏と一緒に公園を散歩している。


小高い山の上に作られた公園には、秋の植物がたくさんある。


金木犀の花が咲き、紅葉も真っ赤だ。


しかしそれにも増して、彼氏の顔色が真っ赤。


理由は分かっている。


わたしと、手をつないで歩いているからだ。


でも彼氏は少し引き気味で、わたしに引っ張られているカタチになっている。

何となくオクテの彼氏だけど、優しくてわたしは大好き!


だから三ヶ月前、わたしの方から告白した。


それ以来、遊びに行く約束はほぼわたしの方から。


男友達より優先してくれるのは良いけど…何だか無理やりわたしに合わせてくれているようで、ちょっと申し訳ないかな。


ふと目の前に紅葉が降って来た。


手を伸ばして取って、振り返った。


「どっどうかした?」


ビックリしている彼氏の目の前に、真っ赤に染まった紅葉を差し出す。


「ふふっ。同じ色。真っ赤っか」


「ええっ!?」


彼氏は片手で自分の顔に触れる。


熱いことに気付いたようだ。


「可愛いわよ」


「可愛いってねぇ…」


彼氏はため息をついて、紅葉に手を伸ばしてきた…かと思ったら、わたしの手ごと掴んで…。


「んっ…!」


いきなり…キスしてきた。


熱い唇から、熱が一気にわたしに移る。


一瞬にして、体が熱くなった。


「なっ…」


すぐに唇は離れたけれど、熱は唇に宿ったまま…。


「…お前の顔も、真っ赤だ」


「あっ当たり前でしょ!? …熱が移ったんだから」


そう言ってわたしは彼氏の胸に倒れ込んだ。


「おっおい! 大丈夫か?」


「も…死にそうよ」


心臓がありえないぐらい、バクバク高鳴っている。


キスをするのは何も今日がはじめてじゃない。


でも…今日みたいに、彼氏の方からこんなキスははじめて…。


「ごっごめん。でもキスしたくなったからさ。あんまり可愛かったから…」


…嬉しい。


やっぱり彼氏の声で言われると、とても嬉しい!


「うん…! ありがと」


「えっ、何でお礼…」


「もちろん、嬉しかったからよ」


わたしは顔を上げて、背伸びをして、彼氏にキスをした。


「…えっ、ええっ!」

彼氏の顔が、紅葉以上に真っ赤になった。


「ふふっ。可愛い」


わたしはそんな彼氏に微笑みかける。


「大好きよ」


「うっうん。僕も好きだよ」


「ううん。きっとわたしの方がもっと好き!」


「ええ~?」


戸惑った彼氏に、わたしは抱きついた。


「ずっともっと大好きよ!」


「~~~っ! あ~もうっ! 僕だって大好きだってば!」


強い力で抱き締め返され、熱がまた上がる。


季節は秋だけど、わたし達の熱はまだまだ冷めそうにない。


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