病弱なキス

「ヤダぁ! 学校行くぅ~!」


「ガマンしろ。お前、熱あるじゃないか」


布団の上で、ジタバタ暴れる。


「今日って遠足じゃない! 楽しみにしてたんだからぁ!」


「だからムリだってば。行ったとしても、みんなに迷惑かけるだけだぞ?」


「うっ…!」


ぴたっと動きを止めると、そのまま布団に寝かしつけられる。


「今日は一日寝ていろ」


「だって…」


「陶芸教室と遊園地なら、体調が回復したら連れてってやるから」


そう言ってわたしの頭を撫でる優しく大きな手。


「…みんなと一緒じゃなきゃ…今日じゃなきゃ意味無いのに…」


そのまま眼を覆い隠され、わたしは涙を流しながら眼を閉じた。


…幼稚園の時からいっつもこうだ。


生まれ付き、病弱体質の為、まともに学校にも行けない。


それは小・中・高校に上がった今でも同じで…。


せっかく私服で行けるってことで、新しい服も買ったのにぃ…。


「いいから寝てろ」


わたしは幼馴染の彼の腕を掴んだ。


「…行って良いわよ」


彼は父さんの秘書の息子。


同じ歳のせいで、小さい頃からずっとわたしの面倒を見てくれている。


「行かないよ」


「行って良いってば!」


わたしは目を覆っている手をはがした。


「用意、してきたんでしょう? もったいないわよ」


彼はわたしがこういう行事に参加できない時、自分も参加しない。


ずっとわたしの側にいてくれるけど…いつまでも迷惑をかけられない。


「行かないって。…お前が行けないのに、俺だけ行っても仕方ないだろう?」


「アンタはわたしと違って、クラスに友達いっぱいいるんだから、行けば楽しいわよ」


「楽しくないよ」


「何でよ!」


思わず怒鳴ってしまう。


「お前がいなきゃつまらないだろう?」


「……えっ?」


「だから、お前が一緒じゃなきゃ楽しめないんだよ。俺は」


「それって…告白?」


「まあな」


…味も素っ気も色気も無い…。


がくっと脱力してしまう。


「それにお前、俺がいないと無茶ばっかするだろ? 俺ぐらいしか相手にならないって」


「どーゆー意味よっ!」


「こんな大きな和風の屋敷に住んでて、しかもお嬢様で病弱。周りからは儚げな美少女なんて言われているが、結構おてんばだしな」


たっ確かに昔から、病弱ながらも暴れてたけど…。


「アンタっ、本当にわたしのこと好きなの?」


「好きだよ。本当に」


フッと笑って、いきなりわたしに覆いかぶさってきたかと思うと…キスされた。


軽く弾むような、柔らかくも…とても甘いキス。


「…へ?」


「お前の面倒、一生見てやるよ。俺だけの役目だ」


「……絶対一生困らせてやる」


「ああ、やってみろよ。受けて立つぜ?」


…コレがわたし達の恋愛のカタチか。


でもわたし達らしい。


「今はとにかく、寝て回復しろ」


「…病気の体に悪いことしたクセに」


「これからはコレ以上の悪さをするぞ?」


間近でニヤッと笑われ、カッと頭に血が上った。


「…っ!? バカぁ!」


バキィっ!



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