第58話 再び商業ギルド別館 5

木箱の中の絵の多さに、かなり驚かれた。

モノクロの絵だけだが、かなりの枚数になるそれらにただ驚くばかりだ。


「これ複製スキルで、増やして使えないか?」


ナナカが、紙物なら複製可能だよなと聞いてくる。


「そんなスキルもあるの?」


初めてきいた。


「あるな。大抵は、契約書作成で使われる」


役所を例にすると、どのような契約でも、必ず2枚は複製スキルで作られたものを使うらしい。元の1枚は保管庫に保管し、2枚の複製した物を契約した者に渡される。

複製スキルは、役所勤めや契約などの遣り取りをする様々なギルドで利用されるスキルらしい。


「それだと、お金とかも複製スキルで複製出来たりしないの?」


悪用されてしまうのでは?と、疑問に思い聞いてみる。


「それは無理。複製スキルは、あくまで用意した無地の別の物に契約書と同じ内容を写すだけだぞ」


レアは、自分の魔力変換で画材を出していたので、てっきり複製スキルも似たような事するかと思えば、コピー&ペーストするスキルでしかないらしい。


「じゃあ複製スキルあれば、写本作れるの?」


この世界、本はあるが物凄く高い。


「出来なくはないが、頼んだ場合それでもかなりの高額になるな」


複製スキルは、魔力消費がその人毎によりかなり違うらしい。多分、熟練度が関係していそうだ。


「商業ギルドにも、複製スキル持ちいますか?」


いるなら呼んで欲しいと、カウルじいさんにお願いする。


「なら、バルとの契約もついでしてしまうかの?ルシ坊も、構わないじゃろう?」


先にクリップボードを組み込んだ持ち運びしやすい革製の、スケッチセットの契約を交わすが、貴族に販売するルートにルシアスが関わる事とした。

店でも売るが、貴族相手はルシアスに任せる事でリスクを減らすつもりだ。


この世界の身分ある者から、下の者に対する姿勢は、貴族毎によって違うし、ちょっとした誤解からどんな悪意がくるかも分からない。


製品が出来上がり次第、まず領主を通して王妃に贈る。数は予備も考え最低でも10は用意すると言った決まり事を決めて、バルおじさんとの契約を終える。


契約書は、清書してもらった物から、今回は3枚を複製スキルで写した。

仮契約でバルおじさんに渡していた、仮契約書を参考にして契約書を完成させた。


複製スキル持ちは、ミナさんと言った小柄な猫系獣人の女性で、1枚で魔力10ほど消費したらしい。

複製スキルは、使う物が精密であるほど魔力を消費するらしく、写本は可能か?と聞けば内容によるらしい。


「これ複製出来ますか?MP回復薬渡します」


MP回復薬は、金貨1枚と高いがどれだけ複製できるか知りたいので惜しくはない。

モノクロ絵と、同じサイズの紙を渡す。


「絵ね。これなら出来るわ」


文字と違って、絵はやりやすいようだ。

目の前でスキルを使ってもらったが、浮き出るように、無地の紙に同じ絵が出来上がっていた。

1枚で魔力消費は3と少なかったが、緻密な絵になると、10消費する物もあり複製する物が緻密で細かくなるほど魔力を使うようだ。


「この複製スキルって、どれくらいの人が持ってますか?」


「ギルドでスキル購入出来るわよ。不人気ってほどじゃないけれど、適正あるなら所持出来るわ」


驚いた事に、スキルは始めから所持している物、生活する中で派生する物、スキル売買でスクロール購入出来る物とあるらしい。

魔法でも同じように売買は出来るが、スキルスクロールとは、価格がかなり違うと教えてもらった。


これらは、ダンジョンなどで手に入るのでここ最近は色んなスクロールが、かなり集まっていると言う。


ただ購入したスクロールの、スキルが必ず身につくかまで分からないた為、買って損する場合もあると教えてもらった。


「レア嬢ちゃん。預かった荷物の中にも、かなりのスクロールが混じっておる。まだどれだけあるか、詳しい報告はないがのう」


それなら、中に複製スキルもあるかもしれないと考えていると、スクロール使わなくても好きなだけスキルと魔法増やせるのに〜と、脳内に神託が流れる。

転生者特典を、忘れたの?と言っているようだ。

意味なく増やしても、使いこなせないと思いつつ、転生者とバレたくないのだ。

どうも話で聞くようになった転生者の扱いが、まだ良く分かっていないので、かなりの不安があるのだ。


「ならスクロールは、確認してから考えます」


脳内での神からの神託を見つつ、現実での話し合いと、かなり疲れてくる。


商業ギルドに預けた荷物は、大まかに分類分けして鑑定しているが、かなりの数らしい。

今回協力してくれた冒険者への、報酬もこれだけで賄えるだろと言われた。


複製スキルのミナさんに、回復薬分だけその場で絵の複製をお願いした。


「さて、塗り絵じゃったな。これは斬新かもしれん」


カウルじいさんが、新たな仕事?道楽?になるか不明だが、試すだけの価値があるかもしれないと話す。


絵を描くのは、かなりの道楽とされている。

画家がいない訳ではないが、大抵は貴族の3男から下の者がなる。

跡継ぎになれない、貴族の為にある職だ。


「これは私が描いてますが、こっちは木工工房にお願いした物を刷ってもらったので、元の絵が用意出来れば、彫ってもらった後にインクをつけて、何度も刷ることで元の木版が、壊れない限り使えます」


服飾の町スレバなので、布を染めるインクはかなりの種類がある。

その中から粘度が高いインクを、探して試した物だが刷り上がりが、まだかなり気に入らない。

実験段階で、インクは染色屋と交渉中だった。


「その木工工房と染色屋も、契約を交わさねば不味いな」


考え方によっては、新しい職業が発生する。


「原画を描く者、木版を彫る者、紙を用意する者、染色屋、刷る者、出来上がり製品の販売する者と言ったところだな」


これだけでも、かなりの者が関わってくる。

1番必要なのは絵描きかもしれないが、協力してもらうのは、かなり難しいだろう。


本来、これだけの事をするとかなりの資金や人材が必要になる。


「店は、ラウシャの自由にするように、こっちは決めている。元々、レアの持ち物なら店に関わるのに否はないだろう」


アインスの理解も得られたようだ。

スケッチセットが出来るまでは、塗り絵の方は準備だけ進めることになった。




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