第52話 冒険者ギルド前広場 3

ちょっとした騒ぎで、耳目を集めてしまったが、まだまだ見たいとナナカが別の屋台へ向かう。


「アンタも大変さね」


案内役になってしまっているレアに、おばちゃんがサービスだと串1本くれた。

レアが話した情報が、どれだけ重要かおばちゃんは直ぐに気づいた様で情報料代わりらしい。


「ありがとうございます。連れの馬鹿やった代わりのつもりだったけど、有り難くいただきます」


滲み出るキノコのダシが、やはり美味しいとその場で食べる。


背中にくっ付いているクーが、念話で話してかけてくる。屋台の奥を見ろと念話で言ってくるのだ。


どうしたの?とよく見れば購入者は、屋台の奥に簡易テーブルとイスを並べた場所でも、自由に食べられるようしているのか、周囲の飲食屋台で購入した食べ物を食べている。

食べ歩きで、屋台の商品や人にぶつかって汚さない為の対策の場所らしい。


その中で、犬系の獣人の15歳前後の男の子がペコリと、レアにお礼を言う様にお辞儀していた。

その肩には、糸蜘蛛が乗っていた。

どうやらクーが、あの糸蜘蛛と念話してレアに教えた様だ。


「あの子が、採取した人みたいだね」


バイバイと、手を振ってレアは先に移動したナナカを追う。自分の護衛だと忘れ切っているようだ。


「ナナカ!」


多少の人混みで分かりにくいが、4つ先にある屋台でナナカを見つける。


「あっ、悪りぃ。それより、これチビ達に良いと思わないか?」


レアを知る者も多く、危険ないだろうと判断したからか、ナナカはレアから離れたがチビ達の土産になる物を見つけたらしい。

仲間の子でも、かなり可愛がっているのが分かる。


「へー、ワンポイントの刺繍入れた物もあるんだな」


皮製品の屋台なのか、小さな物は小銭入れからはじまり、大きな物だと馬車用に使う荷物の覆い用に加工した皮も置いているようだ。


「おじさん。まだん〜3歳から5歳くらいまでの子が持ち運びしやすくて、長く使える物って何かある?」


毎日色んな客層を相手しているなら、何かアドバイスあるか尋ねてみた。


「そうさなぁ。そこまで小さい子に渡すなら、大人が腰に付ける巾着タイプのこれならどうだ?」


駆け出し冒険者が、最初に買う皮製品の小銭入れだが、使用する者に寄っては、嵩張る小物を入れたりもする。

多少のサイズ調整を、購入後でも自分好みで変更出来るので、程良く売れている。


小さな子なら、自分のお気に入りの常に持っていたい物を携帯出来るし、金具部分に別売りの革紐を使うと巾着リュックとしても背負えるし、肩掛けバッグの様な使い方も出来るようだ。


劣化防止の付与は付いていないからか、1つ銀貨1枚だが駆け出し冒険者なら銅貨80枚のサービス価格で販売している。


ちなみにスレバの町は、服飾の町と言われるだけあって、ハギレも銅貨1枚から色々買えるので、手先が器用だったり身内に裁縫出来る者がいれば、まず布製の小銭入れを手作りして身につけるので、皮製品の小銭入れを買うのはこれで一端の冒険者になれたと言う証みたいな物らしい。



「染色がバラバラなのは、実験用みたいだけど、そこがまた味があって面白いかな」


鑑定での皮は、カウワイの皮とあってこれは牛系の魔物で肉は一般的に流通しているし、カウで牛、ワイは水系の物と分かる。


川近くの水辺に生息する魔物で、山ならサン、海ならシーとカウの後ろに付く言葉が変化する。

この世界では牛は魔物なので、平原だけでなく地域ごとによって色んな種類に変化している。


「おう。この町の染色が色々あって、ついやり過ぎてな。母ちゃんに怒られた。試しの物だが、在庫抱えるなら安く提供して客寄せにしてる物だが、付与はないが普通に使ってもそう壊れない物を作ってると自負しているつもりだ」


「なら親父、買った。そうだな。小物入れにも使えるし、何枚あっても困らないし今度俺の身内が、店やるんでそこでも販売出来そうな物として仕入れにしても良さそうだな」


「ちょっとナナカ。それ流石にマズくない?」


店担当は、ラウシャさんが責任者と聞いていたが、大丈夫なのだろうか?


「大丈夫。普段から、仲間内で気に入った物見つけたらその場で一定数まとめて契約して購入する」


当初チビ達用のつもりだったが、今回はこのお得感ある巾着袋を、在庫ある分だけまず購入する。

売り主に、店の場所を話し、詳しい商談はギルドを仲介するが、大まかなやりとりは即結界を張ってしまったので、レアだけでなく周りに聞こえて来ないが、ふたりで商談をまとめ商業ギルドで後日契約と、決めてしまっていた。


「早っ、商談は分かったけど決めるの早くない?」


結界の解除を確認してレアは、そう聞く。


「おや嬢ちゃんは、屋台の商談見たことないのかね?」


どうやら結界を張ったのは、おじさんが持つ魔道具のようだ。


「屋台は、普通に買うくらいでしか利用しないので、商談とか初めて見ました」


商業ギルドでの商談は、利用した喫茶室で見たことはある。

レアが気付いてなかっただけで、そこかしこの屋台で日常的に行われている事だと知った。


「店持つのは初めてなら仕方ないさ。ラウシャが責任者だが、最終的にはお前の持ち物って分かってなかったのか?」


「あっ、そっかすっかり忘れてたよ。ラウシャさんに店として使ってもらうつもりだったし、私も店に置いてもらう物お願い出来たら良いなぁって思ってた程度だしね」


そっか自分の店でもあるんだと、改めて思う。店長をラウシャさんに任せたと言うかんじだろうか?


「嬢ちゃんは、何か買ってくれるかい?」


必要なら、オーダー注文もすると言われた。


「んー、急に言われても、あっそうだこれを入れる持ち運び出来る物作れますか?」


「鉛筆かい?」


「と、この紙を合わせて収納出来て、後消しの実に鉛筆削るナイフもまとめて入れて持ち運べる肩掛けバッグみたいにも使えて」


途中から商談用魔道具を、起動してくれたようだ。こんどは、ナナカも範囲に入れてやりとり出来るよう操作してくれた。


「つい今しがた気付いたが、今回の事件に巻き込まれた子は、あんただね嬢ちゃん?」


姿を知らなかったが、周りの注目度からそれとなく察してくれたらしい。


「そうなんです。殴られたくらいで、森の中を逃げ切って無事生還したんですけど、無事は良かったけど、こう妙な注目されたりするのが鬱陶しいんですよね」


見本で出したハガキサイズと、A5とA3サイズの紙を見せる。


「かなり大きな紙だ」


紙も、サイズが大きくなるほど値段は上がる。


「製紙スキルで出した物です」


まず色鉛筆を売り出す前に、スケッチセットとして3サイズ展開して広める事から始めようと考えた。


「あのゴミスキルかい?嬢ちゃんここまで出せるまで頑張ったんだな」


やはり一般でも、製紙スキルはゴミスキルと思われているようだ。


「ありがとうおじさん。えっと、鉛筆は3本くらいと、消しの実に鉛筆削るナイフ付けてどこでも自由に持ち運び出来て描くこと可能なので、使い方は持ち主次第ですね」


分かりやすい様に、A5サイズの紙に絵としてこう言うのがあったら良いなと、アイデアを描いていく。


アイテムポーチから、画板かわりにスキルで作っておいたクリップボードも出して、そこに紙を挟んで見せながら説明する。

ハガキサイズセットのみサービス価格の銀貨5枚で、店で販売するのはどうかな?とナナカに確認する。


「お前商売分かってないだろう?」


あり得ないと、言われてしまった。

通常店売りの鉛筆1本銅貨8枚、消しの実1個銅貨1枚で、その辺の店で買えるし商業ギルドで購入するなら何本かまとめ買いなら割引購入ができる。

鉛筆を3本に消しの実だけなら、銅貨25枚だ。

皮製品の物も、製作者次第だが銀貨2枚くらいで出来なくはない。

ただ鉛筆削るナイフまで付けると、銀貨5枚は大損だ。


オーダーで作ったケースに落ちない様にするナイフを、鍛治師に頼むとなると金貨1枚でも足りない可能性がある。

金貨1枚以上をする物を、銀貨5枚で売るなんて、売れるほど大損になる。


「大丈夫。充分元取れるし」


レアの画材スキルで、そのナイフを出す予定だからだ。

詳しくおじさんに話す訳にもいかないので、ナナカには後で説明すると伝える。


「嬢ちゃん、これはもしこの店で使うとなると、どんな使い方が出来る?」


「そうですね。屋台って食べ物や飲み物なら、一律いくらって決めた価格を、紙に書いたりして分かる様にしてますよね?」


それはそうだと、頷く。


「ここみたいに売るアイテムの種類が多いと、個別に価格が分からないと、売り子なんて出来ない」


その通りだと頷く。

いちいち価格を、作った物に価格付の作業をしていては、別の仕事も進まない。


間違いない様に屋台に置く場所毎に、同じ価格の物を紐でまとめて置いている。

縛っている紐に価格を書いた物がついているがわざわざそれを見て確認しなくても、価格は覚えている。


「ここ結構人通るけど、無造作に積み上げてるから、じっくり見たい人には向かないから、おじさん在庫数個しかなくて、売り切りたいけどなかなか売れない物ってある?」


「あるな。これだ」


鑑定で見ると、カウサン製のリュックだった。

これも付与なしだが、価格は銀貨4枚と言われた。これでも元は銀貨6枚の物らしい。

値切って売っているが、なかなか売れ切れないと言う。


「今日だけ限定で、売れた場合いくらでなら売ってやるって思います?」


「これ3つしか残ってないが、そうだなぁ売れ切れるなら1つ銀貨2枚でもいいな」


レアがする事に、乗ってくれた様で屋台のおじさんが、銀貨2枚と今日だけ限定3個と書いてカウサン製リュックの絵を、鉛筆画でその場で描き上げ確認して了解をもらう。


それと同じ物をもう1枚描き上げて、屋台の上と下の比較的目に付く場所にクリップボードで止め、下部分が風でよれないよう蜘蛛糸で固定する。

蜘蛛糸は、クーにその場で念話で頼んだので、言われた位置に綺麗に固定してくれた。


「売れなかったら、ごめんなさいかな」


おじさんも、売れるとも思っていないようだ。

売れて欲しいなぁと、思うがこの人混みの多さだ。


「さて嬢ちゃん達、まだまだ商談したいしな。こっち側に入ってくれるか?」


狭いが屋台と屋台の間の隙間から、移動してくれと、言われ屋台の中に入る。

屋台の内側はかなり狭いと思っていたが、各自で椅子とテーブルを入れて快適に過ごせる工夫をしているようだ。


「おう。そこ座ってくれ。買取の在庫間違いないか確認だ」


孫だと言う少女が、分かったと巾着袋を空の木箱に数えながら詰めている。

かなり数があるが、大丈夫かと聞けばラウシャさんから、金貨500枚まで預かっているとナナカが、小声で教えてくれた。


Aランクチームが、3つも在籍するクランだけあって、金には困る事態になる事もないようだ。









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