第45話 エルフ族 4

出来上がった中庭は、真ん中にあった木は特に変化なく、広さだけがありえなく拡張されている。


「へーこうなるんだ。これならテーブルやイス置いてここで、お茶や食事もできそうだわ」


子ども達が、クーと追いかけっこしだす。


「俺の蜘蛛が、あの木ですごしたいってさ」


ナナカの背中にいた花蜘蛛が、木の天辺まで登り、気に入った枝に巣をつくりだしている。


「蜘蛛をテイムした仲間は、知り合いに今まではいなかったけど、大丈夫なの?」


ラウシャが、初めて見る種類からか子どもが襲われないかと心配のようだ。


「この町の蜘蛛は、自分から襲う事は今までないですよ」


レアが、領主の一族の蜘蛛の契約の話を教える。一般市民には秘匿されている契約もあるだろうが、この町の蜘蛛の扱いを聞けば、過保護すぎるほどに蜘蛛を守っているし、テイムされた蜘蛛もマスターに合わせた活動を受け入れている。


「ナナカの蜘蛛は、念話が出来るのでやっていけない事を先に話しておけば、子どもに危険はないし、逆に子守に最適かも」


追い回されていたクーが、木に登り枝に糸を繋げて何か編み込んでいる。

届かない高さに、逃げてしまったクーを見て子どもたちが騒いでいた。


「あれは、何をしてるの?」


「追われるのが疲れたので、遊び道具を作っているみたいかな」


レアと念話で話していたが、 蜘蛛の糸製ブランコらしい。

小さな子どもだけなら危険だが、大人も入れる大きさにするようだ。


ブランコに使える板はあったかなと、アイテムポーチをさがすが、素材は空間魔法の部屋に移動させていたと思い出す。


「ラウシャさん。ちょっと魔法使うんで、驚かないで下さい」


目の前にドアを出現させると、中に入り素材部屋としている1番のドアを開ける。

丸太状態だが、切り出せばブランコとして使えるだろう。


「レアちゃんこれは何?」


ラウシャがたずねる。


「空間魔法ですけど、何か変ですか?」


特に拒否もしていなかったから、ラウシャがレアに着いてきたようだ。


「貴女、空間魔法も持ってたの?」


「逃げてる間に、手に入れたってさ。見た目人族だけど、能力はエルフ族寄りみたいだぞ」


ナナカが、レアから聞いた事を教える。


「拐われる訳だわ。このまま弱いと、無理矢理隷属させられる危険があるわ」


エルフ族並に、レアも拐われる危険性がある。


「でも、これがあるなら隠れられるし良いわね」


「だよな。鍵くれって頼んだのに、アインスの了解得ないとダメだってさ」


まだ部屋数は少ないが、隠れる空間があるならまた犯罪に巻き込まれても逃げ切る事も出来る。


「レアちゃん。この部屋子ども達の、避難場所に使わせて」


「良いですよ。まだレベルが低いので、部屋狭いですが、3番ドアの鍵渡しますね。2番は、既に決まってるので」


鍵を持てるのは3人だけだ。


「俺が頼んだ時は、断ったのはなんでだよ!」


「だって、子ども除くとこのチームの1番下っ端だよね?上の人の了解ないとダメって思ったのと、エルフの女性と子供の方が、犯罪に巻き込まれやすいよね?」


逃げ場あるなら、作った方がいい。

聞けばここに来ている女性は3人だけらしい。

鍵はラウシャ、ミネルバ、アイリスに渡せば良いだろう。


「アインスさんの、了解あれば1番の部屋の鍵渡すよ」


まぁ花蜘蛛の餌問題もあって、いずれ渡す事になると分かっている。


「出来るだけ、頻繁に使ってもらえますか?その方がレベル上がりやすいのと、部屋数増やしたり、広げたりが早く可能になるので」


レベルが上がりやすいスキルがあると、伝える。部屋数を増やした事で、中の広さがまだ狭いと説明する。


「聞いてると、何でもありだね。始祖並の能力じゃないかい?」


レアは神話の時代の物語で、エルフ族の元になった種族までは伝わっていないが、始祖と呼ばれていると知った。

ミネルバも、開いたドアから中を確認している。


「エルフ族の事は知らないので、分からないです。まぁ便利に使えるので使う感じですね」


転生者とばれなければ、何でも良いと考えている。


「これ鍵持てるのが3人だけとして、他は入れないの?」


レアは鍵を持ってる者の意思で、入れる数に決まりはないと伝える。


「ならチビ達にも、先に教えた方がいいな」


ナナカが、子ども達に面白い物見せると伝えている。

レアの1番ドアの部屋は、今は素材置き場状態で蜘蛛の生き餌の蟲も、何種類か置かれているので子供たちには興味深いだろう。


「「にいたん。なに?」」


呼ばれたミリヤ、ナミヤの双子がポテポテと歩いて近づいてくる。

アーイムは、蜘蛛のクーを見上げながらも呼ばれたのでナナカの方に寄ってくる。

かなりクーに、未練があるようだ。


「秘密の部屋あるぞ」


前世日本で言う所の、秘密基地があるとナナカが教える。

この世界でも、子どもは秘密基地に通じる物を作りたくなるようで、さっきまでなかったドアを見てキラキラとさせて見ている。


「秘密の部屋?」


確かに空間魔法で出現させた、秘密の部屋といえる。


「レアちゃんは分からないか?エルフの子どもって、森とかの木のウロや洞窟あれば自分の部屋って言って、子どもなりの宝物隠したりして遊ぶ場所のことよ」


家の中だと、屋根裏部屋や物置らしい。


「あー。確かに孤児院でも、似たような事する子がいました」


物置に毛布持ち込んだ子がいて、シスターに怒られていたなと思う。


レアの前世でも、幼稚園にあった分厚い児童書で、即席の部屋といえないが本を立てて作った空間を思い出す。


世界が違っても、子どもは自分だけの秘密基地を作りたがるようだ。


「これを使えるようになって、間がないせいか部屋数はまだ3部屋しかないです」


1の部屋は広いが、素材置き場と生き餌を置いていると説明し、2の部屋は生き餌捕獲を頼んだ孤児院出身の冒険者2人が使用していると話す。


3の部屋の鍵を、ラウシャとミネルバに先に渡す。ここに居ないアイリスには、後で渡すつもりだ。2人には先に空間魔法代理使用権と言う画面を見せてステータス画面から操作出来る事を教える。

空間魔法持ちが許可した事で、鍵は魔道具になり失くしたり、盗られても戻ってくると教える。


一通りの部屋の使い方と、注意事項を伝える。

壁を棚にしているが、変更可能なので必要なら変更すると伝える。


必要な使い方の説明を終えると、背伸びして棚にいる生き餌が気になるのかアーイムが見えないと不満そうだ。


ミネルバが見えやすいようにアーイムを抱えると、物珍しいのか大人しくみている。

ミリヤ、ナミヤの双子はナナカを相手に部屋で、即席のままごとをやろうと誘っている。


「本当に、驚きだわ。これ維持にかなりの魔力取られるんじゃないの?」


ラウシャがあちこち確認しながらレアに聞いてくる。


「部屋と鍵を作った時は、かなり減りました」


一度作り上げるこの空間は、かなりの魔力を取られたが、出来上がってしまえば維持にかかる魔力はそう多くなかった。

部屋として完成しているなら、魔力を多く必要としないようだった。

ただ、拡張したりすると多くの魔力をまた使う事になりそうだ。


「私たちの前だったから良いけど、気をつけないとまた危険に巻き込まれるわよ」


忠告には、頷いて気をつけるとレアは持っていた素材の木を風魔法を使って、大人が余裕に座れるくらいの幅に切る。


「それどうするんだ?」


「クーが今作ってる、遊具に使うんだよ」


クーとは念話で会話を続けていたので、使わない方はそのまま1番の部屋に戻し、使う方をクーが作業している木の根元に置いた。


「このドアは、鍵を持つ人ならどこでも使えると思いますが、違和感あったり気づいた事あれば教えて下さい」


まだ色々と、検証中だと話す。


「分かったわ。私はしばらくここのお店開店の準備と、レアちゃんのレベル上げをすぐ出来るかわからないから、決まってる予定が分かるなら早めにに知らせて」


ミネルバとアイリスは、ラウシャの店の手伝いをしつつ、子どもの世話をする事になる。


「そうですね。こっちは商業ギルドと冒険者ギルドに行く予定と、採取会の参加、生き餌管理に販売と、孤児院へ行く予定など分かっている予定を暦に書き込みするので確認出来るようしておきます」


明日は商業ギルドへ行き、鑑定を待っている人がどうなっているのか、確認するのと持ち込んだ麻袋の中身のアイテムに何があるか確かめる為だ。

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