第35話 戻ってきた日常 1

かなり色々と話し込んだが、魔蟲の生き餌管理だけは欠かさず、新しい代わりになる者が見つかるまではレアがすることになった。


「レア嬢ちゃん。3日後午前中に、商業ギルドにきてくれ。預かったこれは、その時に渡せるようにするのと、以前言った鑑定して欲しい者が居る」


カウルじいさんからそう言われて、レアは頷く。

出していた穀物袋は、カウルじいさんのアイテムポーチの中だ。

中身の小麦は、半分商業ギルドで買い取って貰うことにして、半分は孤児院に配達を頼む。

中に入っているダンジョンの魔石や、装身具に魔道具などあるなら今回の協力してくれた冒険者に報酬にするつもりだ。

欲しい物がなく余りがあるなら、商業ギルドで後ほど売り払うかもしれないと言っておく。

ついで心配かけたお詫びに、丸蜜を渡す。

カウルじいさんは、かなり喜んでくれたようだ。


ララーザからは、しばらくアインス達と交流を深めレベル上げをするように言われ、ルシアス様は新しい金儲けで、働かせるらしい。

まぁ後で文句言われそうだけど、また別の金儲けになりそうな物を見つければ良いやと思う。


薬師ギルドのマナスルさんには、森で採集した薬草を渡した。

わざわざここまで来てくれたし、薬草の処理するのが面倒だし、薬師に渡した方が適材適所だろう。

珍しい薬草があったのか、かなり喜ばれた。


迎えに来てくれた冒険者達には、3日後に渡した紙を回収するからそれまでに記入して冒険者ギルドの受付に回収をお願いした。

依頼としたので、冒険者ギルドに銀貨1枚で請け負ってもらった。

報酬はその後ギルド受付から渡す事と、鑑定して欲しい場合の日時予約も決めておくように頼んだ。

大体、5日〜7日後くらいから報酬を渡せるだろう。

その時にまたギルドには、依頼料を渡すつもりだ。


町の治安を守る責任者から、後ほどまた領主から呼ばれるかもしれないと、伝言された。

そうなったら、付き添いはまたルシアス様になりそうだ。


面倒ではあるが、闇ギルドなんて言うおかしな犯罪者の集まりとは極力関わりたくない。

治安維持を、頑張って欲しい。


「決めた建物は、どっちですか?」


アインスに聞けば、商店街側で1階が店舗で馬車置き場がある方を選んだようだ。

後から来る者が、馬車利用で来るのと小さな中庭があったのが、決め手だったようだ。

温室と、地下の倉庫も色々利用出来そうとの事で、貴族街近くを選ばなかったのはエルフと知って近づいて来る者を警戒してらしい。

どんな所でも、エルフと知れば地位がある後ろ暗い連中は集まってくるらしい。


ただ姿隠しのエルフの魔法があり、種族を誤魔化せるからか、そうバレないとのことだった。


冒険者ギルド内は、そう言った誤魔化しが効かない魔法がかかっているから、普通にエルフが来たと知られた。


かなり昔に犯罪者が、ギルドで色々としたらしく、それから後ろ暗い者が誤魔化せないようした処置とのことだ。


冒険者ギルドは、基本誰でも登録出来るし偽名登録も可能だがリスク回避の為にやっているそうだ。


「今日の夜から、そっちに私も泊まれるようにお願いしていいですか?」


この後は、工房に戻り生き餌の確認をしておきたい。

今から工房に戻れば配達分があるなら、準備も出来る。


「分かった。ナナカ、護衛をするついでにソレの生態を確認しておけ」


テイムしたばかりの花蜘蛛と、念話しているナナカにアインスは告げる。


「分かった。んじゃ着いてくから、案内よろ」


まだギルドで用があるララーザにも声をかけてから、レアは工房までナナカを案内する。


「ゆっくり休まなくて良いのか?」


攫われ、森を逃げ回っていたのを気遣ってかナナカが聞いてくる。


「寝てるし大丈夫。床は硬かったけど、空間魔法のあの部屋で休めてたからね。運良かったよ。スキルマップも手に入れたし、逃げるにはそう心配してなかったからね。蜘蛛の護衛が早い段階で付いたからね」


「お前、見た目だけなら人族だけど、スキルや魔法覚えるの早いなら、能力は俺たちエルフ寄りかもな」


エルフは森歩きに必要な、スキルと魔法なら早く覚えるようだ。


いえ転生者だからです。

とは言わなかった。

なんだか転生者も、かなり問題になりそうと思ったからだ。


「これから一応勤め先の工房に行って蜘蛛の生き餌の管理してから色々準備して、配達あればやって孤児院付き合って。それ終わって時間あるなら必要な物買いながら、泊まる家に行こう」


大まかな予定を話し、蜘蛛の疑問があれば分かる範囲で教えるからと伝える。


工房が近くなるほど、レアに気づいた町民が声をかけてくる。

攫われたのがレアだと、かなり早い段階で知れ渡ったからか、ちょっと恥ずかしい。


「お前、かなり有名人だな」


「まぁ仕方ないね。しばらくは、こんな感じかもね。無事逃げ切って本当良かったよ」


工房に着くと、まず中に入り無事を伝えてから迷惑かけたお詫びと、丸蜜を渡す。

丸蜜は、ちょっとした贅沢品だからかなり喜ばれた。


工房のみんなの蜘蛛の様子を見てから、問題ないとナナカを温室に案内する。


「この小部屋みたいなのが、生き餌入れて管理してる。脱走しない作りにしてるけど、上のあの穴がこの蜘蛛部屋と繋がってるから、お腹空けば自由に捕食出来るようにしたんだよ」


生き餌小屋とは何だと、聞かれたからそう説明した。


「補充するから、空間魔法使う」


森歩きで採集した蟲を、亜空間の部屋から籠ごと取り出していく。

ついで温室内に、蜘蛛達を自由にさせる。


虫籠に入っているのが、全て同じ系統の跳蟲だからか理由を聞かれた。


「町に入れて、もし脱走しても危険が少ない種類だから」


蟲でも、毒持ちだったり雑食だったりと種類による危険性からこうしていると話す。

鑑定で、逃げても町中の人に害がない事、勝手に町中で増殖しないのを確認した蟲の種類がコレだったと話す。


「そっちは?」


蝶と蛾の特徴が混ざった羽蟲は?と聞かれた。


「これは花蜜の代用見つかったから、検証する用かな」


温室の花だど、蜜に含まれる魔力が薄く羽蟲の生存期間が短く生き餌に向かなかったのだが、蜜と魔水を混ぜた物が代用可能そうだと話す。

これが上手くいけば、花蜘蛛用の生き餌になると教えた。

蜘蛛の種類に寄って、好みがあり蟲ならなんでも捕食出来るが、稀に決まった蟲しか食べない個体がいるのだ。


「こっちは亜空間にしばらく入れて検証してから実用出来るか待ちだね。花蜘蛛に、念話で餌の好み聞いて把握した方が良いよ。とりあえず跳蟲も食べるけど、個体による好みの差があるから普段から生き餌無理なら死骸になるけど、アイテムポーチに用意して置けば、森に入れない時用に使えるしね」


生き餌として、1番害がないのが羽蟲系なのだが、安定供給に向かないから生き餌は跳蟲が多いと話す。


「普通、こんなことやりたがるか?」


「最初のきっかけが、暇だったからかな。ここで雇われてるけど、針子の仕事出来ないのに何故か絵が描けたからそれ繋がりで雇われて、職人のテイムした蜘蛛の管理手伝って生き餌しか食べてくれなくなった蜘蛛がいるから餌探しして、

ってやってたら生き餌が蜘蛛レベル上げるのに有効ってわかったから進めてるんだよ」


ルシアス様の気まぐれがなければ、孤児のレアは冒険者をしていたかもしれない。


「蜘蛛レベル?」


「うん。その子のレベル鑑定で見たけど27だね。この町の職人や町民がテイムした蜘蛛ってレベルが上がりにくいんだよ。安全な町中で生活してるから、冒険者みたいに森やダンジョンに行かないから、レベル10もない蜘蛛が多いかな」


餌にしても、死骸を冒険者に依頼して集めて貰うからか、森にいる蜘蛛が生きた蟲を捕食してレベル上げるのに、町中だとレベルが上がらない弊害になると話す。


「レベル10あれば、マスターと念話出来るんだけど、長く町中にいる蜘蛛も平和ボケ?自分で捕食しなくても餌が手に入るしね。死骸だけど」


「なんか、かなり特殊な蜘蛛なのか?」


「どうだろう?大本と契約してるって聞いたことあるかなぁ。詳しく聞きたいなら、ギルドで聞けば良いよ。ここだけは、森の中に居る蜘蛛って襲ってこないからこっちから襲うの禁止だし、先に注意事項知ってから森で狩りした方が無難だね。後、その子魔法使えるから。花蜘蛛は、1種類の属性魔法使えるんだよね」


どんな魔法かは、テイムしないと分からない。

レアは、念話で聞いて見ればと話す。

ひと通りに蟲を追加したり、魔水の入れ替えに配達する蟲を籠に移したりと、準備する。


「なんか、じわっとする魔法?なんだそれ?」


念話で聞いたのだが、蜘蛛が言うじわっの表現の意味が分からない。


「治癒魔法だね。治癒って言葉が出てこなかったみたいかな。たくさん話しかけて言葉教えれば、もっと分かりやすく話すと思うよ」


クーだと、念話出来る前からレアはよく話しかけていたからか、普通に会話するのに困らない。


「しっかし、蜘蛛って不気味って思ってたけど、怒るなって。意思疎通できると、可愛いって思うもんだな」


不気味と言われて蜘蛛も、怒ったようだ。


「さて配達準備できたから、配達行くよ」


亜空間から出ていた蜘蛛を入れ、虫籠7つを収め、2つだけ手に持つ。


「こっちは近所に配達だから、護衛よろしく」


生き物はアイテムポーチやアイテムボックスに入らないからか、空間魔法が使えるようになって楽になったなぁと思うレアだ。

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