第32話 町中では
誘拐した男達がどこから馬車を出したのか、冒険者達の捜査で見つかった。
町中の巡回兵と協力も取れた事で、スムーズに進んだのだ。
穀物を扱う商家で、主人からその家族に従業員まで闇魔法の傀儡をかけられており、自分たちが犯罪に加担していた事実をまったく分かっていない状態だった。
傀儡をかけられて居なかったのは、12と3歳になる兄弟で、こっちは兄の方が蜘蛛をテイムしていた。
かなり前から周りの大人の様子がおかしいと、分かっていたが蜘蛛から止められていたらしい。
どうやらテイムしている蜘蛛が、代替わりテイムされた蜘蛛で、マスターを親から子に変更した事で念話が子供とだけ可能だったようだ。
子供が変だと大人に伝えても、肝心の大人は傀儡状態で、誰かに相談したかったが蜘蛛から警告されていたらしい。
見張っている者がいて、不用意に話すなと何も知らない状態でいるように言われていた。
「考えていたよりも、深刻かもしれねぇな」
捜査にあたった冒険者が、割符を見つけ出す。
ドクロを模した絵が描かれた物で、ある闇ギルドが好んで使う物だった。
冒険者を長く続けていると、犯罪者や闇ギルドの情報はそれなりに手に入るし、詳しくもなる。
闇魔法の傀儡を解除するのは、教会の協力がいる。
「こりゃあ、闇ギルドが関わってんな」
店の地下倉庫には、まだ詰め込んでいない魔石が箱にかなりの数入っている。
ダンジョンから真っ当に手に入れた物でも、その後の扱いはダンジョンを管理している町に準ずる。
面倒だが、町の兵も加わり捜査が進んでいく。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ふざけんな!」
部屋の中の物を、アイテムポーチに入れながら、女はこの町から早めに出なければと苛立ちながら思う。
きらびやかなドレスや、宝飾品が無造作に積み上げられている。
せっかくの拠点が、台無しになってしまった。
こうなったきっかけは、商業ギルドのライナが捕まってからだ。
そこから、ケチがついた。
そして今回の誘拐の失敗。
当初、かなり使える鑑定スキル持ちとレアの噂が出回りだした。
稀有なスキル持ちは希少だ。
奴隷にすれば高値で売れる。
日頃から、町の情報を手に入るようにしていた。
「しばらく様子見で、手を出すなって言ったのに!」
部下の男が、自分に報告もせず小遣い稼ぎで先走ったのが原因だろう。
誘拐し、高値で売れるかもと欲を出したのが躓きだったのか、蜘蛛をテイムしていた者だったのが悪かったのかは分からない。
この町のテイムされている蜘蛛は、とにかく異常だ。
他の地域の蜘蛛は、普通に魔物だが蜘蛛の森に生息する蜘蛛が普通ではない。
仲間がテイムしようと強制テイムをかけたが、ことごとく弾かれ断念した。
闇ギルドのテイム出来る者で何度か試したが、資格なしの強制排除で弾かれ、魔法で燃え尽きて死んだ。
そこから、蜘蛛には手を出さないようにしていた。
ごく稀に、手を出していけない魔物は存在する。
人の思惑から外れた存在だ。
ダンジョンがあるから、ここに来たが変わった蜘蛛なら、蜘蛛を使って金儲けに利用出来るかと考えたが、それどころかテイムで殺しにくるなんて話しは聞いたこともない。
通常のテイムの失敗は、対象の逃走で終わる。
余程、気が荒い魔物でなければ滅多な事で死ぬこともないのだ。
「まあいい。私の存在まで知られてはいない」
不満は多く、まだまだこの町で稼ぎたかったが仕方ない。
捕まった男達は、聞けば森で蟲に寄生されまくり、もはや肉人形にしか過ぎない状態だと、連れ込み宿を訪れた冒険者を通して話が回っていた。
「あいつらは、自業自得さね」
悪態つきながら、部屋の物を仕舞うエルディアはしばらくこの町での稼ぎは、おあずけだと決める。
蜘蛛の森と言う特殊な森に、ダンジョンが発生し、そこからの利益で闇ギルド『黄昏の影』は密かに活動資金を順調に増やしていた。
ダンジョンからの利益は大きく、潤沢だったがどんな組織でも、下にいる者が勝手に動くと崩壊を招く事がある。
黄昏の影は、各国の大きな町や都市に拠点を構える闇ギルドで、誘拐、暗殺、強盗、人身売買、売春と広く活動している。
この町で、エルディアの役割は売春宿を利用しての情報集めと、あらゆる仲介だった。
今の時点で、自分まで到達してないと分かっているが、千里眼と言うちょっと未来を見るスキルを持っているエルディアは、 今は引き時と分かってしまった。
ここで欲をかくと、自分が捕まる未来が見えてしまった。
引き際を間違えると、組織にまで飛び火する可能性があり、自分が組織から命を狙われる事だってあるのだ。
「あいつらの、商家を隠れ蓑にして町を出るか」
使える商家だったが、馬車の出所はもう知られている可能性が高い。
闇魔法を使い協力させていたが、切り捨てるだけだ。
最低限の情報収集をする為に、しばらく別の場所へ行くとこの売春宿に残す部下に告げるエルディアだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます