第31話 確認

町の者達の思惑はともかく、レアは森から抜け出そうとマップを頼りに進んでいるのだが、貴重な薬草、素材、蟲を発見しては足が止まるので進みは遅い。


ジャングル状態の森の中は、周囲だけでなく樹上からの襲撃の危険があるのだが、何故か中立地帯にいた蜘蛛の数匹が、レアにくっ付いて護衛してくれるかのように動いている。


この蜘蛛達は、レアがテイムした訳でもない。

クーに言わせると、自分のマスターが欲しい蜘蛛達らしい。

レアに着いてけば、大丈夫とクーの助言で自主的に護衛している。


そうクーは、念話を習得した。

レアが寝ていた時に、中立地帯の蜘蛛に護衛を任せ、その間に獲物を倒してレベルを上げたようだった。

町中ではあり得ない程の短期で、魔物を倒した事で、レベルは既に11となっていた。


小さな魔蟲よりも、大きな魔物の方が得られる経験値が高かったのが原因だ。

こんなに簡単なら、町中の職人や平民も森にレベル上げに行けば良いのにと思うが、忌避感が強い者には無理なやり方だ。


「ちょっと休ませて」


立ち止まったレアは、何もない筈の空間に分かりやすいドアを出現させる。

これも、この逃亡中に得たスキルで任意で特殊な空間を出現させて、中に入り休める安全な場所を確保出来るようになった。


中に入り、ドアを閉めると外から全く認識されなくなるので、危険な大型の魔物をマップで発見やり過ごすを何度か繰り返した。

なので冒険者レベルは上がらないが、魔力を使い続けているお陰か、魔力の上がりだけは早い。



そんな事をしていたせいか、絶妙なタイミングだったのか、レアを探す冒険者達と全くかち会わなかった。


「やっぱり、何度も入ったけど不思議空間だ」


初期の広さが6畳ほどで、空間魔法の熟練度が上がる程自由に拡張可能になり、部屋も増やせるようになる。

ここを使えば使うほど、この中で色々と出来ることが増えるのだ。

使い始めたばかりのレアでは、まだまだ知らない機能があるが、使いこなすには時間がかかりそうだった。


休む都度、自分のスキルを確認していけば、転生者と言う者がどれだけチート(狡い存在)か分かる。


「状態異常耐性のスキルが、増えちゃってるよ」


こんなにどんどんスキルが簡単に増えては、はじから隠さないとまずい。

ステータスを鑑定で確認出来るが、スキルと魔法の隠蔽しておかないと自分が鑑定された場合、相手に見えてしまう。

碌な経験のない、自分が沢山のスキル持ちと知られるのは、なるべく隠した方が良い。


「スキルはこれで良いとして、クー魔水出しとくから、飲んでおいて」


『ワカッタ』


仲間の蜘蛛達にも、魔水を出してやる。

蜘蛛も、スキルや魔法を使えばそれなりに魔力が減るのだ。

空腹で、蟲の捕食は体力は戻るが減った魔力はしっかり寝ないと回復が遅い。

魔水を飲めば、多少早く回復するようで休憩の都度、蜘蛛達に僅かでも良いから飲ませるようにしている。


「虫除け半日分が残り2個と、軟膏タイプの虫除け1個、お香のやつは衣類に燻す用かなぁ?余裕持って使い切る前に町に着かないとまずいか」


『ソレ、クサイ。キライ』


レベルが上がって虫除けに耐性はついたが、この匂いは蜘蛛には不評だ。


「これ使わないと、私が死んじゃうよ。クーは私が居なくなったらどうするの?」


『イヤ。マスターイッショ』


「だね。森の中でしか使わないからね」


しぶしぶ納得は、してはくれたようだ。

片言のクーとの念話は楽しい。


「ちょっと寄り道しすぎたね」


この空間の隅を見る。

蜘蛛達が倒した魔物に、レアが採取した薬草など使えそうな素材が置かれている。

それに、生きたままの魔蟲も籠に入っている。

アイテムポーチやアイテムボックスに生物を入れられないのに対し、この空間は生物も大丈夫なのだ。


「丸蜜が手に入ったのが、嬉しい誤算かな」


丸蜜とは、ボール状に固められた蜜で、森に棲む蜜を貯める蜂の魔蟲から採取可能だったりする。そんな丸蜜を10個も貰った。


代価は、蜂の治療と巣を樹々で覆って分かりにくくする手伝いをした。

手助けになったのかは、レアには分からないが、蜂と共生している花蜘蛛とクーが会話してレアに伝えた事をしただけだ。


蜂の魔蟲も魔法も使えるようで、森に入った冒険者がなかなか見つけられないのは、彼らが魔法を使っていたことと、花蜘蛛と共生していると、冒険者がテイムしている蜘蛛を通して見つからないよう誘導までしていたらしい。


共生と聞いて驚いた。

蜂の魔蟲が花蜘蛛と共生関係が可能で、蜜に寄ってくる他の魔物から身を守って貰う代わりに丸蜜を花蜘蛛に提供していた。

これを知ったのは、クーと会話可能になったからだ。


養蜂出来ないかとも考えたが、町の拡張した温室内の花だけでは、蜂に必要な魔力が足りないらしく、連れては帰れるが蜜の出来は悪くなるとのことだった。


「丸蜜欲しければ、また来ればいいしね」


転移魔法で、またこれるよう印はした。

印付けで分かったが、使い慣れて行く内に印を付けておく場所を増やせるようになるようだ。

今は3箇所しか登録出来ない。

ただどれだけの距離を転移出来るかは、実験しないと分からない。


レアがここに落ち着くまでに覚えたスキルや、魔法を確認すれば、新しく追加されたスキルと魔法があり得ない数増えていた。


ジャンプ

転移

暗視

隠密

治癒魔法

経験値倍増

マップ

空間魔法

魔力回復

状態異常耐性


鑑定で見える自分のステータスの、新しく出たマップと空間魔法を隠蔽しないでおくことにする。

これも本来隠したいのだが、森でろくな装備もないのに、無事だった理由を聞かれた時に納得してもらえる理由が、これくらいしか思いつかないからだ。

既に持っていた風魔法は、強化されたのか新しい魔法が使えるようだ。


「まぁ、明日には町に戻れそうだね」


マップ確認する限りで、敵対する魔物や魔蟲の表示はない。

かなりの数の黄の点表示がずっと出て、きりがないとマップ表示の設定を変更したせいか、小さな魔蟲はマップに表示しなくなった。

寄って来る魔蟲は、蜘蛛たちが対処してくれるせいもあり、表示に出ないようにした。

その内生き餌採取に活用出来そうと、思っている。


自分のステータスはこんなもんかと、次に所持品の確認をする。


「そう言えば麻袋いくつかあったっけ」


脱出の邪魔と、アイテムボックスに入れた麻袋を確認すれば、18袋も入れていた。


「麦みたいだけど、表示変だな」


試しに1袋出して見れば、自分の背丈ほどの長さで、見た目だけならパンパンに麦が入っているようにしか見えない。

アイテムボックスには、入れたいと思えば重量関係なく、簡単に入れられたからだろう。

逃げるのが必死で、麻袋の状態まで分からなかった。


このまま開けると、麦が溢れると入れられる物はあるかと探せば、屋台で購入した果物を入れるのに使っていた木箱を取り出す。

縛っている紐をほどき、箱に中身を移して見れば装身具がゴロゴロと出てくる。

木箱が麦でいっぱいになったが、麻袋にはまだ半分以上入っている。

どれだけの装身具が入っているか分からないが、かなりの量がありそうだ。


「誘拐だけでなく、密輸もしてたのかな?」


鑑定してみれば、いくつかはスキル付きの装身具もあった。

この場合、誰に所有権があるのか不明だ。

ダンジョンの中で発見した物は、基本手に入れた者が所有者だが、ギルドを通さないと駄目だったはずだ。


まだアイテムボックスに入れている麻袋も、こうだとしたらどれだけの物があるか分からない。


レアは知らなかったが、犯罪者の所持品は手に入れた者が所有可能だったりする。

馬車に残っていた馬車を含め龍馬に麻袋の中身は、発見した冒険者で頭割して分配されることになっていた。


当然レアが持っている麻袋も、所有者はレアになる。

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