第28話 苗床
今回発覚が早かったおかげか、疑惑のある荷馬車の発見は2時間ほど離れた場所で止まっているのを、先行した冒険者達が見つけ出した事だった。
荷馬車に人はおらず、繋がれていた龍馬も魔物に襲われてはいなかった。
龍馬を襲うような魔物は、そう居ないだろうから、ここにいない持ち主はどこかへ移動したのだろうか?
「荷台を見たが、確かに誰かを積んでいたようだ」
不自然な荷物の積み上げ方と、人を隠せる不自然な空間に、切り裂かれた布。
「運良く逃げ出したが、見つかり追っかけられているってとこか?」
斥候の冒険者が、索敵スキルで、魔物が集まっている場所があると、告げる。
ただ、この道の横の森は、夜に入るのはかなり危険が伴う。
レアのように、暗視スキルや索敵スキルにマップスキルを持っていればまだ対処が出来たが、ここに集まった冒険者達は、索敵スキルしか所持してなかった。
「念の為、虫除けは持ってるな?」
魔物が集まる場所だけでも、確認してダメなら明るくなってから探すしかない。
待機する者、馬車発見を知らせに町に戻る者と、馬車の側に借りた簡易結界を張りここを仮拠点にする。
簡易結界は、魔物避けでこれ1つ金貨250枚もする魔道具で、Cランクの魔物の魔石を利用している。魔道具の魔石を換えさえすれば、壊れない限り一生使える便利な物で、冒険者であれば必ず手に入れたい物の1つだった。
「とりあえず索敵出来る奴と、隠蔽使える奴で確認してくるしかないな」
魔物が集まった場所に、攫われたと思わしいレアと言う娘が居るかの確認だけでもしておきたい。
無事保護できるなら、かなりの報酬が期待出来るし、誘拐犯の死体1人につき金貨1枚も貰えるのだ。
こんな条件の良い稼ぎは、そうない。
「ちょっくら行ってくる」
代表に、3人の冒険者が行くことになった。
1人は蜘蛛をテイムしている者で、森の中は蜘蛛を連れている方が有利と考えてのことらしい。
「反応はどうなってる?」
「魔物が居ると、分かるが動きがない。最悪既に寄生されてる可能性も高い」
この森、生き物に寄生してくる魔蟲が奥へ行くほど増えるのだ。
レベルが低い冒険者は、森の奥へ行くことが少ないせいか、自分から積極的に森の情報を手に入れないと最悪、魔蟲に寄生される。
ただ必ず虫除けを身に付けていれば、寄生されることは絶対にないので、虫除けさえ所持していれば危険はかなり減る。
暗い中魔蟲が寄ってこないと言う、魔光ランプを手にして奥へ進む。
魔蟲は寄ってはこないが、普通の魔物は光で寄ってくることもあるので、索敵する冒険者の指示に従って何度かの短時間使用で魔物が集まっていると言う場所に向かった。
「ウゲッひでぇな」
着いた場所には、魔蟲に集られている人らしき物の塊が4つ転がっている。
全員体格が良く、レアと言う娘を攫ったと思われる男達だろう。
生きてはいるが、こうなると最早生き地獄で死んでいたほうがマシだ。
「どうやらレアと言う娘は、無事逃げているな」
こんな状態の男達を、触るのも嫌なので、周囲に虫除け香を焚き一旦、簡易結界を設置した場所に戻り、明るくなってからまたここに来ることを決め引き上げる。
「あんな状態になるなんて、最悪だぜ」
胸糞悪いと、簡易結界内で一息ついて差し出された眠気覚ましの茶を受け取る。
「生きてるが、死んでいた方がマシだろうよ。虫除け香焚いてきたから、明るくなってから確認出来ると思うが最悪だ」
男達の末路は最悪だが、自業自得だ。
レアと言う娘は、普段から蟲に造詣深いらしいから、森の中で無事だとは思うがかなり遠くまで逃げているだろう。
「無理に探しに入るより、町に近い場所で待っている方が良いかもしれない」
蜘蛛をテイムしているとのことだし、男達を発見して以降、騒いでいた蜘蛛は落ち着きを取り戻している。
多分だが、蜘蛛同士で念話の様な意思伝達がされているのだろう。
「この荷馬車は、町のどこからかは調べたのか?」
案内されて来た、冒険者ギルドのサブマスが荷馬車を叩きながら聞く。
「そっちは、町の連中が調べているかと」
荷台に乗っていた袋に入った荷物を開ければ、大量の魔石と、宝石が麦に混じって入れられている。
多分、ダンジョンから手に入れた物をギルドを通さないで横流ししようとしたのだろう。
「ひとまず、明るくなり次第容疑者の回収してくれ」
話で聞く限り、蟲の苗床にされているだろうが、鑑定で名前くらいなら調べられるだろう。
「ウゲッ。あれ絶対に触りたくねえぞ運ぶなら、布袋用意して、担架人数分ないとぜってー無理!」
魔光ランプで、見た皮膚の下を動く蟲、集って鼻や口からも入り込んでいたあの状態は、思い出しただけでも鳥肌ものだ。
「そうか。担架と布袋の用意を、させておこう。薬師ギルドの連中が、後ほど来る筈だ」
他に必要な物があったか考えたが、薬師ギルドの連中の指示に従うように告げる。
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