第27話 捜索

薄っすらと明るくなって来た頃に、レアは目が覚め起き上がる。

下にマントを敷いて横になったおかげか、思ったよりも眠れたようだ。

身に付けた虫除けの効果もあり、確認した限りで虫刺されもなかった。

少し身体が痛むが、慣れない場所で寝たせいだろう。


スキルマップも、見た限り赤い点の表示はない。

黄の点が中立地帯のここを囲むように、動き出しているのと、緑の点これは蜘蛛達だろう。

朝の食事なのか、黄の点の箇所に移動して食事のようだ。

少し離れた場所に、クーが見張ってくれていたようだ。

レアが虫除けを身に付けているせいか、呼ばれない間は離れていたらしい。


「クー、大丈夫だからご飯してきて良いよ」


常にマップの表示を確認していれば、今のところは大丈夫だろう。

レアも、買い置きしていた肉の焼き串を取り出す。ついでにフルーツジュースも出して、簡単な朝食を済ませてしまう。

食事バランスは悪いが、食べれる物なら食べれる時に食べておく方が良い。

無事スレバの町に帰れたら、今以上に屋台の買い置きや不意に今回のような事で使えそうな物をアイテムボックスに入れておこうと決意する。



レアなりになんとか頑張っている頃、町ではちょっとした騒ぎになっていた。


時間をレアが攫われたより少し後になるのだが、町に居るテイムされた蜘蛛達が騒ぎ出したのだ。


念話不可能なレベルの低い蜘蛛から、町にいるほぼ全ての蜘蛛が騒ぎ出すと言う今までにない規模で、蜘蛛が行きたい所があるのか落ち着きなく動き回るので、念話持ちの蜘蛛のマスター達が集まった。


念話が出来る蜘蛛に、マスターが聞けばサラワレタとそれしか言わないのだ。

蜘蛛からすれば、仲間の蜘蛛とそのマスターが攫われたらしいと言いたいのだが、幼児並の知能しかないので、サラワレタを繰り返すばかりだ。


「テイマーの誰かが、攫われたって言ってるのは分かるが、こうも蜘蛛が騒ぐのはおかしくないか?」


まず早く動いたのが、冒険者ギルドだった。

日頃から人攫いや、魔物に誘拐された者の捜索を依頼でこなす事が多いせいか動きが早かった。


「各ギルドに、緊急連絡と蜘蛛持ちの確認又は蜘蛛が騒ぐ価値のある者?」


そんな者が居るのか?

1番町で価値がある者は、領主夫人を筆頭としたその血族だ。

森の蜘蛛との契約の一族なので、真っ先に確認された。

領主婦人と、数名の女子が王都に居る為町には不在。

王都に居る者達は、この際省いても良いだろうと、契約の一族を真っ先に確認していけば該当者となる者は居なかった。


「レアだ。レアを探せ!」


かなり遠縁になるが、ルシアスも契約の一族の一員ではあった。

話が来て直ぐ様、自分の工房の蜘蛛持ちの確認をすれば商業ギルドからまだ戻っていないと聞かされる。


「レアなら、誘拐されるだけの価値はある」


まず高位の鑑定スキル持ちと言う事、これは確認中ではあったが、確実だと断言する。

あと新色の染料の発見、莫大な金がいずれレアが手にする筈だ。


テイムしている町の住人の蜘蛛レベルを上げる為の試みをしていた事。

これは、僅かではあるが効果が出だしていた。

これらを踏まえて、誘拐されるだけの理由があると、ルシアスがハッキリ告げる。


「そんな価値ある者なら、護衛を付けなかったのか?」


そう思われるのは、仕方ない。


「護衛予定の冒険者は、現在この町に来る途中だった」


「間の悪い。各門に出入りの確認をしたが、1番可能性が高いのが、馬車移動の連中だろう」


冒険者ギルドのサブマスターのガーナンを筆頭に、話し合いが行われている。この場に、ギルマスが居ないのは、別件不在だからだ。


「さて攫われた娘の、雇い主ならどうする?」


本来、町中の平民の娘が1人消えたくらいで、これだけの数の人は動かない。


「該当すると思われる馬車又は荷馬車だが、これは直ぐ見当がついた」


馬車なら、人1人隠して移動が可能だ。


テイムされた蜘蛛達が、同じ方向に行きたがることで、冒険者が持つ蜘蛛で確認すれば少し前に出て行った荷馬車だろう。


隣国へ続く森を迂回するその道は、余程急ぎでもない限り、夜に門から出るのは無謀だ。


基本、門を守る者は外から入って来る者には厳しく警戒するが、出て行く者には簡単なチェックしかしない。


「なら依頼は可能か?攫った者の発見又は、死体でも構わない。見つけだした者1人につき金貨1枚出す。捕まえた者なら1人につき金貨10枚だ。これは攫った者が生きていればだ。捜索に協力した者、1日銀貨50枚これは森の中の捜索の場合だ。レア本人が、無事なら高位鑑定を無料でさせるなり、レアと交渉して高額支払も応じさせる」


今回の出費は、半年の時間があれば元を取るだけの稼ぎを、既に約束されているのだ。

多少の金が減ろうが、無事戻ってくるなら更なる稼ぎをレアなら出すだろう。


「あの馬鹿者、まだまだ隠している稼ぎのネタがあるようだしな」


ルシアスを筆頭に、職人仲間やレアにお世話になった者達が直ぐ様行動する。

冒険者達は、臨時のチームを組み蜘蛛をテイムしている者が必ず1人はチーム内につける。


何故なら蜘蛛の動きで、探しやすいと考えての事だ。


「領主様の兵は、出てこないのか?」


町の住人が攫われたのなら、捜索に協力くらいして欲しかったのだが、入り婿で武骨な戦人気質の領主は、領主夫人と違って戦う実力はあるが、この町の特殊な事情には疎い。

町の事は領主夫人が取り仕切っているが、タイミングが悪すぎた。


「兵まで出したら、レアの価値が更に外にばれやすくなる」


成人しているとは言え、親なしの孤児だ。

金儲けになると、自分達より高位貴族の目に止まったらどうなるかも分からない。


ただこの騒ぎだ。遠からずレアの事は、町の貴族だけでなく皆が知る事になる。


レアに言って無かったが、緋色のあの染料で織った布を使ったドレスを、王都の王妃に献上する予定だからだ。


せめてそのことが知られるまでは、隠し通したい。


こうも、レアの好きにさせていたのはルシアスが持つ、ユニークスキル天啓によるところが大きい。


このスキル、ルシアスが使おうとして使えるスキルではなく、普段の何気ない行動の中でインスピレーションがおきるので、本能的に動いた方が有利になると今までの経験から、レアに関して好きにさせていた。


それが今回裏目に出てしまったが、天啓スキルからの警告はないせいか、レアに関してはそれほど心配をしていない。




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