第19話 準備 1
その後の領主邸で話した事は、魔力なしを探し出した後の鑑定をすることと、レアのステータスとレベルあげの確認が主だった。
教会のシスターが、魔族が関わっている懸案は解決出来るなら早めにすると決まっていると領主にも言っていたようで、レアから見ると魔族の話と言われても実感が湧かない。
魔力なしが、呪いだと言うならレアを通して鑑定をし、対処すると決まった為この場合のレアの意見はない。
特に、嫌な訳でもないのでレアは、言われれば鑑定するだけだ。
「早めにレベル上げは、した方が良いと言うが」
通常、レベルが低い冒険者がレベルを上げる方法が、森の中に居る蜘蛛を除いた魔獣や魔虫を相手して、大体レベル20まで上げる。
それだけあれば、ダンジョンがある場所までは楽に行けるようになる。
ダンジョンに行かず、森の更に奥へ行く場合は、レベル30以上ないと危険と言われている。
冒険者が、こぞってダンジョンへ向かうのが比較的低いレベルでもダンジョンまで行けてしまう事、浅い層でも稼げる素材が手に入る事があげられる。
「簡単に、レベル上げる方法なんてないですよね」
地味に、森に入って魔獣や魔虫を倒して行くしかないかと思う。
「あると言えばある。が、簡単に手に入るのは難しいな」
何でもレベル上げる実が、森やダンジョンで発見される事があって、その実を食べるだけでランダムで数レベルほど上がってしまうらしい。
レベルを上げたい貴族の子息などが、危険をおかさずレベル上げ出来ると、人気のアイテムらしい。値段も金貨1枚とは言われているが、オークションに出せばかなりの高額になる為、見つけた冒険者が自分で食べるより、オークションに回されてしまい一般で買うのは、ほぼ無理だろうと言う。
「となると、レベルの高い冒険者に頼むか」
「それなら、両親の知り合いの冒険者の人達がダンジョンあるなら越してきたいと手紙きてました」
子育てで、なるべく安全でそれでいて稼げる立地にある場所に、子供が大きくなるまで過ごしたいと手紙に書かれていた。
「なら連絡してみてくれ。住む所なら、こちらで用意する。しかしまぁ次から次へと、何かしらやらかしてくれるな」
魔力なしの話は、ルシアスでも初耳だった。
確かに、たまに魔力が無くなってしまう者が居ると、話では聞いたことがあった。
身近にそんな者を、まったく見たこともなかったので、排斥される対象と言われても困惑しかない。
レアが鑑定した者が、たまたま魔族が原因と鑑定出来たのは分かる。
「お前の鑑定は、どうなっているんだ?」
「知りません。鑑定出来た結果を言っただけです」
聞かれたって、レアも分からないのだから仕方ない。
「今はまだ知名度が低いから良いが、知られて行くほど身の危険もある。武人な領主様は、最低限しか上位鑑定の重要性を分かっていない。鑑定しただけで、普通治療方法から知りもしない人物名まで分かるはずがないんだ」
流石に転生者だからと、レアは思ったが言わないことにする。
何でもかんでも転生者で済んでしまうのは、過去の転生者の偉業などが巷に出回っているからだった。
「鑑定は、頼まれない限り言わないようにします」
ただ自分が知りたいことでは、鑑定しまくるだろうなと思うレアだ。
「そうしてくれ。稀に鑑定されることに気付く者も居るようだから、人物を鑑定する場合は特に注意しろ」
鑑定はアイテムなら商業ギルドで、人物なら冒険者ギルドで契約して置けば、ちょっとした金稼ぎになるそうだ。
「なんだか、どんどん職人見習いとかけ離れて行きますね。絵が描きたいだけなのになぁ」
「そう言うなお前でも一応、職人見習いみたいなもんだぞ」
レアが描き直した絵を元に、貴族令嬢向けのドレスの作製、販売を始めていることを告げる。
「あれは、あくまで元絵の人の好みから描いただけなので、なんか違う」
違うが、とりあえず職人っぽいことをしていると思うしかないのか。
「ここで降りても、良いですか?」
ここからなら馬車から降りて、少し歩くが孤児院まで行ける。
「生き餌のことだな。直ぐではないが、必要数が増えると考えておいた方が良い」
「分かりました。しばらくは現在購入している人以外は、増やさないようにして欲しいです。それと孤児院の後に、冒険者ギルドに行き手紙を出して早めに来てもらうようにします」
生き餌は、ルシアスの紹介から始まり、購入した者を通じて少しずつ増えていた。
主に近所の工房主が多いが、取り引きがある工房にも僅かだが回している。
「わかった。今後は、ララーザとも話しておくまた頼む絵は、予定を決め頻繁にならないようにする」
領主まで、関わりだしているのだ。レベル上げしろと言うなら早い方が良い。
レアは馬車から降りると、孤児院へ向かう。
シスターの了解が取れ次第、採取会に孤児院の子を連れて行こうと考えていた。
年齢制限はあっても、領主や教会に商業ギルドを巻き込むつもりなので、なんとかなると思っている。
「ゲームなら、パワーレべリングで簡単にレベル上げ出来るのになぁ」
ままらないものだと、思う。
自分のレベル上げは、冒険者が来てからとして、シスターにお願いするのが先だろう。
「こっちの教会も、神像あったかな」
孤児院に行くに遠回りになるが、祈りの間経由して孤児院に行くことにした。
東の教会は、商人が多かったこともあり派手さがあったが、西の教会のこの辺は庶民が多く訪れるのか、シンプルな作りだ。
転生神らしい子供の、神像を探すが西の教会にはないようだ。教会毎に微妙に置かれている神像の違いは、どう決めているのかレアには分からないが、お供えはまた東の教会まで行かないとダメそうだ。
「とりあえず、シスターの許可出たら、働くとこ決めていない子から誘うか」
孤児院に顔を出すと、レアお姉ちゃんと孤児達が集まってくる。
領主邸でも、ずっと大人しくしていたクーはレアの頭上に慌てて避難していた。
「どうしましたレア?」
子供達に読み書きを教えていたシスターが、若手のシスターと交代する。
「すみません。シスター、孤児院の孤児達に、テイムされた蜘蛛用の生き餌管理お願いしたいのですが、許可は可能でしょうか?」
孤児院にも、温室の設置はされている。
ここは、主に孤児用の野菜と薬草を育てて活用されている。
「領主様が、シスターが許可するなら問題ないと言われたので、蜘蛛が苦手でない子なら、孤児院に居る間のお金稼ぎになると思います」
どんな生き餌で、どう管理してどんな蟲を生き餌とするかを描いておいた蟲の絵を見せて説明する。
蟲の飼育から、かかるリスクに売る金額までとレアが現在している事も全て説明した。
「危険はないのですね?」
「今、私が扱っている跳虫を中心にするつもりなので、危険はない筈です」
生き餌の虫は、必ず鑑定してから町に入れていた。
生き餌の跳虫の習性も、ちゃんと考えてのことだ。
「しばらくは希望する子を、私が行く採取会に同行させるので、捕まえた蟲で危険なことにならないと思います」
「そうですね。やりたいと言う子が、いるなら許可します」
孤児が出来る仕事が、孤児院に回ってくると言っても限りある。レアのように、変わった才能を持つ子供はそういないのだ。
「ありがとうございます。シスター温室の中に、蟲の管理小屋を早めに作るよう大工さんに頼んでおきます」
必要の金は、言い出したレアが全て用意するつもりでいる。
工房に作ってもらった物と、同等の物も用意するつもりだ。
そんなに、金稼ぎしてどうすると今まで言われ、貯めた分のお金で、生き餌管理小屋を作るに十分な額は貯まっている。
亡き両親の遺産は、なるべく手付かずで残し似顔絵描きをして貯めた分だ。
シスターの許可も得たし、温室のどの辺に設置するかの確認もした。冒険者ギルドに向かう途中に大工の工房もある。
「採取会に、子供達連れて行く許可も得ないとか」
「レア姉ちゃん。唸ってると、チビ達が怖がるぞ」
声を掛けて来たのは、10歳の男の子ラトだ。
この子も、両親はモンスターに襲われて亡くなりこの孤児院に来た。
「ラト、シスターの許可得たから生き餌採取したいって子いる?お金稼げるよ。」
ラトは年長組の何人か呼び、蟲を触れることだけ条件にしたら、集まった8人の内女の子3人はダメなようだった。
孤児院を卒業後は、飲食店を希望らしく蟲や蜘蛛と余り関わらない職業希望のせいだろう。
レアの蜘蛛のクーにも、触ったことのない子達ばかりだ。
「採取会の、同行に許可でたら行きたい子は?」
ラトと、残った5人が手を上げる。
「蜘蛛のテイムしたい子いる?」
これも全員手を上げている。
聞けば冒険者に、なりたいらしくテイムするなら水蜘蛛か火蜘蛛が欲しい子が3人、特に希望する蜘蛛は居ないが、テイムしたい子が3人となった。
「温室に、生き餌の蟲を管理する小屋と、テイムした蜘蛛を置く部屋を大工さんに頼むから、それが完成したら、テイムする蜘蛛を見つけよう」
次の採取会には、間に合わないが管理小屋が出来たら、子供達を採取会に連れて行けるよう交渉するつもりだ。
職人のテイムした蜘蛛の、レベルを上げる為の生き餌を、孤児院でも販売出来るようにしなければ、レアだけでは足りなくなるのは確実だ。
下は10歳が2人ラトとカール、11歳のシーナ、12歳のマヤ、13歳のヘルダにネメアド。
管理小屋が出来たら希望する子達に、交代で蟲の世話をする。生き餌販売が出来るようになったら、お金管理はシスターがする。
顧客や配達は、レアが暫くはすると決める。
「レア姉ちゃん。何で、手を貸してくれるだ?」
レアは、職人見習いでとっくに独立しているのに、偶に孤児院に来るだけなら分かるが、金稼ぎまで世話してくれる理由が分からない。
「血繋がってなくても、弟妹と思ってんの!私も両親居ないけどさ、孤児が大人になって助けてくれる人どれだけ居ると思う?」
ほとんど居ないと、キッパリ子供達に話す。
親切にしてくれる人は、確かに居るが金が絡むことでは難しいのだ。
「多少の余裕がある内に、やれることしておきたいんだ。蜘蛛テイム出来ればなお良い。それに、鑑定スキル得たから、あんた達が成人した時に鑑定してあげる」
レアは、ほいほいと気軽に鑑定してあげると言って
いるが、本来鑑定には料金が発生する。
相場の人物鑑定は、銀貨1枚だ。
「今から金貯めとかないと、成人したけど仕事無くて数ヶ月後に、金無くなったは嫌だよね?」
レアの話を聞いていた子は、全員頷いている。
怪我をするかもしれないし、病気で働けなくなることもある。
「大体、計算したんだけど職に就いてればなんとか生活出来るレベルでしか、お金貯まらないんだよ孤児院だと」
本来なら、親の庇護があって子供らしく生活していたかもしれない子達だが、助けてくれる親はいないのだ。
「蜘蛛のテイムも、出来たら金稼ぎが出来るの分かる?」
10歳児の2人は、よく分かってないが、残りの4人は分かっているようだ。
「蜘蛛さんの糸売る!」
シーナが元気に答える。
「そう。蜘蛛の糸を商業ギルドが、買い取ってくれる。糸はどの蜘蛛でも買い取ってくれるけど、色んな種類の糸が欲しいなら、クーと同じ糸蜘蛛がオススメかな」
蜘蛛のレベルを上げて行くと、リボン織りやスパイダーシルクを織ってくれるのが糸蜘蛛だ。
「冒険者になりたいなら、火蜘蛛や水蜘蛛。冒険者は何処へも行く人達だから、旅先で水や火が必要になった時に便利」
「他の蜘蛛さんは?」
「地蜘蛛がテイム出来たら、鉱物さがしの手助けになるかな。花蜘蛛は、商人や貴族に人気だけど、テイム出来たら1属性の魔法を使うみたい。私も花蜘蛛はよく分からないけど、花蜘蛛でも色んな属性魔法あるみたい」
子供達は、レアの話を真剣に聞いた。
「森の奥に行く程、知らない蜘蛛もいる。冒険者で強くないと行けないみたいだから、町の人がこの辺のテイム出来る蜘蛛は、今話した種類が多いかな」
採取会で、生き餌の蟲を捕まえたり、アイテムポーチにストックしておく蟲だけでもかなりの種類があの森に居るのだ。
全く見たこともない、蜘蛛もまだまだ居る筈だ。
レアは、採取会で捕まえられる、蜘蛛の餌になる蟲の絵を子供達に渡す。
「よく見かける蟲と、捕まえるには危ない蟲が描いてあるから、覚えておいて欲しい」
ハガキサイズのカードで、やや厚めに作り出した紙に子供でも見分けがつく特徴の説明を記入しておいた。
「レア姉ちゃん何コレ。色までついてる」
マヤがいつもと違うと、騒ぐ。
「うん。色塗ったから、蟲の見分けしやすくしたんだよ。採取会に行ったら、このカードを参考にして蟲を捕まえると良いかな」
渡したカードは、20枚。触るのも危険な蟲が描いてあるのは、6枚。
平原に良く行く子達だから大丈夫だとは思うが、森近くで見つかる蟲の中には、トゲや酸を飛ばす蟲も居る。
「後、平原で捕まえた蟲どのくらい集まってる?」
「シスターから、受け取ってくる」
レアが貸し出したアイテムポーチを、預けているシスターにネメアドが取りに行く。
アイテムポーチは、レアの自前の物だ。
両親の遺産の1つで、孤児院に貸し出して平原で捕まえた蟲を子供達に入れて貰っている。
「レア姉ちゃんコレも」
平原に行った日と、子供達の名前を書いた表をレアに渡す。
取れた蟲の数に関係無く、平原に行った回数に1人銅貨20枚を渡している。
3回行ったとすれば、銅貨60枚貰えることになる。少ないと思うかもしれないが、普通の孤児の子供が1日で、銅貨20枚も稼げる世界ではないのだ。
「全員6日行ったみたいね」
チェックして表を返す。
並んだ子供達が、銀貨1枚と銅貨20枚をその場で確認してもらってから、シスターに預けに行く。
レアが渡したこのお金は、いずれ子供達が成人した後の生活の足しになるはずだ。
レアは、アイテムポーチから蟲の入った布袋を取り出して、空の布袋を補充する。
アイテムポーチをネメアドが受け取り、またシスターに渡しに行く。
「レア姉ちゃんありがとう」
お金を受け取った子達が、声を揃えて言う。
「こっちこそ、またお願いね。ただ無理はしない事、もし怪我したらさっきのアイテムポーチの中に、薬入れてあるから必ず使う事」
引率者は居るが、どんな脅威があるか分からない世界だ。
自己満足と言われてしまうかもしれないが、前世と比べて危険なこの世界で、孤児院に居る間の子達に、自分が出来る範囲でしてあげたいのだ。
「まだする事あったかな」
シスターのOKは貰ったし、定期的な平原に採取しに行く子達へのお金も渡した。
次にするのは、大工への発注と、冒険者ギルドの受付に、手紙を出す事。管理小屋が出来ない事には、先に進められない。
気になっているのは、魔力なしと言われた孤児院で前回見かけた子だが、変わらず引きこもってしまっているようだ。
解呪は出来そうだが、他の魔力なしを見つけるまで様子見らしい。
その子には、解呪の話はしていない。
もし、出来なかった時の結果を考えてのことのようだ。
「あっ、タナトはどこ?」
タナトは9歳になる孤児の男の子で、将来は木工職人希望の子だ。
「なに?レア姉ちゃん」
「はい。頼まれてた木」
取り出したのは、採取会で拾ったボタンに加工出来そうな木だった。
蟲の採取が出来ない子でも、お願いされて買わなくても手に入る範囲の物なら、レアは探して渡すようにしてる。
平原に行く子達も、蟲とは別に服飾で使える野生の綿を採取したりして、必要する子に渡したりとお互いで協力しあっていた。
「ありがとう」
礼を言って受け取ると、外の椅子に座って何かやりだしている。
タナトは多分、前にレアが教えた根付を作ろうとしているのかもしれない。
出来上がったら見せて欲しいが、彫ってる所を見ようとすると今はダメと隠すので、その内見せてくれる事を楽しみにしょうと思う。
レアは、一通りの確認をしてシスターに声をかけて、また来る事を告げ孤児達に別れを言って孤児院をでた。
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