第18話 領主邸

馬車は、領主邸に向かう。

元々町並みは古い建物が多くあるが、領主邸に近づくほど古い石造りの建物が増えて行く。


すれ違う馬車も、貴族なのか一般の馬車と違う装飾が多い。


「歩いてる人も、ちょっと服装違いますね」


多分、メイド服だ。クラッシックタイプで、かなり地味に見える。


「貴族のメイドだな。貴族に仕えてる者、あんな感じの服装だ」


「決まった服装なんですね」


服装の絵を描く時の、参考になるなと思う。

比較的、裕福層が多い地区なのか、冒険者らしき服装の者は見かけない。

テイムされた蜘蛛は、花蜘蛛が多くカラフルかと思えば、淡い色の花蜘蛛もいたりと見てるだけでも面白い。


「見えてきたな、あそこが領主邸になる」


小さな城?と言うより砦に見える。

戦になった時は、住民が籠城できる不可思議な空間が地下にもあるようだ。

何で分かったかと言うと、鑑定スキルで周囲の建物よりも、年代がやや古く使用目的の説明文まで見れたからだ。


「池あるんですね」


「湧き水だな。砦が出来るまえからあった筈だ」


水があったから、たまたまここに砦を作り町がが出来たようだ。


「そうなると、地下の空間?」


水脈があるのに地下室作れるのかと思う。


「ああ、地下の避難場所か。何でもここは元砦だからな。建設時に、時空を操れる魔導師にたのんで避難用空間を作ったらしい」


隠してるわけでもなく、ダンジョンが発見された時に、魔物のスタンピードがあった場合どうするのかで、砦内の避難場所のことは各地区長には通達済らしい。

地区内にある掲示板に、必ず張り紙されている筈だから、確認出来ると言われた。


この砦の空間の中に、温室と同じ拡張がされており、町の全住人が避難しても余裕があるとのことだった。


「魔法、すっごく便利なんですね」


前世と比べると、生活魔法でさえレアには便利な物だったが、時空魔法による空間拡張となると、この町はホイホイ温室で使ったりもしているので、余計にそう思う。


「そうだな。異界の転生者に感謝するしかないな。国に確認された者で、時空魔法持ちが十数人いるようだしな」


サラッと、ルシアスがそう告げる。

転生者と自覚している者が、そんなに居たのかと思う。


「転生者?」


思わず聞いてしまった。


「平民は、知る者は少ないか。人は生れ変ると言われている」


そこは、この世界の宗教でも言われている。


「前の人生の記憶を受け継いだまま、稀に生まれてくる者がいる。それを転生者と呼ぶ」


発展途上のこの世界、神が積極的に転生者を招いているらしい。


「ほら、降りるぞ。転生者に興味あっても、あまり関わるな。どんなとばちりがあるか分からん」


有用ではあるが、積極的に関わるのも危険らしい。

と言うことは、探せば見つかるくらいに居るんだろうか?


執事らしい老齢の男性に案内され、来客用の居間に向かう。


「まず俺が、話す。聞かれたら最低限のことだけで良い」


ルシアスに言われ、頷く。

呼び出された理由も、レアは全く知らないのだ。

染料や鑑定だとは思うが、呼ばれるほどかとも思っていた。


「待たせたな」


ライファイト・スレバ・アーリム

かなりの美丈夫だろうか、武人だとわかる体型だなと思う。

レア的に筋肉凄いかなとか、描いてみたいと思う

くらいか。


「お久しぶりです」


「普通に話せ。いちいち遠回しで言われても面倒だ。そこに居るのが、レアか?」


ジッと観察されている。


「はい。はじめまして領主様」


「普通だな。観察で、俺を見ろ。どれだけの鑑定スキル持ちか知りたい」


ジッと見る。


「紙に書いて記入して良いですか?見える表示が多いのと、膝の治療方法も分かったので記入した方が良いと判断します」


「好きにしろ」


レアが記入をしている間、ルシアスはライファイトとレアの鑑定の話をする。


「物怖じしないな。染料の話は聞いたが、俺は服飾には疎い。妻が言うには、販売すれば領地がかなり潤うらしいな」


「現在布を染めている段階ですが、商人連中は売れると判断してます。なお、ダンジョンからも新たな染料になる素材を、早速見つけ出したので、随時確認中です」


「普通、そう簡単に見つけ出せるものか?」


武人でもあるライファイトからみれば、職人が染料を見つける過程など分かりもしない。


「素材を早く見つけたとして、普通は最低3年は研究期間があると言った所でしょうか」


ルシアスの言い方がぎごちないのは、どう領主に分かりやすく説明するか考えながら話しているせいだろう。


「レアの場合、かなり詳しく鑑定内容を読み解くのか、本来どうやれば必要な染料になるか、そこにいきつく過程まで分かるので、こちらはその過程を確認するだけなので、早く商品に出来たと言ったところでしょう」


「そうなると紛れもなく、上位鑑定スキル持ちか。場合によって護衛付けるか、本人を強くさせないと、マズイな」


鑑定スキルは貴重ではあるが、レアのように上位と思われる場合は、保護が必要になってくる。


「終わりました」


ルシアスにも、見せないように伏せた上で渡す。貴族に鑑定した場合なんとなく他人に知られるのをなるべく防いだ方が良い気がしたのだ。


「おい、これは確かなのか?」


ギョとしたようにレアに、問いかけるライファイトだ。


「鑑定で、見えた事を書いたので、私には確認まで出来ません」


「何を書いた?」


ルシアスも、流石にライファイトに見せて欲しいとは言わない。


「多分、膝の治療方法だと思います。膝の内部に異物が残っていて、外科手術で取り除いた後に、治癒魔法をかければ治ると書いて、後遺症なく確実に治せる方が、ナルース・ラカナ・テッサと言う方に外科手術してもらうと確実と書きました」


レアは、鑑定で見えた事だけ書いただけだ。


「切り裂きナルースじゃないか!」


かなり物騒な事を、ルシアスが呟く。



「隣国クルザの元騎士だが、今は冒険者だったな。敵対した者は、かならず徹底的に切り裂き殺した所からきてる。別名血塗れナルースとも言われてる」


自分を陥れた同僚を殺し、国を出奔した人で家族も、殺されて失う者もなく冒険者になった人らしい。

隣国クルザから、逮捕状が出ていないのは、ナルースが殺した元同僚の方が、凶悪な犯罪を犯していたからで、ナルースの家族も被害者でありナルースに咎はない。


冒険者になってからも、敵対した者も殺されてしまうだけの理由があり、ナルースは罪人と言う訳でもないのだが、異様な殺し方で悪い意味で有名になってしまった人らしい。


「んー。鑑定で見えた事を書いただけなので、ナルースと言う方が冒険者なら、現在この町に居るから鑑定で見えたのかな?ダンジョン出来てから外からの冒険者増えてますよね?」


「増えてるな。まぁ良いナルースの方は、何とか探す」


膝の治療方法以外では、特に驚く事もなく鑑定内容が間違ってもいなかったようだ。


「外からの冒険者、特に魔物をテイムしている方に、虫除け香を必ず所持するよう周知して欲しいです」


レアは、出会った冒険者とその時あった事を話す。


「わかった。薬師ギルドに、虫除け香を報酬としたクエストを提案しておこう。ルシアス、レアの貸し出しは可能か?」


ライファイトは、レアの鑑定でみた魔力なしのその後の会議結果を話す。


「それは、本当の事ですか?」


魔力なしが、魔族のカケラとか言うのが原因の呪い?


「今は、分からん。レアが、孤児院で鑑定した子供しか魔力なしが確認出来てない。他にも探させるつもりだが、レアには悪いが魔力なしを見つけた都度鑑定して欲しい」


「私は構いません。雇い主のルシアス様次第です。お願いがあるのですが良いでしょうか?」


職人のテイムしている蜘蛛の、レベル上げに生き餌が有効だと分かったこと。

冒険者にテイムされた蜘蛛と比べて、職人のテイムした蜘蛛のレベルが低すぎる為レベル上げするよう頼まれたことを話す。


「誰からとは言えません」


レアも、神からと言わない方が良いと理解はしている。


「お前、協力者か?」


領主が言う、レアは蜘蛛の協力者らしい。

蜘蛛をテイムするようになり、三代前から領主の血筋とは別に、有用なスキル持ちの協力者が度々現れるらしい。それらは、その時の領主の助けにもなっている。必ず誰かから頼まれたと、そう言ってくる為協力者と呼んでいるらしい。


「分かりません。たまたま使えるスキルがあったからしていただけです」


まぁ間違ってはいない。


「生き餌を、私だけで管理するには無理になりそうなので、孤児院の孤児達を使っても良いか許可して欲しいです」


現在の孤児が、成人するまでに稼げる金額だけでは、孤児院をでた後は数ヶ月くらいしか余裕がないこと、少しでも稼いで不測の事態に備えさせたかった。


「レアが言う、蜘蛛のレベル変化の記録がこれになります」


ルシアスが、ララーザから持って行く方が良いと渡された記録帳を見せる。


「職人連中は、こうもレベル上げを、怠っていたのか?」


「冒険者ではなく、町中に暮らす者は自分達の生活が基準になります。働かなくては、暮らしていけないし、お金も稼げないです。怠っていたとかではなく、職業の違いによる蜘蛛の生活環境の違いが、レベル上げに向いていなかったと考えるべきです」


そこを、間違えないで欲しいと思う。


「生き餌ですが、碌な鑑定しか出来ない者に商売としてさせるのにも向かないです」


捕まえた虫の生態を、詳しく鑑定出来ないなら手を出さない方が良いとも告げる。


「町中に、被害がでないようにする為か」


ルシアスが、レアが鑑定して記録として残した虫の絵をライファイトに見せていた。


平原から、森の手前くらいまで蜘蛛を連れて捕食させに行けば良いと、そうは思うが仕事がある職人が、毎日出かけるのも難しい。

他の者に、蜘蛛を連れて行かせるのも、蜘蛛によっては難しい。


「シスターが、反対しないのなら構わない。孤児院は、シスターの方が管理しているからな」


レアが協力者らしいと、そう分かってからのライファイトの判断は早い。


レアからすれば、協力者?何ソレ?だが、することに反対されないのならやるだけだ。


「レア、画材スキルも話しておけ」


領主が認めたなら、この際話せる事は全て話しておけとルシアスが告げる。


「あの物心ついた時期から、製紙スキルを所持していたんですが、つい最近画材スキルにレベルアップした事を、報告します」


これで良いの?そう思う。


「製紙スキル?ゴミスキルと言われてたな?」


小さなな紙片しか出せず、使えないと言われてるスキルだ。


「ひたすらスキル使っていれば、使えるスキルになりますよ」


最初は、かなり苦労したのは確かだ。


「画材スキルになってから、出したのがこれです」


12色の色鉛筆と、A1サイズの大きな紙を何枚か出す。

自分の魔力を消費して、作り出した物だ。


「魔道具の、色筆とは違うんだな」


息子が、絵を描くのが好きらしく魔道具の色筆を渡したらしい。

ライファイトには、変わったスキル程度にしか思わなかったようだ。


「なら息子さんに、渡してください。すぐではないですが、いずれ売り出すかもしれません」


「わかった。商業ギルドが了解するなら、こっちは反対もしない」


武人のライファイトでは、商売に関しては奥さんに任せているようだ。


「ルシアス、レアを冒険者ギルドを使ってレベル上げさせろ」


レアの今のレベルが15と低く、もし襲われた場合対処も出来ないだろう。


レア

レベル15


HP 100/100

MP 1600/1600


年齢から見て、MPが高すぎる以外は普通だった。

普通に生活していれば、成人した頃で15レベルなのは平均だった。


「最低でも、レベル30あった方が良い」


それだけあれば、逃げ切るだけの速さは身につく。戦って敵を倒す必要はないが、攫われて奴隷にされる危険を防ぐ為にも、レベル上げをするよう言われた。



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