第17話 それから

「飲み過ぎた」


ルシアスは、二日酔いで痛む頭を抱え突っ伏していた。


「万能薬飲みますか?」


ララーザが、小瓶に入った万能薬を渡す。

万能薬は、状態異常を治す薬で冒険者の御用達品だ。

値段は、銀貨2枚だが二日酔いでも効果があった。


「悪いな。味さえ良ければマシなんだが、変わらず不味い。今日の予定は、どうなってる?」



「商業ギルド長と、領主様から早めに来るよう連絡が来てます」


カウルじいさんの方は、レア絡みだと分かるが領主の方は予想がつかない。


「どちらも、レアの同行をするよう言って来てます」


「アレは、また何かやらかしたのか?」


「領主様の方は、分かりませんな。考えられる事は、染料の絡みか生き餌か、鑑定でしょうか?」


全部じゃないかと、ボヤくルシアスだ。

次から次へと、起きる。


「後、レアから昨日から報告したいことがあるらしく、ずっと待ってますな」


「分かった。レアを呼んでくれ」


領主まで出てくるとは、一体どうなっていると思う。


「おはようございます。もう昼近いですが」


「で、報告したい事はなんだ?」


アイテムポーチから、ドンと出した。

変な色の実を見る。


「新しい染料の素材です。誰にも話すなと、言われてたので昨日から報告したかった事です」


鑑定結果の紙も、ルシアスに渡す。


「ダンジョン産なので、探せば他にもあるかも知れないですけど」


喜ばしいことだが、いつの間にダンジョン産なんか手に入れたんだと思う。


「配達の後に、お昼ご飯で屋台行ったんです。珍しいから、鑑定したら分かったので買ってきました。買わない方が良かったですか?」


「あほう。んなわけあるか!珍しい物なら、どんどん鑑定して、俺に報告しろ」


必要経費も、報告すればきちんと払うとも伝える。


「後は、製紙スキルが画材スキルにレベルアップ?かな?大きいサイズの紙や色鉛筆を、出せるようになったので報告と、生き餌を拡大したいので、孤児院を巻き込んで良いか、確認お願いします」


レアはサラッと言ってるか、使えないと言われる製紙スキルが、上位スキルに変化するなんて聞いたこともない。

普通小さな紙片くらいしか出せないと、そう言われている製紙スキルだ。


「色鉛筆?見せてみろ。ついでに紙もだ」


持っているんだろうと、ルシアスが催促する。


「はいどうぞ。色鉛筆は、1本出すのに魔力50も消費しました。紙は、大きさに寄って10〜50の魔力を消費してます」


「ララーザどう思う?」


ルシアスはレアが出した物を見て、唸ってしまった。


「良い意味で、規格外すぎますな。これは領主様に報告しないとマズイですな」


色鉛筆は、特に売れると思う。紙の方も、ここまで大きければいろんな用途として使えそうだ。


「これ使った絵は、あるのか?」


「着色した絵なら、これです」


ハガキサイズに描いた、虫の絵だ。

まだ先だが、いずれ孤児の採取の手助けとなる様に描いている絵だった。


「虫か。お前虫好きなのか?」


「いえ絵を描くのが、好きなんです。それ孤児院の子に渡す用です」


生き餌で、孤児院を巻き込んで良いかと聞くほどだ。自分と同じ境遇の孤児を思ってのようだ。


「生き餌は、そのまま続けることで間違いないな?」


「細々するには良いんですが、買いたいと言う人増えそうですか?それに寄って自分だけでやると、生き餌が足りなくなるかと思います」


町中だと、産み増えないと話し定期的に捕獲してこないと難しい事、孤児院のシスターの了解さえ取れれば、自分が捕獲に行けなくても描いた絵を孤児に持たせて捕獲してきて貰う。


「シスターより、領主のとこに行くぞ。お前が色々やらかしたから呼び出しだな」


「えーと、出来ることしかやってないですよ」


どの範囲までがやらかしたと、ルシアスが言ってるか知らないが、自分で出来る事をしていただけだ。


「この色鉛筆は、もう1セットあるか?」


「2セット作ったので、1セットなら渡せます。揃えるのに、魔力600消費するんでこれ売ったらいくらの値段付きますか?」


売れそうなら、売ってみてもよいかなと考えるレアだ。


「どう見るララーザ?」


「そうですなぁ。たしか色を塗れる魔道具の色筆でしたか、それが確か金貨160枚はしたはずですが、あれは無駄に魔力を吸い取り色を出すと聞いて好事家くらいしか購入者が居ない事を思うと、こっちは実用性があり普通に誰でも使えると考えれば、1色で金貨1枚でも買う者は居るはず」


セット販売なら金貨12枚だか、入れるケースを吟味して販売すれば、もう少し高値で売れるかもしれない。


「そんなに?」


「売り出したら、好きな絵を描く時間が減ると思うがな」


「なら販売はなしで」


自分が描きたくてわざわざ作ったのだ、販売したら絵を描く暇もないなんて最悪だ。


「まぁ待て。個数限定で、値を吊り上げればいい」


売らないのはもったいない。


「毎日1セットは作れるな?定期的に期間限定にすれば、店付きの家くらい直ぐ買えるぞ」


「そうなると、ここから独立」


雇われない立場は楽だ。ただ、やっかみで商売敵には恨まれそうだ。


「ルシアス様。何自分から手放すような発言してるんです!」


「そうだった。レア、はっきり言うがお前が見つけた染料が、実用化されて行けば、店付きの家どころか、屋敷1つは余裕で買える金を得るが取り込もうとしてくる者も居る筈だ。貴族でもない者が、目立つと狙われる」


「ならお金だけ貰って、この町でる?」


冒険者の知り合いは、何人か居る。両親の知り合いの冒険者に頼めば町を安全に出て、移動出来る。


「却下だ。なんで、お前はそう短絡的に考える。町の領主と縁を繋げておけば、他貴族からの手出しはない筈だ」


蜘蛛の大本と、契約している血筋だ。王都の貴族連中でも慎重に考えていらぬちょっかいはない筈と思いたい。


「言ってみただけです。恩人に、蜘蛛のレベルを上げて欲しいと頼まれたので、職人のテイムしている蜘蛛を中心にするつもりです」


転生して、好きに出来るスキル貰っているし、テイムした蜘蛛のレベル上げくらい手伝う気はある。


「そんな知り合い居たのか?」


「オーナーが、知らない付き合いの人ならかなり居ますよ。領主様は分かりました」


言われたまま付いて行けば良いかと思う。


「ララーザ、領主様に、先触れの知らせしておいてくれ。カウルじいさんの方は、今日は行けるか微妙か」


領主様が、レアにどう興味を持ったのか違うのか、今の時点では分からない。

新色の染料の話を通しておくのと、他にも聞かれたら話すしかないだろう。


後回しにするカウルじいさんにも、事情を伝えるよう手配する。


「オーナー、領主様も貴族ですよね?貴族の人への接し方分かりません」


そもそも貴族の挨拶の仕方も、全く知らないのだ。オーナーのルシアスも、貴族の端くれだが普段から普通に話しているせいか思い当たらなかった。


「町人には、厳しくないからいつも通りで構わない」


向こうから、声掛けられるまで話すなとだけ伝える。

聞かれた事で、話したくない話題なら無理に話さなくて良いようだ。


「馬車の準備と、返事が来たら行く。準備だけしておけ」


いつも通りで良いなら、クーを蜘蛛部屋から連れて来よう。

必要な物は、持ち歩いているアイテムポーチに入っている。

ただ時間が昼近くと、微妙なので食堂に行って軽食を貰い、アイテムポーチに入れておこう。


必要な準備を終えると、それは来た。


足に筒を付けた、小型魔鳥が開いている窓の隙間から入ってくる。

貴族や商人が、急ぎの連絡の時に使われる魔鳥だった。


「待ってるそうだ。領主邸に向かう」


これから行く旨の手紙を書くと、外に待たしていた馬車に乗った。

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