第16話 検証

工房に戻ったレアだったが、特に変わったことはなかった。

オーナーのルシアスは、まだ工房会議から戻っていないし、親方のララーザも一緒に参加している。

これでは、染料になる素材の事を話すのに時間がかかりそうだ。


「スキル確認と、蜘蛛の世話して待とう」


やる事はたくさんあるし、蜘蛛のレベル上げを神からもお願いされたので、生き餌は続ける事確定だ。


「一人で管理も、限界かな」


凄く儲かるわけでないが、蜘蛛のレベルをもっと上げると考えると、生きたままの虫の確保と、捕まえる跳虫(コオロギ)限定に絞ると数の確保が難しい。


町中で、跳虫を増やせないのもかなり痛い。

どうも、鑑定で見れば町の外と中での魔力濃度か、魔力の質が関係して交尾らしき行動や卵を産む気配も全くない。

森や平原に、豊富にいるから取り尽くして絶滅させる心配もない。


生き餌で、蜘蛛のレベルが上がると知れ渡れば、どんどん購入したがる工房も、その内出てくるはずだ。


ここは、孤児院を巻き込んでみるのも、ありかと考える。

跳虫なら、孤児達が採取に行く森の手前の平原でも良く見かける。

平原まで行ける子なら、虫もへっちゃらな子も多い。


それに、孤児達こそちょっとした稼ぎをなるべく増やせるようにしてあげたかった。

親がいないと、15で孤児院を必ず出た後にお金で困ることは確実だ。

孤児院に入った年齢にもよるが、そんなにたくさん貯められない。

孤児院出て半年ほど、生活出来るくらいしか貯まらないのだ。


「シスターに相談と、許可得られるかの確認して、孤児院の子達も蜘蛛をテイムさせるのも手かな」


冒険者希望だろうが、職人希望だろうが、蜘蛛をテイムしてる方が、この町なら後々便利なのだ。慣れるまで確かに大変かもしれない。


「捕まえる虫の、判別しやすいようにしないと」


カードに子供でも、見て判別しやすい特徴の絵を描いて、慣れるまでカード持って確認出来るようにもする。

レアが一緒に行動出来ればよいが、毎回一緒に行けるかも分からない。

跳虫は、孤児院に要相談として、次は屋台で購入した染料になる果物だ。


これは、鑑定で作り方まで表示すると言う。

転生者特典の、ずるいチートだった。

鑑定内容をメモして、オーナーのルシアスか親方のララーザに丸投げすると決める。

前にトゲあるイモ虫の採取は、結局商業ギルドのカウルじいさんに丸投げして頼み済だ。

そっちもその内、連絡くるはず。


「商業ギルドへの鑑定のお手伝いも、あったし」


それも、オーナーのルシアス次第だろう。絵の描き直しの仕事が、今後どうなるかもわからない。


「あと、なんかあったかな?」


思い浮かばないので、画材スキルを確認しようと思う。

東の教会で、出した赤の色鉛筆を取り出す。

次は青あたりかと、濃いめの青を思い浮かべると魔力が減る感じを確認する。


手の平に出来上がった、青の色鉛筆が乗っていた。先に出した赤の色鉛筆と比べるが、芯の色以外の違いは特になかった。


「よし。残りも終わらせよう」


間違いなく出来ているので、誰かが来ない内に作り出してしまう。


「念願だった色鉛筆がついに!」


まだ12色しかないが、この世界初の自分だけの色鉛筆だった。

誰も見てないし、思わず万歳してしまう。


先に作った赤鉛筆を含め12色分、合計で600MPも消費した。

ペンケースになる容器がないので、巾着袋にまとめて入れる。


「次は、紙の検証かな」

ハガキサイズと、B5は消費MP10だった。

A5、B4、A3、A1あたりまで出せるといいなと思う。


「つ、疲れた」


A5、B4の紙も消費MP10だった。

A3でMP20を使い、A1でMP50を使用した。

ついでに、A2もいけそうで試す。


「A2もMP20だから、A1で最初から紙出した方が魔力の節約になるかな」


紙サイズ別消費魔力量が、これでわかった。


「同じこと繰り返してるだけだと、飽きる」


ここは、和綴じ本をさっさと作っておこうとアイテムポーチから材料を出す。

空き時間の合間に、束ねられる状態にしておいたのだ。必要な穴あけも済ませたし、後はクーに出して貰った糸を長めの針に通してとじるだけだった。


この和綴じで、商業ギルドで見た暦を書いて今後の不定期な予定をはっきり忘れないようにするつもりだった。

和綴じ本は、3冊ほど作る。残りは、落書き用にでもしようかと思っている。


結局、その日は夕飯だとエミリーが呼びに来るまでレアは和綴じ製本をした。




「オーナー戻ってないよね?」


夕飯は、ビーフシチューっぽいスープとパンだった。味噌や醤油っぽい調味料もあるけど、洋風料理が多い。


「工房会議の後は、男衆は飲みに行ってるのかもね。仕事の付き合いで、よく行ってるみたいだから」


「そっか報告したい事あったけど、明日にするよ」


食堂では、さっさと食べてしまった先輩職人達は自分達の部屋か、外に飲みに行ったかで今はエミリーとレアしかいない。

職人同士の仲は悪くないが、年齢差が開いているせいか、普段から気づけばエミリーといることが多かった。


「エミリー、やっと大きい紙作れるようになったよ。その紙使って型紙作ってみる?」


エミリーには、いつも色々とお世話になっている。紙を使った型紙は、ちょっとした贅沢品だ。服の型にする材料は、薄く切った板から型をおこすことが、一般的で生活魔法を利用して自分で加工する。

ただ木の板はかなり嵩張るし、型を作る手間がかかる。


「いいの!」


「試しに使って。やっと出来るようになったから、ただまだ紙の厚さが安定しないんだよ。紙が小さいようなら、糊は自分で用意して」


この世界も、でんぷん糊はある。作り方は簡単で、でんぷんと水を混ぜてドロッとなるまでなべで煮込めば出来上がりだ。


難点は腐りやすいが、アイテムポーチ持ちならそこに入れておけば長く保存が出来る。


「使って気づいた事あれば、教えて。魔力で紙を作り出すのって、紙が大きくなるほど厚さが微妙になるのと、用途別に使いやすい厚さが出せるようにしたいんだよね」


薄い紙なら染めて、包装紙にしても良いのだ。

紙の種類が自在に出来るなら、絵を描く用だけでなく色々と使いこなしたい。

アイテムポーチから紙を出して、エミリーに渡す。


「レアありがとう。私が作れる物であれば言ってね。協力するから」


「分かった」


ビーフシチューも良いけど、カレーも食べたいなぁと、別の事を考えていたレアだった。


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

紙のサイズ別消費魔力量


ハガキ、A5、B5、B4が各MP10

A3、A2が各MP20

A1でMP50


色鉛筆消費魔力量

1本でMP50


レア

レベル15


HP 100/100

MP 1600/1600


東の教会で出した、赤鉛筆と紙の分も含んで減ったMP700

スキルは、まだまだ増えそうなので、その内まとめます。

MP量が無駄に多いのは、毎晩枯渇するまで使い切って増やしたから。


魔力は、寝て起きれば回復する。

町中よりも、ダンジョンとか魔力濃度が高い場所ほど早く回復する。


レアは転生者特典の、魔力量が上がりやすかったからと、レベルに対してのHP 量も特に計算してないので、突っ込まないでください。

だいたいこんな感じ。

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