第15話 邂逅
「戻るにしても、まだ早いし久々にスケッチしておこうかな」
工房会議で、自分が話題にされていた頃レアは思っていたより早く孤児院から出たせいか、工房に帰るしてもまだ時間が早かった。
レアの場合、頼まれる仕事が不定期なせいで、今回みたいに午後だけ休暇になったりと長時間のスケッチがなかなか取れない。
合間に生き餌の管理や、蜘蛛の世話もある。
歩いていると町中で、竜馬が馬車に繋がれている。
竜馬は荷物の移動手段で当たり前に使われているのだが、出身地により鱗の色合いや顔の造形の違いがありなかなかに見飽きない魔獣だ。
「顔だけでもスケッチしよ」
他の人の邪魔にならない位置を陣取ってスケッチしていく。
ついでに鑑定もして、どこの出身かもメモする。
転生してから、前世の世界と全く違う文化が珍しくて、生き物にしろ建物にしろちょっとした合間に、こうしてスケッチした絵もかなり増えた。
「やっぱり、色絵の具欲しいなぁ」
鉛筆画も、それなりに良いがカラーで描きたいと考えてしまう。
染色用も少し試したが、何となく気に入らないのだ。
紙に染み込みすぎる。顔料とやはり違う。
色の数が多いほど、文化が進んでいるとも思うが、身近に見に行けるカラーな絵となると、教会の壁画しか浮かばない。
「あっ、そっか壁画の色見れば良いんだ」
鑑定スキルが、自分にあるのだ。
壁画の色から使われた物が、何か分かるかもしれない。
まだ時間はあるし、ここからだと戻るより東門近くの教会が近い。
そうと決めたら、竜馬スケッチをさっさと終わらせて東の教会へ向かう。
東門は、隣国に通じているせいか見慣れない民族衣装の者も多いし、テイムされた魔獣も珍しい種類が多い。
種族や、国、身分による服飾の違いも、ずっと見ていて飽きない。
向かった東の教会は、商売の神を信奉する者が多いせいか、教会前の広場は西の教会と違い活気ある異国の物を扱った屋台が多い。
屋台の合間を抜けて、教会の祈りの間へと向かう。ここは誰でも自由に入れ、騒ぎさえしなければ、ただ座っていても良いし、祈りを捧げても良い。
せっかちな商人となると、お布施をしてさっさと出て行く姿も見える。
レアは、誰も邪魔にならない隅っこの椅子に座ると、創生の絵を見上げる。
創造神が、世界を作ったと言う始まりの絵だ。
青い空から始まり、俯瞰で大陸を見る感じに描かれている。
これを見ると、前世の写真や映像で見た宇宙から星を見ているようだ。
空の色、青貝石、白は白色系の貝を粉にした物のようだ。色んな貝の名前が出てきてきりがない。多分白い貝を選んで使っているようだ。
天然の鉱物、赤土、黒土、貝と世界が違っても当然使う材料は、天然の物を利用している。
漆喰に近い性質の材料も読み取れる。
残念な事に、レアがこれらを手に入れるのは難しい。
ただ転生者が、ここでも関わってるっぽいと分かった。鑑定した絵の説明の中に異世界と言った言葉が入っていたからだ。
教会が建てられたのが、魔族との戦いの前で使われている教会の壁の石が、500〜700年ほど前なのだ。
単に古い石を使っているだけかもしれないが、創造神の像も、それくらいと考えればかなり古くからスレバの町があることになる。
転生者が、何故こうも過去から今まで自分を含め現れているのか?
「誰か教えてくれれば、良いのに」
ボーっと、壁画を見上げたまま呟く。
『知りたいかい?』
誰かに声をかけられた?周りを見渡せば、離れた場所に参拝者がいるくらいだ。レアの側には誰も居ない。
「疲れてるかな?気のせい?」
『こっちだってば!』
居並ぶ神像の内、隅にある子供の姿の神像が淡く光っている。
子供の姿の神像に、何の神だったかと考え込む。
「何で光って?」
不思議で、近づいて像に触れたレアの姿はその場から消えた。
誰もレアが消えたことに、気づく者は居なかった。
視界が急に消え、眩しいと感じた瞬間レアは別の場所にいた。
前世、良く絵を描いていた懐かしい高校の美術室だった。
『君が、1番好きだった場所がここでは見えるんだけどさ。本当に、絵を描くのが好きなんだね』
教卓に座る子供が、居た。
「誰?」
『誰でしょう?転生時に会ったんだけど、忘れてるみたいだね』
そう言われても、覚えてないのだ。ただ、神の誰かだとは思う。孤児院に居て、たまに教会にも行ったが、神の名前まで全て覚えていない。
『んー。記憶を思い出した時の、状況の弊害があるか。冒険者して、好きに色んな所行くかと思ったけど、忘れてるようだから助言で呼んだんだよ』
助言?なんのことだろう。
『転生者は、あの世界を壊さなければ何したって自由だってこと。大量殺人は勘弁だけどね。君の場合だと絵を描く事が重要で、後は僕たちがたまにするお願いを聞いてもらう事。対価は、自分が欲しいと思った事をスキルに出来るだったかな』
なんで覚えてないの?と呟いている。
平民だけど、国の貴族だろうが、王族だろうが、レアが望めば手出しも出来ないし、贅沢にも暮らせるよと言う。
「権力は、面倒だからいらない。仕事以外で命令されてするのは嫌だし。私に何をして欲しいの?」
『せっかく、ダンジョン発生させたのにさお菓子少ないんだよね。別に元パティシエの子も居るんだけど、その子に協力して欲しいんだ』
神だけど、美味しいお菓子が食べたいとボヤく。
「あっ、ならこれあげる」
おやつで、食べようと思って買ったパンケーキもどきと、蟻蜜入り小壷をアイテムポーチから取り出す。ついでダンジョン産の果物も出す。
「現地の屋台で買った物で、やっと甘味と果物出回るようになったみたいだから、もう少し待てば色々増えると思うよ」
ダンジョン攻略が、進んだ結果だろう。
『良いの?』
嬉しそうに食べるその姿は、神に見えない。
「甘味増えるなら、私も食べたいしね。もしかして鑑定も、その流れ?」
食べながら頷いている。
「まぁ鑑定あって助かるし、元パティシエの子?とも会ってみたいから良いけど、転生者って誰かに話しても良いの?」
疑問だったのだ。過去に、色んな転生者が居たっぽいが、その扱いがどうなっていたか不明だった。
『国によるよ。なるべく同じ転生者ならいいけど、前世の知識を話さない方が良いね。鑑定スキルで見えた事を前提にした方が良いかな』
ご馳走さまと、かなり甘味に飢えていたようだ。
教会に、甘味を捧げる者は居ない。
「そう使えそうな前世知識なんて、持ってないと思うんだけど」
『その考え危険だよ。世界が違えば価値観違うし、過去に転生者を害する者も居たのは事実』
悲劇の物語の中に、転生者の話があるらしく、暇な時に探してみると良いと言われた。
『転生者同士なら、会えば分かるから。甘味のお礼に、使えそうなスキル渡しておくよ。転生者と知られても大丈夫なのは、領主夫妻と君の雇い主に商業ギルド長くらいかな。悪い事に利用しないって意味でね』
そう言われてしまうと、自分から話さないよう気をつけようと思うレアだ。
『後ね。蜘蛛、レベル上がるように協力して欲しいって。ここ200年くらい冒険者がテイムした蜘蛛以外のレベルの上がりが悪いってボヤいてる』
誰かと話しながら、レアとも話す感じに聞こえる。
『お供えあるなら、像の前によろしくね。あっもう時間切れ?ちょっとまって、それありえない』
かなり色々、欲求があるようだ。
確実に、誰かと念話しながらレアに話している。
『たまには教会きてね。神託で知らせるからちょくちょく確認して。んじゃ』
ノイズが入り、高校の美術室は消えブツッと切れる感じで、元いた祈りの間にレアは戻されていた。
光って見えた神像も、なんの変化もない。
アイテムポーチに入れたパンケーキもどきと、蟻蜜入り小壷も無くなっている。
先程の出来事は!確かにあったことのようだ。
「確かスキル」
渡しておくと言われたのだ、気になって自分のステータスを確認する。
スキル欄に、隠蔽、索敵、護身術、短剣術、神託、直感が追加されていた。
身を守る為と、神からの連絡用らしい。
称号に転生神の加護が追加されていた。
話したあの子供は、転生神?次に会うことがあればまた聞こうと思う。
隠蔽スキルで称号を隠す。
称号持ちはそう居ない。
神託も隠蔽する。
神官になるつもりもない。
他は冒険者なら持ってるスキルだし、言われない限り見られることがあっても、誤魔化せる範囲内だろう。
神託に、新しいスキルを、作るの忘れずにとまであった。
「新しいスキル」
思い浮かぶことはないが、欲しい物はあった。
色絵の具だ。
紙を魔力で作り出すように、自分の魔力を色に変換させるのはどうだろう?
鉛筆タイプか、筆タイプ?でも切り替えるのが面倒だから、色ごとに鉛筆と同じサイズで魔力を変換して作る。
色も、最初は12色にして水に触れると水彩絵の具のようにも使えるのはどうだろう。
手の中に、まず1本の赤鉛筆が現れる。
持っている鉛筆をベースにしたせいか、見える芯の部分以外は、鉛筆と変わりない外見だった。
魔力は50を消費した。
紙よりは消費量が多い。
「やり方次第で、全部ただで作れたってこと?」
欲しい物や、したい事がこうも簡単に出来るなら、今までの苦労はなんだったんだと思う。
ちょっとばかり、落ち込む。
色鉛筆を12色を作り出すと、保持している魔力量の半分近くを消費量するから、一旦色鉛筆を作るのは中止する。
「紙も、サイズ変更可能になる?」
まず製紙スキルで、ハガキサイズを出す。
魔力は10減った。
次にB5サイズを出す。
今までの出来ないと言う思い込みを捨て、紙を出したいと願う。
『製紙スキルを、画材スキルと同期します』
軽い頭痛が起きるが、スキルの同期がされたようで、手にB5サイズの紙があった。
「やった」
どの大きさまでの紙を出せるかは、実験が必要だ。消費した魔力は、10と変わりなかった。
「紙サイズ変更可能なら、必要画材も増えるわけで」
製紙スキルから画材スキルに、レベルアップしたようなものと、思うことにする。
不可解すぎるが、考えても出来るからしただけとしか分からない。
欲しかった画材を、自分の魔力で作れるとなるとすっごくうれしい。
「お礼に、また甘味手に入ったらもってきますね」
作り出した紙と、赤鉛筆をアイテムポーチに仕舞うと浮かれて工房に戻るレアだった。
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