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「ロム!」
男を見据えたまま、レイナはロムに近寄る。男にチャームがかかっている様子はなかった。
レイナはロムの首筋を触り、脈があることを確認する。
「グランドライト」
レイナはロムに左手をかざし回復魔法を唱える。
「チャームを返したのね。」
フィードバックのあるチャームは、精神力の強い相手であれば打ち破る事が出来る。その時には、術者の精神に多大なダメージを与える。
「どうやら、あなたを倒さないとダメみたいね。」
ロムが意識を取り戻し始めているのを確認して、レイナは魔法をかけた手を戻す。そして男に再び剣を向ける。
「色々聞きたいことがあったんだけど、そうも言ってられないわね。覚悟しなさい。」
「ふん、化物女よりは好みだな。」
「そう、ロムはあなたの好みじゃなかったのね。やっぱり、そっちの趣味なのかしら?」
「俺は純粋に人間の女が好きなだけだ。化物女に興味はねぇ!」
ナイフを打ち出してくるが、それを全て剣ではじき返すレイナ。
「あんまりそう言ってると、怖い目に合うわよ。」
レイナが男に向かって飛びかかろうとしたとき、不意に肩を掴まれた。
「え?なに?」
レイナの肩を掴んでいたのはロムだった。しかも、かなり力を込めている。
「レイナ、ここはちょっと私に。」
「は・・・はい。」
その気迫に、レイナは剣を下して後ろに下がる。
「や、やりすぎないようにね。」
ロムに忠告するレイナだが、ロムはにこりと微笑んで答える。
「レイナ、お願いしますね。」
そのロムの言葉に、レイナは頷くことしか出来なかった。同時に、男の未来を案じた。
「化物女か、流石に化物だけあって回復力は高いな。」
男はロムに向かってナイフを打ち出す。しかし、そのナイフもロムの木の棒が叩き落す。
「神よ・・・この者に道を教え導く事をお許しください。」
両膝を地面に付き、手を組み祈るロム。
「何だよ、驚いたな。化物も神様に祈るのか。」
男は笑いながら再びナイフを打ち出すが、そのナイフはロムの後ろの壁に当たる。
「何?!」
そう思った瞬間、男は右腕に強烈な衝撃を受け、手にしていた武器を地面に落とす。
「確かに、私は人間からすれば化物ですね。」
ロムは男の腹を手にしている木の棒で振り抜いた。男はその衝撃で地面に倒れこむ。
「でもですよ、一応、私も性別は女ですから。」
うずくまっている男の肩に木の棒で強烈な一撃を与える。
「流石に、あんな事言われたら、怒りますよね。」
倒れて肩を押さえる男の顔に、木の棒をめり込ませる。
「レイナ。」
ロムの声にレイナは無言で頷いて、男に回復魔法をかける。男の傷は完全に癒える。
「私もね、こっちの大陸で頑張ってるんですよ。それを、よりにもよってあんなことを言うなんて。」
そう言いながら男を滅多打ちにするロム。チャームのフィードバックで一体何を言われたのか。
「レイナー。お願いします。」
再び男に回復魔法をかけるレイナ。再度傷が癒えるが、男の顔は引きつっている。
「もうそのくらいに・・・。」
「いいですか、私も、こんな事、したくは、ないんですよ!」
言葉の区切りごとに男を殴りつけているロム。持っていた木の棒は、すでに真っ赤に染まっている。
そして、都合四セット目が終わったあたりで、見かねたレイナが止めに入った。
「ロム、これ以上やると心が壊れちゃうわよ。」
「そうですね。そろそろ素直に話してくれる気になったと思いますし。」
レイナの言葉を聞いて、振り上げていた木の棒を下すロム。
「あの、話してもらえます?」
いつも以上に優しい口調で話しかけるレイナ。流石にあの光景を見た後ではこう接するほかない。
「は・・・はい。」
戦意を完全に失った男を見て、レイナは剣を指輪に戻す。ロムも同じく木の棒をローブの内側へとしまう。
レイナは改めてロムは敵に回さないようにしよう思った。
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