親分
1
しばらく洞窟内を歩き、一回り大きな木の扉の前で二人は足を止める。
「さてと・・・ここが罠を仕掛けた場所だけど・・・。」
そこには今までなかった木で扉を固定する錠の様な仕掛けがある。
「戸締り、重要ですね。」
「表からは開かないって事は、この奥は外か、何かを閉じ込めてるかのどちらかね。」
ロムの手にしている地図を覗き込むレイナ。この扉の奥は外に繋がっているようだ。
「とりあえず、開けて様子を見てみましょうか。」
「罠が発動しませんか?」
「大丈夫よ、扉に罠は仕掛けてないわ。そもそも、扉がある事は地図ではわからないしね。」
レイナがそう言って右手を前に突き出す。少し呪文を唱えると、扉が後ろに傾き倒れた。
「それでも、扉は開けたくないわよね。」
その光景を見て、ロムは冷静にレイナに尋ねる。
「今度は何を?」
「扉の周りの岩を削って、扉を押したのよ。いくら扉が強固でも、周りはそうとは限らないからね。」
倒れた扉の奥に、何かの影が見える。
「捕まってたみたいね。」
「レイナ!」
ロムが突如レイナの前に出て木の棒を振り下ろす。棒に何かが当たる音と、その直後に響く金属音が何が起こったのかを物語る。
「投げナイフ・・・ロム、ありがとう。」
「気を付けましょう、あの距離からこの精度、かなりの手練れです。」
「そうね。」
レイナは再び指輪を取り出し、剣へと変えた。
「でも、相手は動けないのではなかったんですか?」
「その場から動けなくなるだけだから、反撃は出来るわね。」
そう話している間に、再びナイフが飛んでくる。しかし、構えを取っている二人には当たらない。
一連の攻撃が途絶えた所で、レイナは人影に向かって剣を向ける。
「抵抗はやめなさい。次投げてきたら、命は無いわよ。」
レイナの言葉に動揺を見せる影。ロムは近くの松明に火を付け、影の足元に投げる。
がっしりとした体格の男がこちらを向いている。手にはナイフを打ち出すボウガンの様な道具を持っていた。
しかし、足は地中から不自然に盛り上がった土に絡めとられている。これでは動けないだろう。
「あなたが、お頭?」
「お前たちこそ、何者だ?」
レイナの質問に、質問で返す男。レイナは小さくため息をついて話を続ける。
「先に、こちらの質問に答えて欲しかったんだけど、まあいいわ。私はレイナ、あなた達を退治に来たわ。」
「どういうことだ?」
「私の質問にも答えてくれるかしら?こちらは先に答えたわよ。」
続けて問いかけてくる男の態度に、レイナは少し語尾を荒げて答える。
「敵にそうあれこれしゃべるバカがいるか。」
「そう来ると思ったわ。ロム、お願い。」
「判りました。」
ロムは男の目を見つめ、チャームをかける。
チャームがかかり目がうつろになった事を確認して、レイナは質問を投げかける。
「さて、あなたは・・・。」
「レイナ!ダメ!!」
「え?」
質問の途中で、ロムが突然レイナを制止する。次の瞬間、ロムは両膝から崩れ落ちる。
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