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「でも、お頭はどこにいるんでしょうか?」
ロムが周囲を見回すが、皆目見当もつかない。
「やっぱり、地図は必要ね。」
レイナは持っている剣を地面に突き立てる。
「次はちゃんとやるわ。」
突き立てた剣を中心に強烈な風が広がり、それを追いかけるように壁に亀裂が走っていく。
「亀裂単独の調査は失敗したから、今度は風も追加ね。ロム、紙を10枚ぐらいちょうだい。」
道具袋からロムは紙を取り出し、レイナに渡す。
「これで完成するわ。」
レイナはロムに渡された紙全てを放り投げた。紙はレイナを中心にひらひらと舞い、ゆっくり地面に落ちる。
地面に落ちた紙を拾い上げるロム、内容を見てレイナに尋ねる。
「もう、地図が出来たんですか?」
「ええ、地面に落ちた紙は完成品の地図よ。」
今度は、道の上に道が書かれているような地図ではなく、見やすい地図になっていた。
全ての紙が地面に落ちたのを確認して、レイナは地面から剣を抜きその剣を指輪に戻す。
「お頭は、どこにいるのかしら。」
残った紙を拾いながら、地図を確認するレイナ。
「風と亀裂・・・さすがに相手にバレませんか?」
ロムは相手に気付かれる心配をしているが、レイナは気にしていない様子だ。
「バレてもいいのよ。動いてくれた方が、痕跡を探すタイプの探査魔法は使いやすいでしょ。」
「でも、ここから逃げられたら捕まえるのは大変ですよ。」
外に逃げられたら、追いかける側が不利になるのは目に見えている。
「逃げる前に、出口を押されれば大丈夫でしょ。」
あまりにも気楽に答えるレイナに、ロムは少し不安を覚えるが。
「出口は・・・ここみたいね。遠隔で罠を仕掛けておきましょう。」
「え?」
ロムは驚きの表情で固まっていた。
レイナは地図上の出口らしき場所を指で押さえ、少し力を込める。
「レイナってよく凄い事しますよね。」
一連の行動を見て、ロムは思ったことを口にする。
「凄い事かぁ。位置関係が判れば、そこに仕掛けを作るだけよ。」
「それがサラッと出来るのが凄いんですけどね。」
「まぁ、それなりに苦労してるからね。」
レイナが地図から指を離す。その地図には、バツ印が記入されていた。
「ふぅ。相手を動けなくする罠設置完了。」
「捕まってくれれば、仕事が楽になりますね。」
「そうね。色々暴れたから、相手も急いで出口に向かってるだろうし、まずは罠の場所に行きましょうか。」
地図を頼りに、罠を仕掛けた場所へ向かう二人。その途中にある部屋も調べていくが、目立った痕跡はなかった。
「そういえば、五十人ぐらい仲間がいるって言ってたけど、どこに消えたのかな?」
レイナは、ふと思った疑問を口にする。
「他のアジトではないですか?森の中にあると言ってましたし。」
「本拠地のアジトを空にしてでも、他の所のアジトに行くのかしら。」
「つくづく、よくわからない盗賊団ですね。」
ロムがため息をつく。それを見てレイナが苦笑する。
「ほんとにね。でも、他のアジトも後々つぶしていかないとダメね。」
「そうですね、この辺りの野盗の討伐が依頼ですから。」
「でも、討伐してもまた出てきそうだけどね。」
レイナの言葉の後に、一瞬の静寂が訪れる。その静寂をロムが破る。
「何とかならないものですかね。」
「こればかりは、どうしようもないわ。」
レイナは少し肩をすくめた。
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