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数十分歩いただろうか、不意にロムが声を上げる。
「・・・んっ。」
「ロム、どうかした?」
ロムの顔が少し赤い。そして、息も少し荒い。
「ちょっと・・・無理かも。」
レイナの服の裾を引っ張るロム。
「ねえ、レイナ・・・。」
「どうしたの?ロム。」
ロムの様子がおかしいことに気付いたレイナ。
「チャーム、解いていいですか?」
「まだアジトに着いてないじゃない、もう少し我慢できない?」
「レイナ、私のチャームって結構つらいの知ってるでしょ。」
荒い息のまま、レイナに懇願するロム。
「まぁ、話ぐらいは知ってるけど、それほど?」
「ええ、今もずっとですよ。チャーム維持は私でも辛いんです。」
もはや涙目なロムに、レイナは確認する。
「解除しても大丈夫?案内は出来そう?」
「正気に戻るだけですから、逆らう気が相手になければ。」
レイナは少し考えた後、ロムに答える。
「判ったわ、ちょっと手荒になるけど最初に言ってるから大丈夫よね。」
レイナは最初の言葉を思い出した。
「野盗二人の手を縛るから、その後に解いちゃって。」
「そうさせてもらいますね。」
レイナは二人の手を後ろに縛り、縛った紐をレイナが持つ。
「じゃあ、チャーム解除しますね。」
ロムはチャームを解除する。野盗の二人が膝をついた。その後、野盗は不思議そうに周囲を見渡す。
「目が覚めたかしら?あなた達のアジトに案内してもらうわよ。」
「なんでそんな事・・・?!」
両腕の自由が利かないことに気付いたのか、暴れるそぶりを見せる野盗。
それを見てレイナが言い放つ。
「最初に言ったでしょ、怪我させたくないって。おとなしく教えてくれないかな。」
レイナの頼みも、野盗は無視を決める。
「二人とも、案内してくれますね?」
野盗の目の前に立ち、ベールを脱いで自分の姿を見せるロム。
その姿を見て野盗の二人は顔を伏せる。
「あれ~?どうしたのかな~?この子と何かあったかな~?。」
わざとらしく声を上げるレイナ。大方の察しはついている。
「道案内、お願いできますね?」
野盗は静かに頷いて、立ち上がった。
「結構、チャームの時の記憶って残ってるのね。」
「レイナ、恥ずかしいんですから、それ以上は。」
「判ってるわ。ありがと、ロム。」
野盗の案内で、レイナ達は再び森の奥へと足を進めた。
それから数十分歩いただろうか、四人は奇妙な光景の広がる場所に着く。
「なるほど、木を利用してそのまま屋根や壁を作ってるのね。」
木と木の間に板を這わせて屋根を作っている。屋根の下にも板を這わせ、壁として布を屋根から垂らしている。
これならば、万が一上から外敵が来ても気付かれにくいだろう。
「さて、お頭はどこかしら?」
「お頭はここにはいねぇよ。」
野盗はレイナ達にしてやったりといった感じで言い放つ。
「え?ここはアジトじゃないの?」
「あぁ、確かにアジトだぜ。数ある中の一つだ。」
言葉の裏を取られたレイナ達は、あっけにとられる。
「騙したの?」
「騙した?何言ってるんだ。俺達はちゃんとアジトに案内したんだ、約束は守ったろう。」
確かに、野盗は全ての約束を守っている。が、レイナ達は腑に落ちていない。
「さぁ、さっさとこれを外しな。」
両手を縛っている縄を揺らして催促する。
「・・・ロム。」
レイナの言葉から怒りが漏れている。それを察したロムは、再び野盗の前に立った。
「仕方ないですね。」
ロムは、野盗の顔を掴み、再びチャームを試みる。
「ま、また・・・。」
野盗二人は再び膝から崩れ落ちる。
「今度は、少し強力にかけておきました・・・。まずは場所を聞き出してから動きましょう。」
強力という言葉通り、野盗は焦点の合ってない目でロムを見つめる。
ロムの方は、明らかに顔が赤くなっていて、額に汗が浮かんでいる。
「ロム、少し休んでて。私が聞き出すから。」
「お願いします・・・。」
ロムは木にもたれかかったまま座り込み、息を整える。
「さて、お頭の場所はどこ?」
「鉱山跡です。」
「鉱山跡ね、この地図のどの辺り?」
レイナは地図を広げる。その地図に印をする野盗。
「その山の麓ね。あっ、ついでに今いる場所も印をつけておいて。」
その言葉に従う野盗。
「そこまでの道に、罠は無い?」
「はい、ありません。」
「鉱山跡にも罠は無い?」
「はい、襲われる事はありませんから。」
「まぁ、これだけ森の奥で、しかも鉱山跡ってモンスターの住処になってそうな場所、誰も行かないわよね。」
普通に考えれば、身を隠さなければならないものにとって、これほど都合のいい隠れ家はない。
「あと、聞いておかなきゃいけない情報は・・・。」
指を折りながら考えるレイナ。
「そうそう、あなた達のお頭の事よ。まず、お頭は何者なの?黒きモノの模倣体なんて、普通の人は手に入らないわ。」
随分と大雑把に聞くレイナ。
「お頭は、過去に騎士団に在籍していたと言っていました。」
「騎士団!?どこの?」
騎士団という言葉に少し驚くレイナ。
「どこかまでは判りません。」
騎士団等の軍隊は、どこの国でも持っている。だが、この件は国が関与している線が強くなったという証明である。
「お頭の名前は?」
「聞いたことがありません。全員、お頭と呼んでいます。」
「名前は不要って事ね。じゃあ、これが最後。黒きモノの模倣体はいつ来たの?」
「3か月前です。」
「ロムの依頼と、黒きモノの模倣体が現れた時が大体同じね。」
レイナは、これ以上はロムの体がもたないと考え、質問を切り上げた。
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