鉱山跡に住まうモノ

1

地形変化の魔法を使った場所に戻って来た二人。

「さて、そろそろ見えてくかしら?」

「地図によると、そうですね。」

そんな話をしている間に、岩山に開いている洞窟が姿を現す。

「これが、鉱山跡ね。」

「そうですね。」

洞窟の入り口は、木で補強されていて、荷馬車が入る大きさの通路になっている。

「中は・・・結構広そうね。」

レイナは洞窟内を少し覗いて見る。外の光が届く範囲しか見えないが、所々に松明置きがある。

「街が大きくなった原動力ですから。」

ロムが胸を張る。その姿を横目にレイナは中の安全を確認する。

「入る前に、仕掛けをしておかないとね。」

レイナは入り口の地面に杖の先端で線を引く。

「何をしてるんですか?」

「おまじないかな。」

線を引き終えたレイナはそう言って杖で地面をトントンと叩いた。

その直後、入口が周囲の岩盤によって塞がっていく。

「入口が!?」

ロムは塞がった入口を触ろうとするが、触ることは出来なかった。

「簡単なカモフラージュね。帰ってくる野盗を少し足止めする程度だけど。」

二人は塞がったように見える岩盤を通り抜ける。

「もっとしっかり足止めしないんですか?」

「入口がここしか判らないから、ここを閉じるわけには行かないでしょ。」

レイナの説明に、ロムは頷く。

「それもそうですね。」

「さて、行きましょうか。」

レイナは松明置きにある松明を取り火をつけた。


入り組んだ洞窟内を進む二人。

「人がいるとしたら、どこかしら?」

いくつか部屋らしい場所を見つけたが、人が住めそうな場所ではなかった。

「ここに居る事は確かなんだけど、一人ぐらい道案内に連れてくればよかったかな。」

「そうですね。」

所々に松明置きがあるだけの変わり映えしない道をひたすらに歩く。

「レイナ、こういう時こそ、何か出来ませんか?」

「そうね・・・少し時間がかかるけど、この洞窟の地図を作るわ。」

「一応、ここまでの道のりはマッピングしてますが。」

「じゃあ、その続きは私に任せて。」

ロムの持っている書きかけの地図を受け取るレイナ。自分の持っている松明をロムに渡し、その地図を洞窟の地面に押し付ける。

大きく深呼吸して、呪文を唱え始めるレイナ。その間、ロムは周囲に注意を向ける。

数分後、レイナが地面に押し付けた地図に片方の手をゆっくりかざす。すると、書きかけの地図に線が浮かび上がる。

「ふぅ・・・これで、もう少し待てばはっきりとした地図になるわ。」

「どうやったのかはわかりませんが、待てばいいんですね。」

浮かび上がる線を見ながら、今後の作戦を考える。

「部屋っぽい場所に行くか、それとも最奥を目指すか。」

「ここに人が住んでいるのでしたら、最奥はないでしょうね。」

洞窟の最奥に住むのは、酸欠と食糧難を同時に抱え込むことになる。普通の人なら選択しないだろう、

「だとすると、逃げるのに便利の良い場所かな?」

「未知の出入口があったら、その近くですかね。」

地図が完成に近づく。が、それにつれてレイナの表情が暗くなる。

「レイナ・・・どんどん線が重なって書かれてます。」

地図に書かれていた通路の上に、どんどん線が引かれていく。その様子を見て、レイナは大きくため息をついていた。

「ええ、忘れてたわ。鉱山って立体構造って事に。」

「じゃあ、この地図は。」

「ごめん!」

レイナは手を合わせてロムに謝った。

「レイナもたまには失敗するんですね。」

「ほんと、すっかり忘れてたわ。」

地図はいくつもの線が重なり合い、真っ黒になっていた。これでは何もわからない。

「まだ浮き上がってくるけど、もう意味ないわね。」

レイナは地図を地面から離す。浮かび上がっていた線もパタリと止まる。

「困りましたね。」

「そうね・・・でも、案内人が来たみたい。」

「え?」

レイナが暗がりに目を向ける。ロムがその方向に松明を向けると、人影が浮かび上がった。

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