第2話


 生まれたばかりの頃――――。


 僕は……いや『僕たち』は『群れ』で行動していた。


 でも、ある日。


 冬の吹雪がひどい日、あまりのにもひどい吹雪で僕は群れからはぐれ、独りになってしまった。


「…………」


  まだ幼かったけど、立ち止まる訳にもいかず、僕は一匹で転々と……流れ流れて何とかこの地にやって来た。

 ただ僕は、まだ幼すぎて『狩りのやり方』を教えてもらっておらず、だからなのか疲れと空腹により、森の中で行き倒れてしまった……らしい。


 でも、僕は今も運がよく生き残ることが出来ている。それもここで伝わっている『伝承』のお陰だろう……僕は今でもそう思っている。


「……」


 僕は過去に来た人間たちの影響からなのか多少なら人間の言葉が分かるし、目はあまりよくないけど、声の調子で喜怒哀楽もなんとなく分かる。


 それにしたって、さっきの子供の『無表情さ』は異常だ。


「……」


 多分、この時から僕はその『子供』に多少なりとも興味を持っていたのだろう。


「……」


 だから、その子供がずっと無言でいつ頃家族たちから離れるのか気にしていたそれはもう、ジーッと見つめていたくらいだ。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


『一体……どこに向かっているんだ?』


 それはとても初めて入った森とは思えないほど、ザックザックと突き進んでいる。


「……」


 どこか『目的地』でもあるのだろうか。でも、そもそも彼は、ここに初めて来たばかりのはずだ。道に迷わないのだろうか。


「……」

『!!』


 なんて思いながら後ろをついて行ったせいか、子供が振り返った事に一瞬反応が遅れてしまった。


『……っ』


 しまった……いくらなんでも怠慢だ。こんな子供にバレるとは……。


「君も……一人?」

『……!』


 そう言って、子供は僕を優しく撫でた。普通、こういった場合『オオカミ』を見かけても話しかけたり、撫でたりなんてしないはずだ。


 だって、僕はオオカミであって……犬じゃないんだから。


「俺も……一人なんだ」


 ただどうやらこの子供はそんな事、全く気にしないらしい。


『……心配だ』


 僕の言葉なんて彼には『鳴き声』にしか聞こえないだろう。ただ、僕は多少なら彼の言葉を理解出来るけど……。


「なぁ……なんで、俺がこんな思いしなきゃいけないんだろうな」

『……?』


 やはりこの子供は『何か理由』があって、ここに来たらしい。それくらいこの子供の……いや、彼の声は震えていた。


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