桜色エール
前
――俺は昔、妹を『火事』で亡くした。
それなのにも関わらず、
記憶をなくした理由として考えられるのが、たとえば『精神的に疲れていたから』だとか色々挙げられたのだが……。
やはり一番は『妹を亡くしたから』だろうと思う……なんて今となっては納得出来る。
しかし、火事の後にそれを言われていたとしても『妹の記憶』がそもそもなかったから到底納得出来なかったし、しなかったはずだ。
でも、記憶が戻った今では「それが原因だろうな」と断言出来る。
それくらい、まだ小さい頃から亡くなるその時まで俺の隣には『妹』がいた。それは、あの『火事』が起きた時同じだった……しかし、妹は俺をかばって亡くなったのだ。
なんとか脱出した後、俺は気を失い、病院に運ばれた。
その後、俺は記憶をなくし、いつも俺の隣にいたはずの『妹の名前』すら忘れ……どころか『火事が起きた事』すら忘れていた。
「…………」
周りの人たちもそんな俺を気遣ったのか、誰もその事について触れる事はなく、普通に日常を送っていた……が、その状況が変わったのは……物置にあった『
■ ■ ■ ■ ■
この『行灯』を日常的に使う様になったのは、ある常連のお客から「使ってみたら?」と言われたのがキッカケだった。
「まぁ、明かりは必要だしな……」
当初、その行灯を使っても特に問題はなかった……のだが、ある日突然。俺の前に『一人の女性』と『大きな桜の木』が現れたのだ。
「……」
俺は最初、その女性が誰だか分からなかった。身内はほとんど亡くなっていたし、そもそも身寄りなんてないようなモノだったから。
『……』
しかも、その人は何もしゃべらずこちらを見ているだけ……。
最初は「不思議な人だな」と思っていただけだったのだが……次第にその夢を見る度、俺は寝不足になっていった。いくら寝ようしとても……たとえ寝られたとしても、全然体が休まった感じがしないのだ。
そうして寝不足も限界に近付いたある日。
またも「行灯をつかってみたら?」と提案した常連のお客から『ある店』を紹介された。
対処法も分かっていなかった事もあり、藁にも縋る思いで俺は、その紹介されたお店に行ったのだが……そこで寝不足により倒れてしまった。
それで、そのお店の人にお世話になってしまったのだが……今にして思うと、あのお店の人もかなり変わっていた様に感じたのは……ここだけの話である。
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