第6話
その後、涼太はルンルンで合宿に参加した。そして、告白の回数も倍増していった。
元々、身長も高く顔も……悪くはない。頭は多少残念だが、それすらも「かわいい」で済んでしまうあたり、かなり寛大だ思う。
しかし、涼太はずっと「好きな人がいる」と言って全て断っていた。
「……はぁ」
「ニャーン」
ベンチに腰掛けいると、ゆっくりと猫が一匹近寄ってきた。撫でてると、可愛らしくノドを鳴らした。
「ふふ、かわいい」
思い返してみると、私はこの公園で初めて涼太と出会った。何だかんだで長い年月を共に過ごしてきた。
もちろん喧嘩もしたし、それと同じくらい仲直りを繰り返した。
「ニャーン?」
猫は、不思議そうな顔で私の方を見上げた。ずっと一人で読み飽きた本を読んでいた私に彼は、話しかけてくれた。
本当は……とても嬉しかった。
「……離れたくない」
ぎゅっと猫を抱き締めると……猫は少し苦しそうな声で鳴いた。
「あっ、ごっ……ごめんね。痛かったよね」
鳴き声に驚いて、思わず猫を手離してしまった。
猫も驚いて飛び降り、地面にフワリと着地した。思わず「フン!」とでも言いたそうにそのまま去った。
……悪いことをしてしまった。なんて思っていると、突然背後から「あっ!いたーっ!」と言う大きな声が聞こえた。
「……ったく、なんで先に帰っちまうんだよ」
「じっ、時間がかかりそうだったから……」
「はぁ、余計な気遣いしなくていいんだよ」
「いや、でも……」
今日、涼太が遅くなったのは告白をされていたからだ。
しかも、今日の告白相手は文化祭で美女一位なった事もある人だ。断る理由はないだろう。彼のとなりには、きっとそんなキレイな人がいい。絶対、私なんかより……。
「はぁ、断ったよ」
「えぇ!」
「なっ、なんでそんなにお前が驚くんだよ」
「いっ、いやだって……」
「……好きなヤツがいるんだよ」
「あっ、そっ……そっか」
そういえば、そんな事を言っていた様な気がする。
「なんで、お前はそこで……」
「え?」
「俺はっ!ずっと……!」
「……?」
何かを伝えたいけど、それを伝えるのは恥ずかしいのか涼太はそこで言葉に詰まった。
「あー!くそ!だっ、だから!俺は――」
投げやりで、ぶっきらぼう。少女漫画に出てくるようなロマンチックには程遠いかも知れないけど……彼は真っ赤な顔で、言ってくれた。
「……」
あまりの迫力に「私に拒否権はない」と言っている様に思えてしまうほどだった。
でも、答えは……ずっと悩んでいた事が消えたと同時に決まった。
彼のとなりに立つ『条件』なんて、私が色々考えたところで意味はない。それを決めるのは、彼……。
しかし、彼を離すつもりはしばらくは……ない。空を飛び続けて疲れた時にゆっくり出来る存在になりたい……。
なんて、強引に繋がされた手の温もりを感じながら、心の中でそう決めた――。
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