踏み外しましょう、ぼくらから

Twitter300字SS第74回お題「道/路」より(300字、改行含まず)



 子供ながら決められた道をただ辿るということに飽き飽きしていたのだと思う。わたしも彼も。


 だから道を外れてみることにした。


 通学路を行儀よく並んで歩くランドセルの集団から、こっそり抜け出す。彼がわたしの手を引いて誘う。アスファルト舗装された安全で正しい道から、先の見えない細い畦道へと。


 両側から無花果が、まるで手招きするかのように大きな葉を伸ばしている。悪魔の道だ。


 でも、不思議と怖くはなかった。悪いことをしているのに、間違った道に足を踏み入れたというのに、心はいつになく軽やかで自由だった。


 生まれて初めての冒険に興奮していたのか。


 それとも、わたしを導く彼が、わたしにとっては正義の勇者だったからだろうか。



【了】

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